アライシップは「特別対応」ではなく、「デフォルト」へ~デロイト トーマツ グループが導入した『常用の性別』とは?~ ブックマークが追加されました
デロイト トーマツ グループでは、人権そしてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の観点から、一人ひとりのメンバーがありのままの自分で活躍し、価値を創出できる環境整備につとめている。その一環として、「自身のアイデンティティの一部である属性や特性を、本人が認識する形で組織が尊重する」しくみである”Self-ID”の考え方も推進しており、2024年度には人事管理システムにおける性別に関する項目を改修し、「常用の性別」という新たな項目を追加した。
「常用の性別」は、自認する性別や、本人が職場で認識されたい性別を申告・登録ができるしくみであり、登録は完全に任意である。申請がない場合は、「戸籍上の性別」と「常用の性別」が同じ内容にはなるが、それぞれの情報はシステム上、別階層で運用され、アクセス権限含むセキュリティが厳重に管理されている。「戸籍上の性別」にアクセスできるのは、税務、社会保険など法的・業務的に戸籍上の性別が必須となるごく一部の担当者のみであり、それ以外において性別情報が必要となった場合は、社内の情報管理規程に基づき、「常用の性別」が適切な形で運用される。
本件導入の背景としては大きく二つの課題感があった。
一つ目に、現行の日本の制度では戸籍上の性別の変更要件が厳しく、トランスジェンダー当事者をはじめとするLGBT+当事者が、ありままの自分で活躍するうえでの環境的・構造的な課題が根強く存在していることが挙げられる。
二つ目に、組織目線で長らく抱えてきた課題感が挙げられる。当グループにおいては、2018年頃から人事制度や福利厚生などのしくみをLGBT+当事者向けに改定して以降、近年は社内外啓発やコミュニティ活動などに注力してきた。一方で、一つ目に挙げた環境的・構造的な課題から、当事者向けのしくみは個別対応に依るところも大きく、「例外・特別対応なしには、自分はありのままの自分でいられない」という印象を当事者に抱かせているのではないか、というジレンマや課題感を組織として同時に抱えていた。
そのような課題感を踏まえて導入に踏み切った「常用の性別」は、「例外対応をプロセスの中に落とし込む」ことを軸にしているため、“当事者目線での抜本的なインクルージョン”という観点と、高い安全性や倫理性の確保・リスク低減等の、ベクトルの異なる優先事項が同時に多数存在していた。導入にあたっては、複数の当事者はもちろんのこと、人事やIT等のあらゆる社内部門、そしてシステム改修に対応いただいたベンダー様など、多様なステークホルダーと慎重かつ丁寧に徹底的な協議・検証を重ね、要件や運用の詳細を調整の上、導入に至った次第である。
当グループ内では「性別=常用の性別」という基本方針を全社に浸透させた上で情報管理・運用をしているが、あくまで本人が希望する場合にのみ登録するものであり、カミングアウトに誘導するものではない。
いまだに多くのLGBT+当事者が、自分の性的指向や性自認をほとんどの同僚に打ち明けていないことは、デロイトの調査(「LGBT+Inclusion @ Work: A Global Outlook」)でも示されており、カミングアウトは個人の意思のみに基づき、人それぞれの選択が尊重されるべきであることが大前提である。同時に本調査では、組織の同僚に広くカミングアウトしていると回答した人のうちの9割が「安心してカミングアウトできたのは組織の風土によるところが大きい」と回答しており、自分が自分らしく過ごせるかどうかは、組織や周囲の関係者における人権やDEIの尊重度合いが大きく影響していることも併せて示唆されている。
この度の「常用の性別」の導入は、LGBT+ インクルージョンの観点はもちろんのこと、ありのままの自分で活躍できる職場環境、ひいてはよりインクルーシブな社会の構築に向けた一助となる取り組みのひとつの形であると考えている。
「Diversity, Equity, & Inclusion(DEI)」を自社と顧客の成長を牽引し、社会変革へつなげていくための重要経営戦略の一つとして位置付けているデロイト トーマツ グループにおいて、様々な「違い」を強みとするための施策を、経営層と一体となり幅広く立案・実行しているプロフェッショナルチーム。インクルーシブな職場環境の醸成はもちろん、社会全体のインクルージョン推進強化に向けて様々な取り組みや発信を実行。 関連するリンク デロイト トーマツ グループのDiversity, Equity & Inclusion