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競争力の源泉を定義・明確化するDEOモデル

成長実現につながる戦略策定は、自社の競争力の源泉を明確化することから始まる

戦略とは、持続的な成長を実現するためのロードマップである。故に、戦略策定に向けた第一歩は自社の提供価値(Domain)や提供価値を加速させる要素(Enabler)、それらを支える価値提供の仕組み(Operating Model)を定義・明確化する(DEOモデル)ことから始めるべきである。DEOモデルを核として、戦略(ポートフォリオ、事業、M&A、研究開発、等)策定を行うことで、合理的かつ実現可能性の高い戦略を策定することが可能になる。

成長戦略や中期経営戦略は何故、画餅化するのか?

多くの日本企業では、内外ステークホルダーとのコミュニケーションツールのひとつとして、多くの企業は3-5年先の自社の立ち位置や存在意義を定義した中期経営計画を策定・発表している。
しかしながら、多くの企業においては短期的にもその達成はままならず、所謂「画餅化」していると言わざるを得ない(図1)。

【図1:中計の項目、予想期間別の目標達成比率】

出所: 日本証券アナリスト協会「2016年度証券アナリストジャーナル賞」の受賞論文「企業の中期経営計画に関する特性及び株主価値との関連性について(https://www.saa.or.jp/journal/prize/pdf/2016_asada.pdf)」

 

モニターデロイトでは、多数の戦略策定支援経験を通じて上記の大きな要因のひとつとして、「自社の本質的な競争力の源泉」に立脚していない計画となっていることがあげられると考えている。

つまり、これまで長きにわたり一定の規模で事業展開を行ってきた企業には、必ず何らかの競争力の源泉となっている“何か”が存在していると考えられるが、それらを十分に考慮せず、ありきたりな施策や根拠のない数値を積み上げているため、内部でも中期経営計画に対するロイヤルティは必ずしも高まらず、結果として未達が常態化(画餅化)してしまう。

 

戦略策定のスタートとなるDEOモデルの構築

これらの課題に対する処方箋として、戦略策定の初期段階としてモニターデロイトが保有するDEOモデル(図2)を用いて、現在の競争力の源泉と、将来(ありたい姿)の競争力の源泉を具体化していくことが有効と考えている。

【図2】
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つまり、現状のDEOを整理したうえで、事業環境変化を想定しつつ中期経営計画終了時のDEOを定義したうえで、それらを中核に添え必要となる各種施策を取り纏めていくことで、画餅化しない本質的な成長戦略(注記経営計画)の策定が可能になる(図3)。

【図3】
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DEOフレームを用いた競争力の源泉とM&A戦略の例

ここからは、DEOフレームを用いた他社における競争力の源泉とそれらを起点としたM&A戦略について紹介していきたい。

A社は、“情報の付加価値が高く参入障壁が大きい業界において、様々なパーソナリティーを持つ人材を巻き込みつつ独自のデータプラットフォームを活用することで、顧客の課題解決に繋がる提案を、ROIに注目した優先順位で展開(図4)”している。

【図4】
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また、これらで定義したDEOをもとにして、➀徹底したIssue Drivenで解決すべき課題を施策軸で整理し、➁具体的なマネタイズ手法を定義するとともに、➂ソリューション単位でのROIを整理している。そのうえで、課題解決の手法に基づき注力手法と他社連携、M&A等の個別戦略を策定している(図5)。

【図5】
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結果、A社では景気動向に関わらず、20年以上に渡り増収増益を続けており、事業ポートフォリオの見直しと多角化においても成果を残している。

 

最後に、、、

本稿では、事業成長につながる中期経営計画策定・戦略策定を起点として、時間軸を意識した自社の競争力の源泉を明確化するとともにそれらを各種戦略に紐づけていく手段として、DEOモデルを紹介した。もちろんこの手のフレームは世の中にあまた存在しており、DEOモデルがすべてにおける最適解ではない。

しかしながら、本質的なポイントとしては、共通目線を構築するための手段としてフレームを活用し、フレームに従い他社情報等を整理・インプットすることで、自社の本質的な競争力を明文化することにあると考える。

本稿が、貴社における戦略策定等の一助になれば幸いである。

以上
 

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