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【連載企画】教えて!デロイトさん!(第14回)
職員のニーズを踏まえた勤務環境の改善
地域における医療提供体制を維持するにあたっては、医療従事者が持続的に働ける環境が必要です。勤務環境の改善に向けた取り組みを既に進めている医療機関から寄せられる相談事項等をもとに取り組みにあたっての留意点についてQ&A形式で解説します。
病院と職員との間で勤務環境改善の取り組みに関する認識のギャップが生じている可能性がある
相談者:
当院ではこれまで医師の働き方改革について、労働時間削減だけではなく、継続して働ける環境づくりとして様々な勤務環境の改善に取り組んできました。例えば、医師事務作業補助者の活用や複数主治医制の採用、学会参加支援などがあります。取り組みについては、時間外労働時間の推移など効果が目に見えやすいものもあれば、職員の満足度など目に見えづらいものもあります。つい先日、院内の勤務環境改善に関するプロジェクトで医師と現状に関する意見交換を行ったところ、すでに取り組んでいる施策についても不満の声が挙がっていて、取り組み方法や取り組みの定着に問題があったのかと頭を悩ませています。取り組みを医師に満足して貰うためにどのようにすればよいかアドバイスを頂けますでしょうか。
デロイト:
ご相談ありがとうございます。これまで様々な取り組みを進めてこられたのですね。院内で新しい取り組みを行う際の理解や周知などは大変だったと思います。
労働時間自体の削減に効果が期待される医師事務作業補助者やタスク・シフト/シェアなどは既に多くの医療機関で導入又は検討されています。複数主治医制の採用も徐々に増えてきているように感じます。一方で、ご相談頂いたような職員の満足度でしか図れない働き易さに関しては、改善のための取り組みに正解がないため、医師とコミュニケーションを取りながら進めていく方法がよいと考えています。
参考として一つ興味深い調査結果をご紹介します。こちらは、厚生労働省が毎年実施している「医療機関に対する勤務環境の実態調査アンケート」の結果です。施設として答える「病院票」と各医師が答える「医師票」に分かれていますが、その中で勤務環境の改善に対する取り組みとして病院側と医師側で「取り組んでいる」と答えた回答割合のギャップが大きいものが示されています。
出所:令和4年度厚生労働省委託事業「医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究」 Ⅴ 医療機関に対する実態調査及びその分析
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/information/new_itaku2022
相談者:
なるほど。当院に置き換えて考えると、「当直(宿直・日直)明けの勤務者に対する配慮」や「仮眠室・休憩室等の整備」は既に取り組んでいるつもりになっていましたが、医師側では取り組んでいると明確に言える段階には至っていない可能性が考えられそうですね。
デロイト:
そうなんです。病院側では取り組んでいるつもりでも、それが医師のニーズに合っていない又は取り組み自体の周知が十分ではないと考えられます。仮眠室を例に挙げると「安心して眠ることができる環境か」「室内の器具・備品は清潔か」「アメニティや設備は充実しているか」など改善の視点は複数あります。どこに医師が課題を抱いているかニーズを踏まえた改善でなければ効果は見込めません。とある病院では、医師のニーズを反映して仮眠室のアメニティ・設備を大幅に改善したところ、医師の満足向上は言うまでもなく、これまで当直をしていなかった医師も新たに当直を担って頂けるようになった、当直の非常勤医師を確保し易くなった、という効果があったと伺っています。
お伝えしたのは一例に過ぎませんが、大事なポイントとしては取り組みにあたってニーズを踏まえた内容であること、また、取り組みについて院内で十分に周知すること、効果を測るために継続的に取り組みについてコミュニケーションを行うこと、と考えています。
相談者:
ありがとうございます。勤務環境の改善に対する満足度を高めるために取り組みやアプローチについて見直します。
勤務環境に関する満足状況を確かめるには継続的なモニタリングが効果的である
相談者:
医師に限らず職員の勤務環境に関する満足状況の確認については、院内プロジェクト会議の際にディスカッションする方法以外にありますか。
デロイト:
はい、院内プロジェクト会議で協議する方法でも確認はできますが、プロジェクトに参加された方の主観となる可能性や定性的なコメントでは満足度を測定しづらいといった懸念があります。また、一つの事項についてアンケートを収集するケースもありますが、一時的かつ限定的となってしまいます。時間外労働時間の削減は重要事項ですが、職員が持続的に働き続けられる環境・職員の定着には労働時間以外にもたくさんの要因が存在します。
病院として、“なぜその課題に取り組むのか” “取り組みの効果”を客観的なエビデンスにより可視化するため、勤務環境を様々な視点から捉えたアンケート調査を継続的に実施する方法が効果的です。
また、数ある課題を全て着手できれば良いかもしれませんが、時間的・費用的に考えても課題の中から優先順位を決めざるを得ないかと思います。満足度について定量的な測定ができれば相関分析によって優先順位の判断も容易です。
勤務環境に関する満足は様々な要素が複雑に絡んでいるため、多角的に捉えたアンケートの中で例えば「仮眠室の環境」や「当直明けの勤務者に対する配慮」など、自院にとって重要となる課題に対する具体的な取り組みも盛り込み、継続的に満足状況をモニタリングしていく方法が良いかと思います。
相談者:
ありがとうございます。勤務環境に関する取り組み効果の把握や課題を分析するために継続的にアンケートを実施する方法は是非検討したいと思います。
執筆
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/2
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