ナレッジ

令和2年度公営企業管理者会議について(前編)

公営企業の最新動向解説

令和3年度の公営企業全体に関わる施策として、引き続き主要3施策が掲げられるとともに、その後押しとしての地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業の創設や、新型コロナウイルス感染症の対応への地方財政措置が説明されています。

1.令和2年度公営企業管理者会議の開催

総務省は、毎年1月に公営企業の管理者を対象とした「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」を開催しており、令和2年度においても、令和3年1月25日に開催されたところです。公営企業管理者会議は、翌年度の総務省の公営企業施策が説明される場であり、令和3年度からの新たな地方財政措置等も説明されています。

公営企業管理者会議の冒頭には、渡邊輝公営企業担当審議官より挨拶があり、以下の3点が紹介されました。これらは特に重点を置いた施策と考えられます。

  • 従来から強調されてきた主要施策である、経営戦略の策定、抜本的な改革の検討及び公営企業の見える化をより強力に推進していくため、地方公共団体金融機構との共同事業として「経営・財務マネジメント強化事業」が創設されること
  • 「旧簡易水道事業等の経営に関する研究会」の報告書が令和2年12月に取りまとめられたことを受け、旧簡易水道事業等の持続可能な経営のために新たな地方財政措置が創設されること
  • 新型コロナウイルス感染症への対応として、公営企業の資金繰りに支障が生じないように、特別減収対策企業債が令和3年度も継続されること

本稿では、これらの施策を含め、特に新規の施策を中心に、公営企業管理者会議について前編と後編に分けて解説を行います。前編では、公営企業全体に関する施策の紹介、後編では事業別に特に留意すべき施策について解説していきます。

なお、公営企業管理者会議の資料は、総務省のウェブサイトに掲載されているほか、当日の説明会の様子は、一般財団法人自治体衛星通信機構のウェブサイトにおいて令和3年7月31日(予定)まで視聴可能となっています。本稿では、新規の施策を中心に解説していることから、詳細や過年度から継続された施策については、これらの資料や動画を確認していただければと思います。

 

【参照】

2.公営企業全体に関する施策

(1)主要3施策

これまで、公営企業等における更なる経営改革の推進として強調されてきた、経営戦略の策定・PDCA、抜本的な改革の検討及び公営企業の「見える化」については、令和3年度においても重要施策として最初に説明されています。なお、主要施策の取組状況については、「公営企業主要施策の取組状況調査結果について」 (外部サイト)において解説していますので、詳細はこちらをご覧ください。

<画像(1)>
※クリックで拡大

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料1 公営企業課関係資料 13ページ

 

①経営戦略の策定・PDCA

経営戦略の策定は、平成28年1月の通知により令和2年度までに策定率100%となるように要請がされているところ、策定期限である当年度末までに策定予定の事業は全体の92.3%であり、特に、港湾整備事業、市場事業、と畜場事業、観光事業、宅地造成事業、駐車場事業においては策定率が低い状況にあります。そのような中、「新経済・財政再生計画改革工程表2020」(令和2年12月18日経済財政諮問会議決定)では、令和7年度までに経営戦略の見直し率100%となるように要請がされています。経営戦略は3~5年で見直しをすることとしており、令和2年度までに策定完了を前提として、策定後の目標設定がなされています。

なお、既に要件化されている水道事業の高料金対策、下水道事業の高資本費対策に係る地方財政措置のように、今後、新たな地方財政措置を講じる場合には、経営戦略の策定が要件になる可能性がある点に言及されています。

 

②抜本的な改革の検討

抜本的な改革の検討は、新たな施策の公表等はありませんでしたが、これまでと同様に取組事例集が公表されることとなっており、毎年度取組事例が増えていることから、各団体においては、これらを参考に取組を進めることが重要です。特に、水道事業及び下水道事業においては、令和4年度までに「水道広域化推進プラン」や「広域化・共同化計画」の策定が求められているなか、広域化等の事例が増えてきていることから、これらも視野に入れながら取組を進めることがポイントです。また、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)において「水道・下水道の広域化計画の中にシステム標準化を含むデジタル化の推進に関する事項も盛り込むよう促す」とされており、水道事業においては令和2年12月に、下水道事業においては令和3年1月にデジタル化推進を踏まえた計画策定に当たっての留意事項を記載した事務連絡が発出されています。

 

③公営企業の「見える化」

公営企業の「見える化」のうち、公営企業会計の適用については、人口3万人以上の地方公共団体における簡易水道事業・下水道事業においては、令和2年度の予算決算から適用するよう要請されていたところであり、概ね達成されている状況です。また、人口3万人未満の地方公共団体の簡易水道事業・下水道事業は令和6年度の予算決算までに適用を進めることが要請されています。

一定の進捗が見られる中で、更なる取組の推進に向けて、簡易水道事業における高料金対策及び下水道事業における高資本費対策に係る地方財政措置については、人口3万人以上の地方公共団体では令和3年度から、人口3万人未満の地方公共団体では令和6年度から、公営企業会計の適用を要件に加えることとされています。公営企業会計の適用により、経営の実態を見える化した上で、合理的な経営を行ってもなお、経営環境が厳しい地方公共団体に対して、地方財政措置がなされるものと考えられます。

(2) 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業

主要施策をより強力に進めるため、令和3年度には、総務省と地方公共団体金融機構の共同事業として、「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」の創設が公表されました。当該事業は、経営・財務マネジメントを強化し、財政運営の質の向上を図るために、団体の状況や要請に応じてアドバイザーを派遣する事業となっています。

対象となる政策テーマは、

  • 公営企業の経営戦略の策定・経営支援
  • 公営企業会計の適用
  • 地方公会計の整備
  • 公共施設等総合管理計画の見直し(公共施設マネジメント)

とされており、これらのテーマに対して課題の克服等の財政運営・経営の改善に向けたアドバイスが行われる「課題対応アドバイス事業」と、知識・ノウハウの不足により政策テーマの達成が困難な地方公共団体の支援を行う「課題達成支援事業」が事業の柱となっています。これらの事業に関するアドバイザー派遣に係る費用は、地方公共団体金融機構が負担することとなっており、事業規模は約3億円で約500の団体・公営企業への派遣を想定されています。

特に、経営戦略未策定の公営企業(約200事業)、人口3万人以上の団体における公営企業会計未適用の公営企業(5事業)、地方公会計未整備団体(約30団体)、総合管理計画の見直しの取組に課題がある団体(約100団体)については、会議資料内で公表されており、原則全ての団体・公営企業に派遣することを予定していることが言及されています。

<画像(2)>
※クリックで拡大

 出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料1 公営企業課関係資料 33ページ

(3)特別減収対策企業債の延長

令和元年12月から世界的に流行している新型コロナウイルス感染症により、日本においても、テレワーク、3密を避けるなどの移動制限、うがい手洗いなどの感染拡大防止のための取組が行われています。しかし、これに伴い、交通事業や病院事業においては利用者が減少しており、大幅な収入減となっています。

公営企業は、企業としての側面をもち、独立採算を原則としている一方、地域医療や公共交通の確保などの公共性も有していることから、住民生活に不可欠な公営企業の資金を確保するために、令和2年度に資金手当措置として「特別減収対策企業債」の発行が可能となっています。

令和3年1月には11都府県に緊急事態宣言が出されるなど、依然として新型コロナウイルス感染症の影響があるなか、特別減収対策企業債については、令和3年度も引き続き発行可能となっています。

なお、特別減収対策企業債については、地方公共団体の財政の健全化に関する法律(平成19年法律第94号)による資金不足比率の算定上、解消可能資金不足額に算入可能としており、未曽有の事態に対応するために認められた特別減収対策企業債が、経営健全化判断に不利にならないよう配慮されています。

<画像(3)>
※クリックで拡大

出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和3年1月25日開催)資料3 準公営企業室関係資料 5ページ

お役に立ちましたか?