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調査レポート
CHROサーベイ2023
人的資本経営に向けた時代の転換点における未来型CHROのあり方とは
「人的資本」の重要性が高まる中、CHROが果たす役割への期待は急速に変化している。このような時代の転換点を見据え、本調査は、CHROをはじめとする人事リーダーを対象に、CHROの役割変化やその変化要因、障壁等を調査・分析し、日系企業のCHROが「人的資本経営」を主導していくための課題および解決の方向性を考察した
目次
- 日本企業におけるCHROの設置割合は3割
- CHROの役割遷移
- CHROの役割変化に影響を与える要因
- CFOとCHROが注力する役割の現在と理想の時間配分
- CHROが理想の役割配分にシフトするうえでの障壁
CHROの役割遷移
しかし、Deloitteが提唱する"4 Faces of CHRO"のフレームワークを活用し、CHROの役割推移の実態を調査したところ、CHROの役割は、直近で大きく変化しつつあることが明らかになった。
4 Faces of CHRO -CHROに期待される4つの役割領域
CHROには、企業価値向上のための"攻め"の役割「ストラテジスト」「カタリスト」と、企業価値の毀損を防止する"守り"の役割「スチュワード」「オペレーター」の4つが求められる。
CHROが現在担っている役割
CHROをはじめとする人事リーダーが現在担っている役割は、以下のとおり。「ストラテジスト」「カタリスト」といった”攻め”の領域を「担っている」と回答した割合が相対的に多かった。
過去(5年前)から変化したCHROの役割
過去と比べて、CHROの”攻め”の役割は全体的に増大している。特に「事業戦略と人事戦略の統合」「労働力計画の策定」「組織文化の醸成」「組織開発の検討・実行」が増えている。
一方、"守り"の役割は「増大した」または「変わらない」がほとんどで、「縮小した」は少数であった。中でも特に「人事データの統合・管理」は増大する傾向がみられる。
今後強化していきたいCHROの役割
CHROをはじめとする人事リーダーに今後強化していきたい役割を聞いたところ、ストラテジスト、カタリストの役割が上位に挙げられ、"攻め"の役割にシフトしていきたい意向が見て取れる。
CFOとCHROが注力する役割の現在と理想の時間配分
4つの役割領域に関する、現在と理想の時間配分を調査したところ、CHROとCFO*とで理想とする時間配分はほぼ同程度の比率となった。一方、現在の時間配分では、CHROはCFOに比べて、ストラテジストの役割に理想通りにシフトしきれておらず、代わりにオペレーターへの配分が大きい。
*CFOの時間配分データは、Deloitte CFO Signals Japan: 2022Q1より引用
CHROが理想の役割配分にシフトするうえでの障壁
CHROをサポートできる経験・スキルのある人材の不足
CHROが理想の役割配分にシフトするうえでの障壁については、「CHROをサポートできる経験・スキルのある人材がいない」という課題がトップ(56%)に挙げられた。急拡大する役割範囲に対して、CHRO自身が単独で全ての領域の推進・実行を担うことは難しく、戦略起点で人事を考えられるブレインとなりうる人材・組織体制の構築が求められているといえる。
意思決定をするためのデータ・システム基盤の不足
次いで挙げられたのは「意思決定をするためのデータ・システム基盤が十分でない」(48%)という課題である。理想の役割配分に向けては「オペレーター」の割合を減らしていくことが必要だが、そのためには、「オペレーター」の役割の中でも増大しつつある人事データを統合するシステム基盤を整備することが必要と考えられる。
調査結果からの示唆・考察
理想の時間配分
4つの役割領域に対する理想の時間配分は、CFOとCHROとでほぼ同じ割合となった。機能トップの時間配分としては、「ストラテジスト」「カタリスト」「スチュワード」「オペレーター」それぞれで4:3:2:1が理想形である可能性が高いといえる。
現在の役割配分とその実態
CHROがストラテジストの役割へ理想どおりシフトしていくためには、オペレーショナル業務の効率化が必要である。そのためには、人事データの統合・管理を整備することがキーとなると考えられる。近年、人事データには従来の人事基礎情報やタレントマネジメント関連情報に加え、360度評価結果やエンゲージメントサーベイ結果などの新しい情報が増えている。それらは整理統合されずに別々に蓄積され、情報を統合するための日常業務に手を取られ、CHROをはじめとする人事リーダーは経営に関与する時間が捻出できない。人事データを統合するシステム基盤を整備し、効率化を図ったうえで、ストラテジストの役割に着手し、次にカタリスト・スチュワードの役割を充実していくことが解決の方向性として考えられる。
調査概要
調査期間 |
: |
2023年4月6日~4月27日 |
調査対象者 |
: |
日系企業のCHROおよび人事/人財部門の幹部 |
参加企業数 |
: |
91社(製造業28社、非製造業63社) |
調査主体:一般社団法人日本CHRO協会と弊社による共同実施
解説者紹介:
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員 古澤 哲也
デロイト トーマツ グループ合同会社
マネジャー 大畑 静美
デロイト トーマツ グループ合同会社
シニアアソシエイト 林 もと香
※所属・役職は執筆時点の情報です。