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本社間接機能改革の実現の鍵はどこにあるか

グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(後編)

実現の鍵は「グローバル本社間接機能の青写真策定・経営トップのコミットメント・外部ガバナンスの強化」

本社間接機能改革の実現の鍵はどこにあるか

実現の鍵は「グローバル本社間接機能の青写真策定・経営トップのコミットメント・外部ガバナンスの強化」
中編で記載したように、「外部力の内部化」による本社間接機能改革は、外部パートナーの力を梃子に、自前主義の限界を打破し、その後に自社へ外部パートナーの力を取り込み、本社間接機能の高付加価値化・効率化を実現する有効なアプローチである。
しかし、あらゆる社内改革がそうであるように、本社間接部門が自らの身を切る、敢えて強い表現を用いれば「自分自身の身売り」を推進する取り組みには、根強い抵抗が予想される。
本稿の締め括りとして、図に示す本社改革の実現の鍵を3点述べる事としたい。
1.グローバル本社間接機能の青写真策定
根強い抵抗を乗り越えて本社改革を実現する上では、あるべき姿の定義、いわゆるグランドデザインの設計が重要となる。グランドデザイン策定に当たっての大きな論点は、「グローバル本社として持つべき機能定義」と「効率化・コスト削減施策定義」である。
「グローバル本社として持つべき機能」の定義では、現状の本社間接機能を高付加価値/低付加価値業務に仕分けしていく「ボトムアップ型」、将来の自社の事業環境を想定し、そこに必要な機能を考えていく「バックキャスト型」、既にグローバル本社間接機能を実践している、欧米グローバル企業の持つ機能と自らが持つ機能のギャップを抽出する「ベンチマーク分析型」などの手法を用いて、将来グローバル本社として持つべき機能を定義していく。
「効率化・コスト削減施策定義」では、まずは、グローバル本社として持つべき機能をインプットし、実際に必要となる体制・コストを明確にし、全体として許容される体制・コストとのギャップを抽出する。次に、抽出したギャップを埋めるための、効率化・コスト削減施策を定義するといった流れで検討する。
この様に、グローバル本社の青写真をトップダウンで定義する事により、本社改革の拠り所が明確になり、各論での抵抗を乗り越えた改革の推進が可能になる。
2.内部ガバナンスの強化:トップ直轄機能
本社間接機能改革を各間接部門に展開する上で、改革プロジェクトをトップ直轄組織と位置づけ、各部門に対して横断的な統制力を効かせる必要がある。
そもそも本社間接機能の改革が頓挫する原因として、PL責任を持たないコストセンターであるが故に、各間接部門では自律的な適正化メカニズムが働かない事が挙げられた。また各間接部門の担当役員は、本質的には各部門の利益代表である為に、自部門の身を切る改革の是非を、全社的・客観的な観点から判断する事が困難である。このような状況・パワーバランスにおいて改革を実現するには、トップダウンで各部門の自律化・抜本的改革を迫るしか方法は無く、トップ直轄の改革プロジェクトを設置し、改革推進のガバナンスを強化する必要がある。
また、多くの案件ではそれ以上の期間を要する為、改革機運が低下し、抵抗勢力の巻き返しを許すリスクがある。よって革新プロジェクト立ち上げ時だけでなく、複数回の継続的なトップメッセージ発信により、改革への揺ぎ無い決意を組織内に浸透させる必要がある。 

本社間接機能改革の実現の鍵はどこにあるか(続き)

3.外部ガバナンスの強化
機能子会社の外部パートナー企業への売却や、外部パートナー企業がマジョリティを持つ共同出資の機能子会社設立が検討される際、最も懸念の声が挙がるのはコントロール力の低下である。
外部化・オフバランス化により対象機能がブラックボックス化し、内部維持では機能していたガバナンスが失われ、デメリットが拡大するリスクが高まる。
その為、外部力の内部化においては、外部ガバナンスを強化する施策を併せて実施する事が必須になる。具体的には、SLA等の契約体系により外部化後の定量目標値に拘束力を持たせる、継続的モニタリングや定期的なベンチマークを実施する機能を設置する、株主間契約により取締役の指名権を確保し、常勤役員の派遣によりグリップを維持し、ブラックボックス化を防ぐ、といった手法が確立されつつある。こういった手法を早い段階から研究し、外部化検討の中にビルトインすれば、一定のコントロール力を維持し、デメリットを抑制する事が可能である。
終わりに
本稿ではグローバル本社への脱皮に向けた本社間接機能の抜本改革~外部力の内部化の推進~と題して、本社間接機能の抜本的な変革に向けた取り組みの考え方・方向性について論じてきた。これまで、効率性の追求や事業への権限委譲の観点から小さく・弱くなった本社間接機能を、自前主義の壁を乗り越え、外部の力を最大限に取り込むことで、グローバル競争に勝つために必要な、戦える本社へ変革することこそ、現在求められている本社間接機能改革の姿勢・スタイルと考える。
日本企業が今後の成長を達成するには、国内に限定せず、世界マーケットも含めて技術を磨き、新たな事業基盤を構築していかなければならない。その厳しい事業環境に打ち勝つためにも、効率的で付加価値の高い磐石なグローバル本社間接機能の存在が拠り所となる。本稿がその一助となれば、幸いである。 

 

グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(前編)
グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(中編)

 

 

図表:グローバル本社間接機能の青写真策定・経営トップのコミットメント・外部ガバナンスの強化

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