既存の枠組みにとらわれない調達コスト削減の実現 ブックマークが追加されました
最新動向/市場予測
既存の枠組みにとらわれない調達コスト削減の実現
アウトソースを活用したコスト削減事例が増加
調達要件がより複雑かつ厳しくなる中で、内部リソースのみでのコスト削減は限界を迎えつつある。豊富な知見を有するアウトソースを活用してコスト削減を実現するケースが増加しており、かつカバー領域も拡大傾向にある。
欧米諸国と日本のアウトソース活用領域の違い
当社がグローバルのCPO(Chief Procurement officer)向けに実施した調査によると、世界共通で調達人材の深刻なスキル不足が回答された一方で、解決方法がグローバルと日本では大きく異なることが判明した。
欧米諸国と日本のアウトソース活用領域を別表に示しているが、特筆すべき点として以下の点が列挙できる。
- 欧米諸国では日本よりも調達関連業務のアウトソース活用比率が高い
- 欧米諸国、特にUSでは戦略業務であるカテゴリマネジメントをアウトソースする比率が高い
- 一方、日本は依然として低付加価値業務であるオペレーション業務をアウトソースする比率が依然として高い
つまり、欧米では調達人材不足をアウトソースの積極活用により補完しており、かつコスト削減の手段としての単なるオペレーション効率化にとどまらず、社員が行うような戦略業務や専門技術習得にアウトソースを活用しているのである。例えばグローバル展開をしているある米国企業は、多くのカテゴリマネジャーを外部から一時的に雇用し、支出の分析、調達コスト削減ストーリーの作成、仕入先との価格交渉などを実行させ調達業務を確立させた上で、そのナレッジを社員に引き継ぐ活動を行っている。このケースの場合初期時点はほぼアウトソースだったが、数年後にはほぼ自社調達人材によって業務が遂行されている。
一方、日本のアウトソース活用は未だコスト削減のみの傾向が強い。自前主義の意識が強く外部の活用には積極的ではないことが想定される。もちろん、製造業において重要な役割を占める調達のコア業務を自社で遂行できるに越したことはないが、自社のみで深刻なスキル不足を解消できるのか、育成のスピード感が需要にマッチしているのかを適切に見極めないと、手遅れになる可能性もあり注意が必要である。
アウトソースを活用した調達業務のメリット/デメリット
一般的にアウトソースを活用した調達人材強化は、社内メンバーでは蓄積できない知見や事例を早期に習得できる、社員の育成期間が短縮できる、外部の取込によりチーム活動が活性化できるなどのメリットがあげられる。人材育成には様々な形での刺激が必要になるため、大きな成果をあげているケースが多い。一方で、社内メンバーとアウトソースの意識の違いから溝できチームが分断される、社内メンバーが新規のやり方についていけずに退職率が上がるなどの問題も列挙されている。また、自社調達人材の意識やスキルを同時に高めておかないと、移管がうまくいかないというケースも発生している。一長一短があるアウトソースによる人材育成であるが、一つの選択肢として考慮しておくと共に、実際に行う場合は上記のような課題を含めて長い目を持って推進していくことが有用であろう。
どちらにしてもまずは自社の調達メンバーのスキルを棚卸しし、現在の実力や課題を評価し診断したうえで、アウトソースの必要性を含めた調達の人材育成を検討してはいかがだろうか?