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【連載企画】教えて!デロイトさん!(第16回)

医師の働き方改革を推進するための、医師事務作業補助者確保・定着への取組み

医師の働き方改革を進める上では、医師事務作業補助者といった医療専門職支援人材へのタスク・シフト/シェアの推進が重要となります。医師事務作業補助者の確保と定着の施策について、Q&A形式でご紹介します。

医師事務作業補助者の確保においては、求職者の視点に立って、仕事内容や働く環境の魅力を分かりやすく伝えることが大切である。

相談者:

4月より医師の働き方改革がスタートしました。当院では医師の働き方改革開始前より医師事務作業補助者を活用したタスク・シフト/シェアを進めようと取り組んできたのですが、なかなか人材が集まってきてくれません。どのように見直していくと良いかアドバイスをください。

デロイト:

ご相談ありがとうございます。貴院では、どのように求人活動をされていますか。

相談者:

ハローワークと求人サイトを使用して人材を募集しています。医療の仕事は資格がないとできないと考える人も多いと思い、求人票では、資格や経験がなくても問題ないことを記載しています。

デロイト:

資格がなくても活躍できる仕事であることを伝えているのは、大変良い工夫であると思います。そのほかにも、医師事務作業補助者向けの研修を実施されているのであれば、資格がなくても活躍できることに加えて、研修を整備していることも記載するとより求職者の安心感につながると思います。

求人票の記載においては、①仕事内容を具体的に、平易な言葉で記載する、②病院や仕事の魅力を伝える、③写真を活用して求職者が仕事内容や働く環境をよりイメージできるようにするとより多くの方の目に留まるようになると思います。

1点目の仕事内容を具体的に、平易な言葉で記載することについては、医療関係の仕事未経験の方が仕事内容を理解しやすいように、仕事内容はなるべく平易な言葉で具体的に記載することが大切です。例えば、「診断書の作成支援」「電子カルテシステムへの入力代行」「医師の指示に基づく事務の補助」のような記載が考えられます。

2点目の病院や仕事の魅力を伝えることについては、仕事内容のほかにも、医師事務作業補助者の仕事の意義ややりがい、働き方の魅力、病院の魅力、一緒に働く人の魅力を伝えて、この仕事に応募したいと感じてもらえるようにしましょう。

3点目の写真を活用して求職者が仕事内容や働く環境をよりイメージできるようにすることについては、文字だけでは仕事内容や働く環境についてなかなかイメージが湧かないこともあると思います。職員の仕事の様子の写真や、院内の様子の写真を活用し、仕事内容や病院で働くことのイメージを持ってもらえるようにしましょう。可能であれば、病院見学の機会を提供することも大変有効であると考えます。

相談者:

これらの点を参考に、もっと求職者の方に仕事内容や医師事務作業補助者の魅力、病院の魅力が分かりやすく伝わるように見直したいと思います。

デロイト:

医師事務作業補助者の求人を閲覧する方の中には、事務職を希望して仕事を探している方もいると思います。そうした方にも求人を検索してもらえるように、サイト検索における募集の表題を「医療事務」や「病院事務職」、「一般事務」としている病院もあります。貴院の医師事務作業補助者として求める人材と、そうした人材が仕事を探すときにどのようなキーワードから求人情報を検索するか、どのような情報を必要としているかも考えてみると、さらに良いかもしれませんね。

働きやすい環境の整備とともに、働きがいを実感できる仕組みの導入により人材の定着につなげる。

相談者:

当院では、医師事務作業補助者の人数は確保できているものの、なかなか人材が定着せず悩んでいます。長期的に当院で活躍してもらうために、どのような取組みがあるでしょうか。

デロイト:

定着を進める上では、①働きやすい環境を整えること、②育成の仕組みを整えること、③職員の頑張りを評価する仕組みがあること、④職員の頑張りに対して報酬を提示するといったことがあると考えます。これらの取組みで、実施されていることはありますか。

相談者:

当院では、短時間や曜日指定でも柔軟な勤務が可能となっており、一人ひとりの状況に合わせた働き方ができるようになっています。また、上司と部下の間での定期的な面談も実施し、その中で仕事の状況の確認や相談事項の確認、上司から部下へのコメントなどもしています。

デロイト:

働く環境の整備や、育成に関する取組みを実施されているのですね。

相談者:

最近、現場から新人の育成や業務効率を上げるためにマニュアルを作成したいという意見が複数の医師事務作業補助者から挙がってきているのですが、何から始めると良いでしょうか。

デロイト:

医師事務作業補助者の業務は、各診療科で個別に実施している事項と、共通で実施している事項があると思います。まずは、医師事務作業補助者のリーダーに集まってもらって、共通の実施事項について整理し、マニュアルを整備することから始めてはいかがでしょうか。マニュアルには、各手順の詳細を記載するだけでなく、実物の写真も掲載して、誰でも分かる内容にすると良いと思います。

共通実施事項のマニュアルを整備した後には、各診療科の個別の業務についても、同様に整備すると良いと思います。また、医師によって手順が異なる場合もあると思いますので、その場合は、医師ごとに手順を整理すると、業務が属人化することなく、誰でも担当することが可能になります。そうすると、診療科をまたいだ医師事務作業補助者の体制構築が可能となり、より皆さんの業務効率化に役立つと思います。

相談者:

是非検討したいと思います。

デロイト:

また、個人の成長や頑張っているプロセスを認めてあげるような評価の仕組みも、医師事務作業補助者の定着を進める上で有効です。評価の仕組みは、貴院が医師事務作業補助者に何を求めているかを周知することができますが、一方で評価してほしくないという方が多くいるのが実態です。そのような中で、医師事務作業補助者の評価制度を導入するには、院長のメッセージを繰り返し発信し、医師事務作業補助者向けの説明会を何度も丁寧に開催して、意義を十分に理解いただくことが重要です。このようなプロセスを踏めば、医師事務作業補助者が頑張っていくべき方向性が統一され、定着につながる効果が得られると思います。

相談者:

評価においては、どのような評価基準を設けると良いでしょうか。

デロイト:

経験年数によっても異なりますが、例えば経験年数が浅い方には、「指導を受けながら業務を遂行することができる」や、「他部門、多職種とコミュニケーションをとることができる」といった項目が考えられます。もう少し経験年数を積んだ方には、「知識・技能を応用して、難易度が高い業務にも対応できる」や、「患者・家族の目線に立って業務の質の向上を考えることができる」といったことがあると思います。

現在の医師事務作業補助者の状況や、貴院としてどのような人材像を求めたいかを考えると、整理しやすいと思います。

評価の仕組みを検討される際には、評価結果の報酬への反映も検討してみてください。医師事務作業補助者の皆さんの頑張りを評価し、その頑張りを報酬に反映することで、「頑張りを認めてもらえた」と感じてもらえれば、モチベーションの向上につながります。報酬への反映方法は、昇給や賞与に反映する、表彰するといった方法がありますが、病院経営への影響もあるため、金銭面にかかる対応がすぐには難しい場合もあると思います。その場合は、無理に金銭に反映せずとも、医師事務作業補助者の頑張り対して労いの言葉をかけることや、いかに周囲に貢献しているかといったフィードバックをすることを意識的に実施いただければと思います。金銭面だけでなく、そうしたコミュニケーションも「報酬」の一つと捉えて、前向きな声掛けをしていただくと良いと思います。

相談者:

仕組みの導入には時間がかかるかもしれませんが、当院としてどのような人材像を求めているかを発信したり、現在も行っている面談の中でのコミュニケーションを工夫したりすることであれば、すぐに取り組めそうです。関係者と共有し、実践していきたいと思います。

デロイト:

厚生労働省の「医療専門職確保・定着支援事業」のサイトにも手引きやツールが掲載されています。こちら(出典:「厚生労働省 医療専門職支援人材確保・定着支援事業 確保・定着支援ツールのご紹介」)からアクセスできますので、是非参考にしてみてください。

執筆

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社
ヘルスケア

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2024/8

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