調査レポート

Tech Trend 2021:公共領域向け

日本の政府・中央省庁・地方自治体の取り組みの視点から

日本の政府・中央省庁・地方自治体のさまざまな取り組みにおいてもテクノロジーは密接なものとなっており、テクノロジートレンドは今後数年間に大きな影響を及ぼし得る。本稿では9つのテクノロジートレンドに対し、デジタル庁基本方針を踏まえ、政府・中央省庁・地方自治体の視点からの今後の方向性について考察する。

新たな戦略への舵取り:EBPMのさらなる推進

組織の戦略とテクノロジーの結び付きはより密接となり、動的で継続性の高い戦略策定のフレームワークが求められている。政府や自治体で取り組むEBPM(エビデンスに基づく政策立案)は今後、重要性が増し、政府や自治体のデータの蓄積・正規化、分析手法の多様化を進めるための基盤整備が必要となる。

コアの再生:クラウド・バイ・デフォルトでの基幹系刷新

政府や自治体においてデータ活用の重要性がより増す中、そのメリットを最大化し、行政サービス向上につなげるために、データソースとなる基幹系システムについての見直しが求められる。

システム刷新後も柔軟なシステムの変革や拡張を行い、継続的な改善を行うため、政府や自治体のシステム刷新においては、政府の提唱する「クラウド・バイ・デフォルト原則」の方針に従い、クラウドサービス利用を本格的に検討し、柔軟性・拡張性の高い“Elastic”な基幹システムとするべき。

サプライチェーンの寸断:オープンデータの推進

企業は高度なデジタルテクノロジーや可視化されたデータを活用し、サプライチェーンをバリュードライバにシフトしようとしている。企業におけるサプライチェーンの収益化には社内外のさまざまなデータが必要であり、交通・気象・緊急情報などのオープンデータの利用価値は高く、これらを企業が利用しやすい仕組みが求められる。

企業活動の効率化・高度化と経済活性化はオープンデータ基本指針において意義の1つとして掲げられており、政府や自治体はデータの積極的な公開と民間企業による利用を促進するべき。

MLOps:AIやロボティクスの行政への活用

政府や自治体の情報システムにおけるAIやロボティクス技術の利用が全国各地に広まり始めており、実証実験や一部業務への適用だけでなく、幅広いシーンでのAIの活用が期待されている。

政府や自治体業務の効率化や、行政サービスの高度化に加えて、福祉の対応や災害予測などの地域課題の解決への利用など、大規模にAI導入をするための体制整備を進めるべき。

マシンデータ革命: データをつなぐことによる新たな価値の創出

あらゆる社会活動におけるデータ活用が進む中、政府や自治体においては、官民のさまざまなデータを活用し、そこから導出される洞察に基づき意思決定を行い、住民や企業の利便性向上に加え、社会課題の解決につなげていくことが期待されている。

多様化する利用者との連携機能、ならびに学習機能や意思決定機能を強化することで、過去からの知見と現在のリアルタイムデータから導出される洞察に基づき意思決定につなげる環境を整備するべき。

ゼロトラスト:政府や自治体システムへのゼロトラストの適用

政府や自治体におけるデータ活用、パブリック・クラウドの利用、働き方改革を実現するため、府省ネットワークの外側におけるテレワークの実現や、デジタル・ガバメントにおける API による官民連携等の実現を推進することが期待されている。

従来よりも高度化するサイバーセキュリティ上の脅威へ対処した上で、これらの新しい取り組みの足かせとならないセキュリティの実現が求められる。ゼロトラストに関する調査研究フェーズ段階を終え、情報システムの早期ゼロトラスト化を加速させるとともに、ゼロトラストを実現するための体制づくりに取組むべき。

デジタルワークプレイスの再起動:イノベーションにつなげるデジタルワークプレイス

行政手続きは、対面による本人確認の手続きや、紙を前提とした業務が多数残っており、生産性向上を阻んでいる。政府や自治体においても、対面や紙を前提としない業務プロセスの変革をすすめ、リモートとオフィスで働く職員がそれぞれ業務を遂行できるデジタルワークプレイスの構築を進めるべき。

デジタルワークプレイス実現においては、テレワークにとどまらず、コラボレーションの仕組みを実現することで、社会全体の効率を上げコストを抑制すると共にイノベーションが促進され、住民一人ひとりに対する最適かつ公平なサービス提供の実現が期待できる。

デジタルとフィジカルの融合:新たな住民エクスペリエンスの推進

住民向けの行政サービスのデジタル化は浸透しつつあるが、行政サービスがフィジカル(物理的)なものであれ、デジタルのものであれ、単独で提供されるのではなく、デジタルでとフィジカルが統合された上で高度化された行政サービスが期待されている。

デジタルのメリットを享受するために、行政手続きを民間手続まで含めたワンストップ化(コネクテッド・ワンストップ)していくべき。また、災害罹災証明発行や、生活困窮者の自律支援などのフィジカルでの対応が必要となる場面にて、タブレット等を用いて現地に赴き、フィジカルの状況を把握した状態で手続きはデジタルを利用して迅速に進めるといった、高度な行政サービスの向上へ取り組むべき。

DEIテクノロジー:誰一人取りこぼさない社会へ

多様性(D)、公平性(E)とインクルージョン(I)の領域において、高度なツールを利用した、データドリブンな意思決定やプロセスへのシフトが進んでいる。政府や自治体においても、地理的条件への配慮としてテレビ会議を活用し、離島や山間地からでも専門性を持つ職員のサービスが受けられる環境整備や、各種手続きにおいてLGBTQに配慮した記載項目の見直しなど、誰一人取りこぼさない社会の実現に向けた対応が進められている。

今後は、個人情報保護に十分留意しながらマイナンバーなどのパーソナルデータを活用し、行政サービスを必要とする住民に必要な内容をプロアクティブに提供できる仕組みを整備することで、さらなる進展が期待できる。

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