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メタバース活用による金融サービスの変化

メタバースが介在する世界観において金融サービスが直面する変化の可能性

金融サービスはこれまでも、モバイル機器の普及によるデジタル化はもとより、非金融とのコンバージェンスや他業種との連携におけるBaaS(Banking as a Service)など、変化の潮流に面してきた。次なるトレンドと目されるメタバースにおいて金融サービスが予見すべき変化は何か。全体感を整理し、戦略構想の一助とされたい。

金融サービス×メタバースの4領域

メタバースが中心にある世界は、XRとブロックチェーンが融合した世界が最終系と捉えられているが、技術の成熟度合いや規制の課題もあるため、段階的に進んでいくものと考えられる。本稿では、ブロックチェーンを除いて、メタバースが介在する世界観を前提としたときに、金融サービスの在り方がどのように変化していくか考察したい。


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金融サービス提供者は、これまでの金融だけではなく、+非金融を念頭においたサービス開発や、他業種との連携に金融機能を提供するBaaS(Bank as a Service)など、進化の必要性に直面してきた。これらはメタバースによって、消失するトレンドではなく、今後も継続する変化と捉えるべきであるため、それぞれの類型で成立しうるサービスを検討しておくことが望ましい。

加えて、メタバースが介在することを前提とした場合に、メタバースそのものの運営にも、金融サービス提供者が価値を発揮できる可能性があるだろう。実際に韓国では、銀行と不動産会社がメタバースを構築し、コンビニを誘致するなど、実際の消費取引が可能な場を提供する事例も生まれている。また、日本においても、金融とITの10社が「ジャパン・メタバース経済圏 」の創出に向けて基本合意したことも記憶に新しい。

上記を踏まえると、ベースとなるメタバースのみの場合においては、金融機関の立ち位置は、①金融サービサー、②金融+非金融サービサー、③サポーター、および④メタバースの運営者、という4つが想定される。

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① 金融サービサー

メタバース向けの商品開発を行うケースと、バリューチェーンを効率化する2つの方向性で展開が進んでいる。メタバースは、リアルでウェアラブルデバイスなどから得られる部分的な行動履歴のデータに留まらない包括的なデジタイゼーションやVRによるリアルの制限からの解放を軸に、新たな商品の創造とバリューチェーンの刷新をもたらす。

新たな商品の創造は、メタバース上のコミュニティにおける評判や貢献度合いを元にした融資や、個人ではなくコミュニティ単位で提供する決済・融資・保険など、従来とは異なる単位、情報で実現される可能性がある。メタバース上での行動は全てデータ化されているため、過去の特定情報ではなく、今、この瞬間に生まれる多様なデータも活用したリアルタイム・高精度な与信が可能となるだろう。例えば、メタバース上でのソーシャルグッドな取り組みに対する評価などを与信スコアに含めることも考えられる。

バリューチェーンの刷新は、商品開発、営業・マーケティング、業務運用(契約手続き、融資実行・保険金支払いなど)に分けて考えてみたい。

商品開発は、メタバース上のシミュレーションを通じて最適化した保険を現実社会に展開したり、メタバース上の行動履歴などの大量データを統計分析した結果を元に商品を開発するなど、デジタルオリエンティッドな手法が広がる可能性がある。

営業・マーケティングは、体験型コンテンツも活用しながら五感に訴えかけることで、実物がなく、商品性が複雑な金融商品の理解促進や必要性の実感醸成を促す手法や、容姿・時間・場所に縛られずにアバターを通じたテキストベースなどのコミュニケーションが得意なネット民がメタバース上で営業活動を行うなど、これまでの営業・マーケティングとは一線を画したものに変わりうる。

業務運用は、手続きをリアルではなく、メタバース上で行うように促すことで、アナログ情報をデジタル化するプロセスを飛ばし、エンド・ツー・エンドでのデジタル完結手続きを加速させることが可能となる。また、現実の業務運用をメタバース上に再現し、人の配置や業務の流れなどをシミュレーションで最適化した結果を元に、業務をゼロベースで作り変えることも可能となるだろう。

これまで述べてきたサービスの可能性に近しい事例も足元で生まれている。
Fidelity Investments 社は、メタバース上で、投資を始めとした金融商品についてユーザーが学べる新たな機会を提供している。

韓国のKB Kookmin Bank 社は、メタバース上に表示されたアイコンを通じた口座情報閲覧や送金指示に加え、アバターを通じたアドバイザーと個別相談ができるサービスも提供している。

ドイツのERGO グループは、メタバース空間で保険販売のトレーニングを行うことにより、営業職員のスキルを効率的に成長させている。メタバース空間ではメールやチャットを確認しないため、Webベースのトレーニングに比べて効率が70%向上したとしている。

② 金融+非金融サービサー

リアルでも見られるように、、様々な非金融コンテンツの提供事例が生まれている。スペイン第3位の銀行Caixa Bankは、Decentralandに「imaginLAND[1]」を開設し、若年層300万人が利用するネオバンクサービスのブランド「imagin」として、毎月コンサートを開催するなど、様々なイベントやサービスを展開している。リアルとデジタルの連携にも力を入れており、リアル店舗のImaginCafeではメタバースを利用するためのスペースが設けられている。デジタルバンクの「imagin」では、音楽、ビデオゲーム、トレンド、テクノロジー、サステナビリティ、チャリティ、旅行や都市部のモビリティといった領域を定義して非金融サービスを提供しており、今後、imagineLANDでの展開も視野に入れていると思われる。

③ サポーター

メタバースにおけるBaaSは主にブロックチェーンにかかわる部分が多く、ウォレットの実装などが主な事例になっているが、メタバースやゲームのコミュニケーションツールとして利用されるDiscordに銀行サービスを組み込むサービスや、ゲームアカウントと銀行口座の紐づけを行うサービスを提供する事業者が生まれている。

④ メタバースプラットフォーマー

金融サービス提供者がメタバースの運営自体に乗り出すケースもでてきている。先述のジャパン・メタバース経済圏は、日本のメガバンクを始めとした大手企業10社が創出に取り組むプロジェクトで、ロールプレイングゲーム要素を取り入れてユーザーが様々なサービスに出会える仕組みと銀行によるKYCなどの信頼性担保が見込まれている。

戦略策定の必要性

メタバースが介在する世界観を前提とした金融サービスの在り方について述べてきた。読者の中には、まだ他人事に見えるという意見もあるかもしれないが、認識を改めるべきだ。過去の先駆的なサービスとは成否を分ける要素が市場に垣間見えており、着実に変化が進む中で、メタバースとの向き合い方を戦略に落とし込むことは最早必須の状況である。

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