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M&A・組織再編を契機とした意識変革・行動変容

日本企業が直面する大変革を完遂・成功させるための処方箋 -戦略・組織・人財の三位一体の改革-

第一の柱の大変革、新たな事業創出が求められる昨今、トップマネジメント主導で魅力的な戦略を描くも、その変化に従業員がついて来られず変革が頓挫してしまう日本企業が多数存在する。M&A・組織再編という起爆剤により変革受容度を高める中で、多面的な変革施策を講じることで意識変革・行動変容を実現させる。

大変革に直面する日本企業。その成果を紡ぐはずの従業員が置き去りになっている 

昨今、日本企業は「両利きの経営」に代表される大変革を推進しており、競合と鎬を削っている。しかしその大変革の成果を紡ぐはずの従業員が変革の波に置き去りになっているケースが散見される。

  • 近年、多くの日本企業が外部環境の急激な変化に対応すべく、成長戦略の見直し、事業ポートフォリオの再構築等の戦略転換や、それに伴う事業の買収売却・海外拠点の統廃合、コーポレート機能部門の再編等の組織再編に着手しており、自社の大変革を起こしている。大変革を実行している企業は数多あるが、市場における企業価値を高められず、競合を圧倒することができなかった企業も数多あるのが実情である。
  • 本来、企業活動の成果は「戦略」「組織」「人財」が三位一体となり相互に噛み合うことで初めて実現されるはずであるが、「人財」の観点を取りこぼしているケースが非常に多いのである。殆どの従業員は、これまでの成功体験・ビジネスモデルに染まっており、中々大きな変革を受容することができない。それに気付かぬまま変革を推進してしまっており、結果として「戦略」「組織」の変革に従業員の意識が追い付かない事態が起こってしまっている。
  • 無論、変革から1年~3年経過している場合でも従業員の意識変革は可能であるが、難易度や時間的コストを考慮した場合、従業員を大変革の波に乗せていくには、まさに“変革局面での意識変革・行動変容”が非常に有効なのである。

図表1:戦略・組織・人財の三位一体の改革
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一気呵成に実施。外科的な要素で意識変革を加速

このような変革期においては、「戦略⇔組織⇔人財」を三位一体で取り組むことにより、戦略実現・組織運営を行う人財の意識変革・行動変容を一気呵成に推進することが重要となる。通常行われている内科的な改革だけに頼るのではなく、戦略転換や組織再編という外科的な要素(揺らぎを与える、非連続の検討を促す)と連動させることで、その意識変革を加速させ、定着させるのである。
 

アプローチの要諦①: 変革の火種を生み、変わらなければならないきっかけをつくる

戦略転換や組織再編は、変革に取り組むメッセージを伝える絶好の機会となる。それによって、従業員は、経営陣の不退転の決意や不可逆な改革であることを感じとる。目指す方向性を変えることや組織を組み直すことは、一時的には組織内に”揺らぎ”(混乱や不安)を発生させるが、無風状態の組織に変革は起こり得ない。変革の初期には、あえて”揺らぎ”を発生させることで変革の火種を生み出すことが重要である。

  • 具体的には、各法人を整理し役割を明確にすることによる組織トップのオーナーシップの醸成、組織の役割再定義による組織成員のミッション理解促進、ポストの創出による新たなリーダー育成、既存組織のパワーバランスのリセット、抜本的な業務の見直しなどが該当する
  • こうしたこれまでのやり方を見直し、変えようとする経営の意図を組織成員に継続的、分かりやすく発信していくことで、組織内に”揺らぎ”を作り出すのである
     

アプローチの要諦➁: 組織に発生する“慣性”を事前に想定し、変革に向けた動きが出るまで打ち手を打ち続ける

戦略転換やそれに伴う組織再編は、変革の成否を握る重要な要素ではあるが、変革を成功に導くためには、“慣性”に適切に対処することも重要である。現状維持を望む組織成員の静かな抵抗である”慣性”への対処が遅れると、変革の機運が失われてしまうことに繋がる。

  • では”慣性”を生じさせる原因は何だろうか。これまでの変革のご支援を通じて我々は共通かつ大きな要因は3つに集約されると考えている。その3つとは①経営の真意が伝わらない(変革の目的・意義や本気度)、②従業員に求められる変化が具体的にイメージされない、③変化に対して会社としてどうサポートしていくかが示されない、ということである
  • これらに適切に対処していくには、どんな小さな動きでも変化が出るまであの手、この手で打ち手を繰り出し、見直し、また繰り出すということをあきらめずにやり続けることが重要である


アプローチの要諦➂: 型をはめることで、変革の動きを加速・拡大させ、定着化する

“揺らぎ”を作り、”慣性”に適切に対処することで、変革への意欲を高められたとしても、行動に繋がらなければ変革は成し遂げられない。従業員の意識・行動を規定しているこれまでのビジネスモデルを効率的に推進するために構築された組織構造を変えることで期待する意識変革・行動変容を促し、定着させることが可能となる(意識変革活動にて一時的に変化を発生させても、形状記憶的に知らず知らずに、短期的に戻ってしまう)。

  • 具体的には、個別事業の重要アジェンダに諸手を挙げて流れてしまう風土を断ち切るべく、組織役割を明確にして、敢えて組織・人財を分ける。受け身・サポート意識の強いコーポレートに対して、法人を分け、グループ間取引を発生させることで、その価値発揮の見える化を促す、などがある
  • また、組織・個人のKGI・KPIの再設定、組織体制のチューニングや人財のリソースシフト、それに伴うリスキルを実行できる人事制度・人財開発体系の整備、ミドルの組織マネジメント力の向上など、組織構造、人財開発、組織開発、を織り交ぜた施策の検討と実行によって、あるべき行動を定着化させることも必要となる。これらは経営企画、人事など部門を跨いだ連携・調整が必要となるため、経営層がオーナーとしてコミットしなければならないことも強調しておきたい
     
図表2:大変革を実現する意識変革・行動変容の全体像
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デロイト トーマツ コンサルティングは「戦略⇔組織⇔人財」の専門家により、三位一体でのサポートが可能 

上述のアプローチはデロイト トーマツ コンサルティングの戦略チーム(モニター デロイト)、組織再編チーム、人事変革チームが三位一体での支援体制を構築している。戦略策定段階からその完遂に必要な従業員の変化を規定し、その変化を推進するためのハード面での組織再編、ソフト面での人事変革を多面的にサポートすることが可能である。

  • 「戦略」「組織」「人財」領域それぞれのコンサルティングファームに依頼して変革を進めることが多いと思われるが、それぞれの領域最適になりがちであり、俯瞰してみると整合していないケースも散見される。一方我々は、各チームともそれぞれの取り組みをタイムリーにフィードバックしながら、総合力でご支援することを通じて、全体最適なソリューションを提供できることが強みであると自負している。

  • 加えて、「人財」が大変革における経営上の重要なアジェンダであることを認識し、戦略策定・組織再編の局面、初期フェーズから当該要素を加味した検討を行う点も当社の特徴であると認識している。


以上

著者

安藤雄三 / Yuzo Ando
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 アソシエイトディレクター

製造業・エネルギー業をはじめ幅広い業界において大規模経営統合(業界再編含む)、グループ組織再編(持株会社体制含む)に関わるプロジェクトを数多く手がける。近年では、コア事業・第一の柱を変革しつつ、新たな事業創出に向けた取組みを後押しするため戦略起点での経営統合・組織再編、その後のグループ経営を強化するグループガバナンス設計等の案件に多数従事している。

 

植木達也 / Tatsuya Ueki
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネジャー

大手電機メーカーを経て現職、製造業を中心に様々な業界に対してM&A・組織再編・提携戦略アドバイザリー等の幅広い経験を持つ。
近年では、知財・調達を中心とした本社機能の効率化・高度化に関するプロジェクトへ多数従事。
 

谷川聡一朗 / Soichiro Tanigawa
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネジャー

大手人材総合サービス企業の組織・人事ソリューション事業を経て現職。組織開発・人材開発の分野において大手メーカーを中心に幅広い経験を持つ。組織風土改革、Change Management、従業員エンゲージメント向上といったテーマへ多数従事している。
 

杉山嘉浩 / Yoshihiro Sugiyama
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアコンサルタント

米系組織人事コンサルティングファームを経て現職。組織診断、従業員意識調査の分野において、製造業を始めとする幅広い業界の企業に対するコンサルティング経験を持つ。従業員エンゲージメント向上、ビジョン浸透といったテーマの案件に多数従事している。
 

(2021.4.5)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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