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グループ力最大化に向けたグループマネジメント改革 ~OneCompany化に向けて~

コーポレートガバナンス改革をグループ力強化へと昇華させるための処方箋、ラストワンマイルへの対応

日本企業はこれまで様々な困難を乗り越え、M&A活用を含め企業変革を起こしてきた。結果として、企業規模は拡大し組織としての多様性は増してきているが、なぜかグループ力・グループとしての収益性はグローバル企業の後塵を拝する形となっている。グローバル企業と伍して戦うためグループとしてどう進化すべきか、その処方箋、変革のステップを提示したい。

グループ企業の力を出し切れない日本企業。

その原因は強すぎる現場力

【グループマネジメントの難度が高まる】
  • グローバルに複数事業を展開する企業グループのかじ取りが難しいことは想像に難くない。その要因として、「複雑化したポートフォリオの取捨選択の判断が難しい」「大規模・広範なグループ会社をマネジメントし切れない」などが挙げられる
  • 今後、より不確実性が高まる経済環境下では、そのかじ取りはより難しさを増していく。直近COVID-19を経験した多くの日本企業は、これまでの取り組み・準備の不足感を覚え、漠然とした改革の必要性を感じたのではないだろうか
【依然、欧米企業と日本企業では歴然とした格差が存在】
  • 日本企業はこれまでバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災等の危機的な局面を乗り越え、M&Aを積極活用しながらグローバル化、ポートフォリオ経営を推進してきた
  • その結果、確かに事業規模は拡大し、地域・事業面の幅も広がってきているが、残念ながら収益性の観点からは、欧米企業と大きく差をつけられている状況である(図1)。特に「多角化×巨大規模」になるほどにその差は顕著である
  • この差を生んでいる要因は何か。いろいろな角度から指摘はできると考えるが、グループマネジメントの観点から大きく2点が挙げられる。1つ目は、ノンコア・収益を上げられない企業を保有し続けてしまっていること。2つ目は、前線が拡大する中でコントロールが効いておらず非効率が発生していること
  • これはグループ企業数の増加、特に買収した海外企業数の増加、売却件数の少なさからも見て取れる(図2)。これまでの「安定的な競争環境」「単一的な競争環境」であれば、子会社群それぞれが順調に成長しグループ業績を牽引してきたが、現在の環境下ではそれが通用しないのである

 

図1 企業規模(売上)×多角化度合い別収益性(営業利益率)
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図2 格差の要因
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グループ価値最大化に向けたグループマネジメント・OneCompanyの取り組み

【グループ各レイヤーの規律、OneCompanyとしてのグループとしての規律】
  • これまでもコーポレートガバナンス改革の号令のもと、各社は社外取締役登用など意思決定機構改革に取組み、一定の成果も出てきていたが何が足りなかったのだろうか。形式的な取り組みに留まっていた、また日本本社の中での改革に留まっていたのではないだろうか
  • 改革の成果をグループ価値に繋げるためには、改革スコープを一段広げた取り組みが必要である。グループ経営について何歩も先を進んでいる欧米企業の取り組み事項の調査研究からも、グループマネジメントの取り組み全体像は3×3のマトリックスでの対応が重要であると考える(図3)
  • 各レイヤーの規律を正す取り組みは、Role & Responsibilityの取り組みのみに留まらず(形式的に留まらず)、その役割を遂行できる「Capability」「Enabler」の具備が必要となる。グループとしての規律を正す取り組みとして、「機能軸の強化」「インフラ整備」等があげられる
【変革の要諦は、左上から右下へ、早期の全体展開。そして先進企業に学ぶ】
  • 「グローバル先進事例」「日本先行事例」「日本後発事例」について、3×3マトリックスの取り組み状況と、改革の遂行状況を比較するとその差は明らかである(図4)。欧米企業は全領域をカバーしており、結果として積極的なポートフォリオの組換えを行うなど、グループ価値最大化に向けた改革を断行している。一方、日本企業は部分的な取り組みに留まっており、改革も中途半端と言わざるを得ない(図4)
  • 多くの日本企業は今後、更にグローバル展開、事業拡大を志向する中では、これまでのコーポレートガバナンス改革を無駄にしないためにも、もう一段、踏み込んだ改革が求められる。ただ、広範囲に渡る改革となるだけに、多くのステークホルダーが関わるだけに、何をきっかけに、どのような順序で、どの程度の深さでの改革か、躊躇してしまうものと考える。そこは欧米企業を中心とした先駆者の失敗を含めた経験から学ぶことができる
    • 何をきっかけに:大型M&A、本業の業績落ち込み(事業転換)、経営者交代、等
    • どのような順序で:コーポレートガバナンス(左上)を起点に縦・横に拡大
    • どの程度の深さで:リードタイム・コストを要する取り組みを将来的に見据えつつ、人で繋ぐ(内部監査員、ビジネスパートナーなど)、必要最小限のデータで繋ぐ、などの工夫からまずは面をカバー

 

図3 グループガバナンスのフレームワーク
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図4 変革企業例サマリ
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グループマネジメント改革をモニター デロイトとともに

【グループマネジメント改革は全社トランスフォーメーションそのもの】
  • 「何等か基準がありそれを満たせば合格」という類の取り組みではないため、事業・地域戦略を具体化したうえで各レイヤーの役割定義を行う必要があり、その効果拡大のために、場合によっては組織形態を変更するような抜本的な打ち手を採用することもある
  • モニター デロイトは上記のような全社トランスフォーメーションに必要なケイパビリティを有しており、何よりグループマネジメントに関する知見・経験を豊富に有していることから(図5、図6)、今後の日本企業のグループマネジメント改革に大いに貢献できると考えている
     
図5 デロイト トーマツ グループのグループマネジメントモデルの枠組み
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図6 関連情報
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著者

安藤 雄三/Yuzo Ando
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 アソシエイトディレクター

製造業・エネルギー業をはじめ幅広い業界において大規模経営統合(業界再編含む)、グループ組織再編(持株会社体制含む)に関わるプロジェクトを数多く手がける。近年では、コア事業・第一の柱を変革しつつ、新たな事業創出に向けた取組みを後押しするため戦略起点での経営統合・組織再編、その後のグループ経営を強化するグループガバナンス設計等の案件に多数従事している。

伊藤 爵宏/Takahiro Ito
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

製造業を中心に、バイサイドディールにおけるビジネスアドバイザリー、セルサイドディールの構想・実行、PMIにおける統合事務局、グループ子会社の再編構想等、M&A・組織再編全般にアドバイザリー経験を有す。
近年では、日本企業のグローバル経営力強化に向け、グローバル本社・地域統括組織におけるミッション・機能の再定義から組織再編の構想・実行に至る機能・組織変革案件に多数従事している。
 

増田 祐介/Yusuke Masuda
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

M&A/組織再編領域に従事。買収・統合・JV設立等におけるPMIや持株会社化・合併・分割等を伴うグループ組織再編、コーポレート組織再編・機能強化等のテーマについて、構想から実行までの幅広いアドバイザリー経験を有し、伴走型の支援を得意とする。
近年はエネルギー業界を中心に、成長領域へのシフトや多角化推進、グローバル展開等を目的としたグループ組織構造改革・コーポレート組織改革案件に多数従事している。

 

飯塚 良/Ryo Iizuka
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

当社のほか、大手外資系コンサルティング会社、外資系金融機関等にて大規模クロスボーダー案件を中心にM&A戦略、交渉、PMI等のM&Aサービスに約20年間従事。その他事業ポートフォリオ再構築、グローバル組織再編、オフショアアウトソーシング等、全社的な大規模再編も数多く手がける。近年は日本企業による海外企業買収後のグループ全体でのガバナンス再構築、コスト競争力強化、長期ビジョン再設計などを多く支援。

(2020.11.04)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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