調査レポート

エンタープライズカスタマーサクセスの調査と展望 Part2:顧客は何に対して価値を感じるか ?

高まる期待に対応するためのカスタマーサクセスイニシアティブ

カスタマーサクセスの調査と展望のパート2では、エンドユーザーの視点からカスタマーサクセス(CS)への取り組みを調査し、最前線で提供しているCSイニシアティブの視点、新たな顧客ニーズと嗜好、ビジネス成果への影響について理解を深めます。

テクノロジー導入企業の高まる期待

今日のエンタープライズテクノロジー領域の事業環境は、サブスクリプション型のサービスへの移行により複雑化している。顧客は、サービスへのアクセス、利用、支払いを柔軟に実施できるようになり、製品や顧客体験に満足していなければ、比較的容易にテクノロジー企業を切り替えることができるようになった。エンタープライズ領域における新たな流れにより、テクノロジー企業は、顧客が得る成果(Outcome)と顧客価値(Customer Value)の向上にますます注力するようになった。

今日の顧客は、テクノロジー企業に対して異なった期待を抱いている。顧客の期待の高まりに対応するために、ほとんどのテクノロジー企業が、 カスタマーサクセス(CS) に取り組み始めたことは驚くことではない。これは、従来のサポートの枠を超えて、独自の顧客体験および顧客が希望する成果を提供することを可能とする体系化したサービスである。

Deloitteが発表した 「エンタープライズカスタマーサクセス(CS)の調査と展望 」 のパート1では、テクノロジー企業の視点から、CSに関するいくつかの重要なトピックについて説明した。本パート2では、顧客視点見たCSについて焦点を当てる。テクノロジー企業の顧客企業に所属している上級幹部300人以上を対象に調査を行い、最前線で提供しているCSイニシアティブについての視点を得ることで、新たな顧客ニーズと嗜好を理解し、これらのサービスがビジネスの成果に与える影響を調査した。

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エンタープライズカスタマーサクセス(CS)の調査と展望 Part2 1.41MB,PDF

カスタマーサクセスの提供する価値の最大化と定量化

主な調査結果は以下の通りである

  • CSサービスの普及率は上昇している
    各CSサービスは、購入、導入、利用、更新の各段階で、回答者の50%以上に提供されている。
  • しかしながら、顧客への提供価値や成果は本当の意味で最大化されていない
    現在提供されているサービスレベルに満足している顧客はわずか3分の1である。また、90%の顧客がビジネスの目標と目的についてテクノロジー企業と話し合っているにもかかわらず、約50%の顧客は、購入した製品では部分的にしか期待した成果をもたらしていないと答えている。
  • 適応・熟達支援及び利用最適化支援が最も価値のあるCSサービスである
    回答者の半数以上が、これらのサービスが製品の継続的かつ広範な利用を促進するために不可欠であり、より迅速な価値の実現を可能にすると答えている。また約50%がこれらのサービスに対して支払意思があると答えている。
  • 顧客は、一貫したサービス提供と継続的な関与のために、購買前~購買後迄の全フェーズでCSの関与を求めている
    顧客の90%が、ビジネスケースを定義し、潜在的なソリューションのROIを評価するために、購買前の段階でCSの関与を求めている。しかしながら実際には、テクノロジー企業から構造化された購買前のサービスを受けているのは、わずか20%に留まっている。約80%の顧客は、テクノロジー企業のテクニカルサポートに依存している。しかしながら、そのサービスに対して61%は「あまり満足していない」と回答している。問題を積極的に解決し、製品ロードマップを顧客ニーズに合わせるためには、CSチームの関与拡大が求められている。
  • 顧客の信頼と支持を得るためには、価値を追跡、実証するための確立された仕組みが必要である
    現在、テクノロジー企業を信頼できるアドバイザーと考えている顧客は、わずか25%に過ぎない。調査結果の詳細を見ると、顧客と定期的なレビューを行い、顧客の価値を追跡する手助けをしているCSチームは、信頼されて顧客の支持を得る可能性が2倍高いことがわかった。

顧客データがユビキタスになり、デジタル化されたプロセスや遠隔計測により透明性が向上した時代において、顧客価値を測定するために知覚価値だけに頼るのは不十分である。顧客価値の測定は、より客観的であり、テクノロジープロバイダが提供する製品やサービスにより最大の利益をもたらす顧客の能力に根差したものでなければならない。

デロイトは、CSによってもたらされる価値をより効果的に測定するために、顧客に提供する価値をビジネス価値、顧客体験価値、パフォーマンス価値の3つの柱に大別した。

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ビジネス価値:顧客は優れたビジネス成果を実現するサービスに対し、支払意思がある

ビジネス価値は、テクノロジー企業が測定可能なビジネス目標を推進し、より高い投資収益率を実現するための能力に焦点を当てている。

調査対象となった顧客の90%が、ソリューションの購入前または購入直後に、テクノロジー企業と要件やビジネス目標について話し合っていると回答している。しかし、調査対象となった顧客の50%近くが、ソリューション導入後に、望んでいたビジネス上の成果を完全には得られていないと回答している。

調査結果によると、主要なCSサービスはそれぞれ50%以上の回答者に提供されている。

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しかしながら、顧客は適応・熟達支援、利用最適化支援が望んだ成果を達成する鍵であると考えているにもかかわらず、顧客の目標達成に向けたCSサービスの有効性に満足しているという顧客は3分の1未満である。

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顧客体験価値:CSMは顧客体験と顧客支持を形成する

顧客体験価値は、テクノロジー企業と顧客との関係の質に焦点を当てる。これらの関係は、ライフサイクル全体にわたる、人間とデジタルの相互作用、やり取り、およびビジネス行為によって得られる総合的な体験によって形成される。

調査対象となった顧客のうち、テクノロジー企業を信頼できるアドバイザーと考え、不安なく支持すると答えたのはわずか4分の1だった。テクノロジー企業のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)は、成果重視のサービスを提供するだけでなく、購買前後の活動において、迅速かつ能動的な関係性を重視し、一貫性のある顧客体験とテクノロジー企業に対する総合的な満足度を高める必要がある。

CSMの支援を受けてソリューションの価値をトラッキングしている顧客の満足度 (~66%)は、自らトラッキングしている顧客 (~40%)よりも明らかに高かった。また価値を能動的にトラッキングせず、ソリューションが提供している価値のみに依存している顧客の満足度はさらに低い結果であった(36%)。

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これらの結果は、適切なサポートがない場合、顧客がソリューションを過小評価する傾向があることを示している。顧客は、価値を示す指標に確信が持てない、もしくは、指標をどこで取得し、どのように追跡するかがわからないために、ソリューションを過小評価している可能性がある。

この調査では、ビジネスの成果とソリューションが提供する価値のトラッキングについて、定期的なフィードバックを実施したCSMの方が、無条件に支持する顧客が多いことが示された。また、そうした顧客は支持者になるだけに留まらず、より強いCSサービスへの信頼と潜在的な収益の増加の可能性を示した。

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パフォーマンス価値:製品とサポート品質の最大化

パフォーマンス価値は、使いやすさ、安定性、互換性、可用性など、ソリューション品質に対する顧客のニーズを満たす、または上回るテクノロジー企業の能力に焦点を当てている。

顧客は、製品のギャップを解消するために、より優れたテクニカルサポートサービスを積極的に求めており、67%近くの顧客が、ストレスのないサービス利用のためにサポートサービスに対して支払意欲があると回答している。

約80%の顧客がテクニカルサポートサービスを頻繁に利用しているが、約61%の顧客は、提供されるサービス品質に対して あまり満足はしていなかった。

主に受動的なサポートサービスから、ビルトイン、自動化、能動的に提供されるサポートサービスへと強化することで、時間と効率の損失を削減し、満足度を向上させることができる。

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顧客からのフィードバックを継続的に求め、製品設計とロードマップに組み込むテクノロジー企業は、フィードバックを組み込まないテクノロジー企業に比べて、顧客の支持、信頼、収益の可能性が大幅に増加する。

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今後の展望とネクストステップ

顧客の価値を最大化するためには、現在のCSサービスの提供方法を根本的に変える必要がある。

プロバイダは、提供する価値を明確に定義するために購買前の段階からの関与を増やす必要がある。また購買後の段階では、これらの期待を満たすために、適切なサービスを特定し、カスタマイズする必要がある。

CSサービスの提供者は、顧客自身での価値のモニタリング及び顧客が認知した価値だけに頼る代わりに、能動的に顧客提供価値をモニタリング及び報告する必要がある。価値を明確な柱及び重点分野に分類し、各分類の主要指標を特定することは、提供価値をより総合的に測定するために役立つ。

またテクノロジー企業は、顧客のフィードバックを製品ロードマップに反映させる改善サイクルを向上させ、継続的により良い価値を提供し続けることに取り組むことが重要である。

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