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「外部力の内部化」による本社間接機能改革

グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(中編)

「外部力の内部化」は図に示すように「外部パートナー力による改革」とその後の「外部パートナー力の取り込み」の2ステップで実施していく。

「外部力の内部化」による本社間接機能改革

「外部力の内部化」による本社間接機能改革
前編で示したとおり、「自前主義」で本社間接機能の改革を実現するには、「自社内の基準の限界」「自社内の人材・ノウハウの限界」「活躍の場の欠如という限界」を乗り越える必要があり、グローバル競争力の中で求められるスピードとマグニチュードで本社改革を実現するのは至難の業である。
弊社は、これまでの支援実績から、このような状況においては「外部力の内部化」というコンセプトを組み込んだ本社間接機能改革が有効な解決アプローチであると考えている。「外部力の内部化」は図に示すように「外部パートナー力による改革」とその後の「外部パートナー力の取り込み」の2ステップで実施していく。
1つ目の「外部パートナー力による改革」フェーズは、ITや物流専業企業など、本社間接機能の提供を本業とする外部パートナーの力を梃子に、“自前主義の限界”を突破するフェーズである。具体的には、改革対象となる本社間接機能を特定・切り出し、外部パートナーとのジョイントベンチャー設立や、外部パートナーへの転籍型BPO等の手法により、当該機能を外部化し、当該機能が社内で担っていた業務を、外部パートナーに委託することで実現する。
この「外部パートナー力による改革」によって、大きく3つの効果が期待できる。
1つ目の効果は、外部パートナーが持つ専門的ノウハウやリソースの活用である。外部パートナーが自らの本業として、またジョイントベンチャーやBPOの引き受け手として永続的にコミットする事によるメリットは大きい。
2つ目の効果は、余剰人員の雇用確保という制約条件からの開放である。外部パートナーによる人材引き受けにより、その制約から開放される効果は、改革に求められるスピードとマグニチュード確保には非常に大きい。
3つ目の効果は、外部パートナー傘下のコア事業として、市場競争力の向上が期待されることである。従来グループ内においてコストセンターと位置づけられていた組織が、外部化によって明確にPL責任を持った事業体に転換され、費用対効果でその存続是非が判断できる。
続く、「外部パートナー力の取り込み」フェーズは、自社の人材を外部パートナーのリソースと融合させていくことで、自社リソースの意識改革・スキル/能力向上を実現することを目的とするフェーズである。具体的には自社だけで実施していたのでは得がたい/得にくいことを外部パートナー企業という「場」を使って自社人材に経験させていくこととなる。外部パートナー企業という「場」を使うことによる、自社人員の意識改革機会、成長機会は無数にある。
この「外部パートナー力の取り込み」による効果は、企業にとっては、自社への深い理解を持った意識・スキルの高い人材からのサービス提供が受けられることである。本社間接機能に、事業部門のビジネスパートナー、ソリューションプロバイダーとしての役割が強く求められる中で、自社への深い理解を持ち、意識・スキルの高い人材が提供できる付加価値は大きい。
一方で、従業員個々人にとっての効果は、自社内の本社間接機能に従事し続けるより、外部パートナーのコア事業に移籍する方が、将来的な雇用機会の確保や、活躍の場が拡大する面でよりチャンスが広がる点である。自社内で本社間接部門に従事していても、担当する業務の範囲が拡大せず、また年齢構成的にもベテランの比率が多いため、彼らを差し置いて組織のマネジメントにチャレンジできる機会は少ないのが実情である。それに対して、外部パートナーは、当然の事ながら当該本社間接機能の外販を本業としており、受託した新規業務においても専門性を持つ人材を必要としている。もちろん、長年馴れ親しんだ自社の組織を離れ、外部パートナーという新たな環境に適合する必要はあるが、意欲と実力のある人材にはアップサイドの可能性が開かれている状態は、極めて健全といえる。 

 

グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(前編)
グローバル本社への脱皮:本社間接機能の抜本改革(後編)

図表:外部パートナー力による改革 外部パートナー力の取り込み

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