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デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2024 #2 人間の持続可能性の取り組み

人が躍進すればビジネスも躍進する:人間の持続可能性の取り組み

真の持続可能性を実現するために、組織は関わりを持つ全ての人々に対して価値を提供する必要があります。これは単なる理想ではなく、組織と人間の双方にとってより良い結果をもたらす上で不可欠な要素です。

私たちは人間が原動力となる経済の中で活動しています。組織は分岐点に立っており、多くが産業経済から知識経済へ、そして今では人々の心、思考、そして基本的な人間の特性、つまり私たちの人間性から原動力を得る経済へと移行しています。今日、多くの組織にとって、その労働者や契約者、顧客、コミュニティメンバーといった組織に関わる人々以上に重要な存在はありません。これらの人間的な繋がりは、組織にとっての価値の全て、すなわち収益、イノベーションおよび知的財産、効率性、ブランド価値、生産性、定着率、適応性、リスクを生み出しています。しかし、これらの非常に重要な繋がりに対する組織の優先度は、不十分である場合が多いようです。その理由の一部は、多くの組織が旧来のマインドセットに固執し、組織と個人の双方にとってより良い未来を共に創り出すという働き方には至っていないからです。

ESG(Environmental、Social、Governance)の社会的側面を進めるために、リーダーたちは人間の持続可能性の概念に対する組織の視点を改めて見直すべきです。人間の持続可能性とは、組織が人間としての価値を創造する度合のことです。つまり人々の健康と幸福感を高め、スキル強化により雇用可能性を高め、良い仕事を提供し、昇進の機会を創出し、公平性に向けて前進し、帰属意識を増加させ、パーパスへの繋がりを高めるといったことで、人々により大きな価値を提供することです。

人間の持続可能性という概念は、私たちが2023年のGlobal Human Capital Trendsレポート1 で紹介したもので、「人々が組織にもたらす利益」ではなく、「組織が人々にもたらす利益」に焦点を当てることを組織に求めることを指します。一部の組織は既にこの転換を進めています。グローバル酒造企業であるCuervoの人事部長、Gabriel Sanderは、「企業は労働者に永続的な雇用を提供することはできませんが、労働者を永続的に雇用可能な状態にするべきです」と述べています。

人間の持続可能性:組織が人間としての価値を創造する度合のことです。つまり人々の健康と幸福感を高め、スキル強化により雇用の可能性(エンプロイアビリティ)を高め、良い仕事を提供し、昇進の機会を創出し、公平性に向けて前進し、帰属意識を増加させ、パーパスへの繋がりを高めるといったことで、人々により大きな価値を提供することです。

「企業は労働者に永続的な雇用を提供することはできませんが、労働者永続的に雇用可能な状態にするべきです」
- Gabriel Sander、Cuervo

 

この視点を採用する組織は、人間の結果を改善することが組織の結果を強化し、それが人間の結果の改善につながるという有益なサイクルを築くことができます。これは全ての人々にとって、より良い未来を築くことに貢献します。

ESGの「S」を再定義する

研究によると、ESG(環境、社会、ガバナンス)の捉え方は年々曖昧さや評判の悪さ、意見の対立を引き起こしていることが示されています。2 持続可能性の全ての側面をESGという言葉で包含しようとしてしまうことで、ESGの意味は薄れ、批判の対象になりやすくなります。企業が決算発表の場でESGに対する言及を避けるようになっているのはこのためでしょう。3 ヨーロッパでは多くの国でESGコンプライアンスに対するハードルが高く設定されている一方、他の地域ではESGへの反発が起きており、投資家が完全にESG投資ファンドから引き上げているケースもあります。4 そして一部の組織にとって、ESGはゴールに向けての手段、あるいは業績報告時の一項目に過ぎず、最終的な到達点として考えられていないのかもしれません。

一般的に、組織が接点を持つ人々との関係性は、ESGの「S」の一要素として捉えられますが、そのアプローチには限界があります。比較的定量化しやすいCO2排出量等の環境指標と異なり、社会的指標は明確な定義や標準化が得てして困難なため、「S」は「E」ほど注目されないことがしばしばです。デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2024の調査によれば、リーダーのわずか19%がESGの社会的要素を測定するための非常に信頼性の高い指標を持っていると回答しました。更に、その指標を達成する方法を明確に理解していると強く同意しているのは、そのうちの29%のみです。

組織が人々に与える影響を明確に定義することができない場合、組織はしばしば儀式的あるいは自己アピール的なアプローチを用いて評価を行います。多くの組織は、短期的なリスク(広報活動における課題等)だけを重視し、社会にポジティブな影響を与える努力(例えば、労働者のためのトレーニングや報酬の公正性)を過小評価します。そして、人に関する指標は、表層的あるいは経済的な考え方に立脚したものが中心となります。例えば、従業員のエンゲージメントを測定する指標は、労働者が自分の組織の利益のためにどれだけ自発的に動けるかを示しています。従業員のエンゲージメントが高いことは良いことなのでしょうか?それは確かに組織にとって有益かもしれませんが、それが従業員にとって有益かどうかは明らかではありません。

私たちは、地球の資源が無尽蔵ではなく、複雑で壊れやすいシステムであるということに気づき始めています。そして、地球を育むことが全ての人々にとってより良い未来を築くための基礎であると考えるようになりました。人間の持続可能性に着目することは、組織による人の捉え方のシフトを表しています。それは、組織が影響を及ぼす個々の人々に対して、多次元的に価値を付加するための広範な努力を必要とします。特に図2に示された側面が重要です。人間の持続可能性は、組織と接触する全ての人々、つまり現在の労働者だけでなく、未来の労働者、拡大された(臨時職員やギグワーカー、または外部サプライチェーンを含む)労働者、顧客、投資家、組織が活動するコミュニティ、そして社会全体に適用されるのです。

 

しかし、人間の持続可能性は、単により広範な利害関係者に対してより広範な結果を提供するという、ステークホルダー資本主義の一種ではありません。例えば、ステークホルダー資本主義の名の下に、組織はステークホルダーグループに対する肯定的な貢献を行い、そのグループに対する悪影響のバランスをとろうとするかもしれません。これはカーボン・オフセットが機能するのと同じようなものです。5 これらのオフセットは、組織内の根本的な原因を解決しないことがあり、ひとつの領域でのポジティブな影響が必ずしも他の場所での悪影響を補償するわけではありません。様々なステークホルダーの利益のバランスを取るため、組織の目標に合わせて利益を優先したり、影響力のある個人にとって重要な利益を優先したりすることがあります。これはしばしば社会的な不平等を固定化させたり、組織のESG規制要件の未達やリスクの増加を招いたりすることがあります。6

ステークホルダーだけを重要視すると、組織が長期的な成功のために、より肯定的なステークホルダーとの関係に依拠して行動しているという事実が見えにくくなります。ステークホルダーを重要視する組織であることと、共有価値を創造するための長期的で協力的な努力を要求する持続可能な組織であることは同じではありません。組織が持続可能であるとは、システムレベルで人間による価値創造を妨げる、構造的および制度的な問題に取り組むことです。ジム会員権、瞑想トレーニング、またはコミュニティでのボランティア活動等、新たなプログラムや従業員の福利厚生を追加することは、人間の持続可能性ではありません。人間の持続可能性を達成することは容易ではなく、重要なトレードオフや、困難な構造的および制度的問題の根本原因に対処することができる長期的な実践と短期的なイニシアチブのバランスを慎重に取ることが必要です。

このようなアプローチは現在、初期段階にあります。私たちの調査において、わずか10%の組織が人間の持続可能性を推進する先頭に立っていると回答しています。その中でも、取り組みが断片的で相互に整合していない可能性があり、異なる取り組み(例えば、学位なしの採用、週休3日制、生活賃金、またはスキルパスポートを活用したエンプロイアビリティの改善等)が個別に追求されている可能性があります。

組織が人間の持続可能性をより優先するべきであることを示すサイン

  • 社会的なESG目標、特にウェルビーイング、労働者のスキル、多様性・公平性・包括性(DEI)に関連する目標に対しての推進に苦慮している
  • ESG目標が漠然としており、適切な指標がない。あるいは業務における明確なビジネスケースがないと感じている
  • 労働者が自らの人生における仕事の役割を再定義しようとしている中で、組織として彼らとの関係の変化にどのように対応すべきかがはっきりしていない
  • リーダーが、従業員、顧客、役員、その他のステークホルダーから人間に対する問題についてプレッシャーを感じている
  • 健康と安全に関する事故の増加や、AIによる潜在的な労働者の代替の可能性といった、労働力関連のリスクが増加している

直近のトレンドは、人間の持続可能性を脅かしている

ビジネスと社会の広範な混乱の中で、労働者と組織との関係はますます困難になっています。

 

所属企業が、自分たちを入社当初よりも良い状態にしてくれたと感じている労働者は、たった43%です。

 

所属企業が、自分たちを入社当初よりも良い状態にしてくれたと感じている労働者は、たった43%です。私たちの研究では、労働者は組織が人間の持続可能性を取り込む上での最大の課題として、増加する仕事上のストレスとテクノロジーが仕事を奪うという脅威を挙げています(図3)。

 

以下に示すような世界的な、あるいは労働力上における多くのトレンドが、人々の状態を悪化させる可能性があります:

  • 労働者の「燃え尽き」の頻発:絶え間ない変化と過労が労働者の負担となっています。2022年には労働者のストレスが2年連続で過去最高を更新し、労働者の約半数が「常に」または「頻繁に」疲労やストレスを感じています。7 4人に1人以上が職場で燃え尽き症候群にあると報告しています。8
  • AIが仕事を奪うという懸念:最近の研究によれば、米国とヨーロッパの労働者の約3分の2が生成AIの影響を受け、現在の仕事の最大4分の1が生成AIに置き換えられるとされています。9 世界経済フォーラムは、生成AIが次の5年間で全世界8300万人の失業をもたらす可能性があると推計しています。10 女性労働者は特にその可能性があり、労働力の数において男性が女性を上回っている一方で、女性は男性よりもAIの影響を受けやすいとされています。11
  • スキルニーズの急速な進化:スキルの陳腐化がますます早まり、求められるスキルは急速に進化しています。12 しかし、労働環境の変化に応じた新たなスキル獲得に向けて組織において十分な投資を行っていると強く同意した経営陣は、わずか5%でした。13
  • ギグワーカー・契約労働者への支援:全世界で約20億人が契約労働者といった非正規労働です。14 これらの労働者は、しばしば正規労働者と実質的に同じ仕事を行うことがありますが、給与は低く、福利厚生や補償が少ない可能性があります。15
  • DEI(多様性、公平性、包括性)に関する目に見えるような進歩の欠如:人事部門のリーダーのほぼ全員(97%)が、組織がDEIに関する成果を改善するような改革を行っていると述べていますが、進歩を遂げたことにと強く同意している労働者は37%しかいません。16
  • 現場労働者の劣悪な条件:現場労働者は全世界の労働者の約80%を占めていますが、17 研究によれば、彼らは十分な訓練が受けられていないと感じており、意義あるプロジェクトへの参加機会が少ない、賃金が低い、有給休暇が少ないといった状況にある可能性が高いです。更に、健康保険を持っている可能性も低いとされています。18
  • 気候変動とエネルギー転換が世界の労働者に与える影響:Deloitte Economics Instituteの推計では、全世界の労働力の4分の1にあたる8億人以上の仕事が、清潔な空気や水へのアクセス、または転換の経済的影響等、極端な気候に非常に影響を受けやすいとされています。19

経営陣は、概念としては人間の持続可能性のアイデアに賛成しています。Deloitte Global Skills-based Organization 調査に参加した大多数の回答者(79%)は、組織は労働者もとい人間や社会に価値を創造する責任があると述べており、20 81%が人間の持続可能性が非常に重要または極めて重要だと述べています。しかし、この分野でリードしていると述べたのは経営陣のわずか12%であり、17%がまだ進歩を遂げていないと述べています。一方、労働者の約4分の1(27%)しか、雇用主が自分たちに価値を創造している進歩を遂げていると述べていません。21

 

人に対する搾取的なアプローチ、つまり組織が人々から受け取る直接的な価値を最大化し、そのコストを最小化しようとするアプローチは、上記の傾向を悪化させる可能性があります。つまり、組織がAIを使って仕事を創出したり改善したりするのではなく排除しようとしたり、ポストカーボンへの移行を受け入れるのではなく抵抗したり、セーフティネットの乏しいギグワーカーの数を増やしたり、DEI(多様性、公平性、包括性)に関連する投資を怠ったり、労働者を燃え尽かせたりすることになります。

これらの発展の多くは、人々と組織の両方にとって大きな可能性を提示しています。人間の持続可能性は、より良い未来を築くための鍵を提供してくれているのです。

人が躍進すればビジネスも躍進する

人間の持続可能性を重視することで、組織と人々の双方にとって有益な結果を生み出すことができます。

人間の持続可能性を重視することで、組織は人に関する問題に対して、公共政策よりも更に強固な施策を展開することができます。公共政策は一般的に、変化のペースや本来カバーすべき範囲からは後れを取ってしまうものです。米国や日本における人的資本開示に関する法令や、EUの新たなサステナビリティ報告基準等の法規制は必要かもしれませんが、必ずしも十分とは限りません。

人々は、組織にリスクをもたらす可能性がある一方で、大きな機会ももたらします。組織の人々が創り出すアイデア、技術、ブランド力、その他の差別化要素である無形資産が、2022年の米国企業資産の90%を占めていたことを考えてみてください。22 この数値は新興市場ではやや低いものの、他の先進市場では同様のレベルに近づいています。23

研究は一貫して、人間の持続可能性に関連する実践に取り組んでいる組織が、より強固なビジネス結果を出していることを示しています。オックスフォード大学のWellbeing Research Centerの分析では、「従業員のウェルビーイングと企業の業績との間には強い正の関係が存在する」とし、ウェルビーイングが最も高い組織は利益も株価もより強いとしています。24 更に、人間の持続可能性の問題に対応する上で最も高い評価を受けている組織は、一貫して米国大型株インデックスであるラッセル1000指数を上回る業績を上げています。25

実際、労働力の扱いについて最も高い評価を得ている組織は、5年間の自己資本利益率が2.2%高く、収益1ドル当たりのCO2排出量が半分であり、家族を養うための生活賃金を2倍以上支払っているようです26 

人間の持続可能性と組織価値の向上との関連性を示す要因はいくつかあります。

  • 人間の持続可能性を重視することで、組織はより大きな多様性、公平性、包括性(DEI)の恩恵を受けることができるかもしれません。多様性の高い組織は、財務面で競合他社を上回る可能性が2.4倍高くなります。27
  • スキル開発に投資する組織は、より良いビジネス成果を上げています。業績の高い組織の従業員の84%は、職務を適切に遂行するために必要なトレーニングを受けていると回答しています。28
  • 人件費の切り詰めは、概して逆効果となります。低賃金は、多くの場合、離職率の上昇、売上の減少、生産性の低下、勤怠の低迷、イノベーション創出力の低下、不十分な業務遂行、ミスの発生、顧客やマネージャーのフラストレーション拡大等の事象に繋がります。29
  • 労働者の健康と福祉を改善することは、労働力のリスクを減らすことができます。労働者の大多数は、キャリアアップよりも自身の健康増進の方が重要であり、自分のウェルビーイングのために退職することを真剣に考えていると述べています。30
  • 消費者は社会的責任のある組織を支持する傾向が強いです。消費者の約4分の3 (76%) は、社会的責任を果たしている組織から購入したいと答えています。31

これらの理由やその他の理由から、人間の持続可能性に関するアジェンダは、組織の将来性を高める一助となりえます。組織は、これらのテーマに積極的に取り組むことで、多様な労働力にリーチし、雇用し、開発することができ、強固で多様な人材パイプラインを築き、よりやりがいがあり生産的な職場を創ることで、様々なリスクから自己を守り、消費者に魅力を感じさせることができるのです。

リーダーが人間の持続可能性を促進させる方法

人間の持続可能性を受け入れるために、組織はまず、人々との関係に対する考え方をリセットする必要があります。

 

人間の持続可能性に対するマインドセットは、人々に対する搾取的、経済的な考え方から、組織に関わる各人に対してより大きな価値を生み出すことに重きを置く考え方へと転換させます。

 

人間の持続可能性に対するマインドセットは、人々に対する搾取的、経済的な考え方から、組織に関わる各人に対してより大きな価値を生み出すことに重きを置く考え方へと転換させます。この転換によって、信頼を重要なハブとして使用しながら、人間の持続可能性のアジェンダを支援するためのより広範な行動をリーダーが実施するための舞台を設定することができます。

次のアクションから始めることを検討してください。

  • 人間の成果を測定する指標を重視する。組織は多くの場合、従業員に関する指標を成果とインパクトの進捗を評価というよりも、従業員のアウトプットや活動を定量化、あるいは単なるチェックリストとして設計しています。例えば、約4分の1 (23%) の組織が、コンプライアンス基準の遵守に基づいて多様性に関するコミットメントの進捗を測定しています。32

以下に示すような要素を測定することを検討してみてください。これらの要素は、組織が人々と組織自体のためのより良い未来を創り出すために行動できるものであり、人々の中には外部のサプライチェーンや契約労働者等の労働者も含まれます。

領域

指標例

スキル開発と雇用可能性

スキル開発の指標は、組織が正規労働者、それ以外の労働者、および/または将来の労働者に提供している価値を示すことができます。

  • AIを用いた、人々が新しいスキルを習得する速度の分析
  • スキルと学習に対する労働者の成果への影響(例:昇進、個々のパフォーマンス、雇用可能性)
  • スキルと学習に対する組織の結果への影響(例:売上や顧客満足度)
  • AI 等のディスラプションによって職を追われた労働者のうち、再びスキルを身につけて「良い仕事」に就いている労働者の割合

ウェルビーイング

ウェルビーイングの指標には、感情的、精神的、身体的、社会的、および金融的ウェルビーイングが含まれるべきです。33

  • AIを用いた感情分析、サーベイ、インタビューの結果の分析
  • 勤務時間外に送信される業務関連のメール
  • 度重なる医療費請求に関連する健康の公平性とその傾向
  • 人々の許可を得てウェアラブル端末や脳科学技術から取得した身体、感情、精神の健康と安全のデータ
  • センサー、メール、チャット、カレンダーによって収集されるシフトまたは労働時間のデータ(例えば、有給休暇の使用、残業)34

パーパス

パーパスに関する指標は、人々が自分の人生に意味があり、世界と自分の仕事にプラスの変化をもたらしていると感じている度合を測定します。

  • 個々人のパーパスと人生の意義に関する認識をはかるサーベイおよびパルスチェック
  • AI を活用した従業員のモチベーションと感情の分析35
  • AIを活用した、有意義で付加価値のある業務と反復的で付加価値のない作業に費やした時間の分析
  • 参加度合または費やされた時間の割合に基づくボランティア活動または社会的インパクト活動への関与
  • 目的と相関する(肯定的または否定的な)要素、(例;労働者の休職、離職率、成績、利益)36

多様性、公平性、包括性

DEI指標は、労働者が多様性、包括性、および職場での不平等の根本原因への対処の結果として、労働者が公平性と帰属感をどの程度体験しているかを測定します。

  • 給与の公平性度合の分析
  • 特定の労働力における不平等の根本原因分析
  • 組織ネットワーク分析による、公平性のための介入効果の測定(例:組織ネットワーク内の帰属意識や多様性の測定)
  • 様々な労働者グループに対する様々な側面における公平性のある結果(例:リーダーシップへの昇進、内部の流動性、退職年金制度への加入)

キャリアの安定性と昇進の機会

キャリアの安定性と昇進に関する指標は、組織が労働者の経済的流動性と昇進をどれだけ促進しているかの指標となりえます。37

  • 学位ではなくスキルに基づいて採用される人々の割合
  • ひとつ上のレベルに移動するのにかかる平均的な期間(成長速度)
  • 組織内から昇進した上級管理職の割合
  • 定着率と賃金水準に基づくキャリアの安定性

社会的インパクト

社会的インパクトの指標は、組織のコミュニティや世界全体に対する貢献を測定します。

  • 収入の創出、賃金の上昇、雇用の創出、起業の機会等によって測定される経済的エンパワーメント
  • スキルと雇用可能性への影響
  • 医療へのアクセス、疾病予防、幸福度、気候の持続可能性、その他の指標に基づくコミュニティの健康と福祉への影響
  • 例えば、形成された官民パートナーシップ、生み出された新しいアイデア、コミュニティ内で共有された知識の数によって測定されるソーシャルイノベーションとコラボレーションによるインパクト

 

  • 人間の持続可能性に関する指標とリーダー・マネージャーの報酬を紐づける。何かについて進歩を遂げるためには、組織はリーダーに責任を負わせる必要があります。組織は、主要な人間の持続可能性の結果指標と人間の持続可能性の推進を促す要素に関する目標を設定し、それらを達成するためのインセンティブを付けるべきです。

多くの組織は既にこの方向に進んでいます。S&P 500の組織のほぼ4分の3が、経営報酬をサステナビリティ指標に結びつけています。38 例えば、Genpactは、AIチャットボットを含む一連の内部テクノロジーツールを使用して定期的に従業員と接触し、何がうまくいっているか、何がうまくいっていないかを把握し、従業員の気分や感情を測定します。このツールは、労働力の「気分スコア」を集計し、CEOを含む組織のトップ150人のリーダーのボーナスの10%に関連づけられます。39 Mastercardはこれを更に進め、全従業員のボーナスを一部、組織のパフォーマンスに基づいて決定しています。これには、カーボンニュートラル、金融包摂、ジェンダー賃金平等が含まれます。40 そうはいっても、道のりはまだ長いようです。自組織とリーダーが従業員の包括的なウェルビーイングに対して責任を負うと述べていたのは、調査回答者の半数以下でした。

  • 人間の持続可能性のガバナンスを取締役会と経営層に組み入れる。人間の持続可能性は、取締役会において戦略、リスク、文化、ESGとそのビジネス結果との関係を監督するため、ますます中心的な議題となっています。6つの組織の取締役であるLarry Quinlanは、「DEIとESGのようなテーマについて、取締役会レベルでの議論が増えており、また従業員の期待、目的、スキルの変化といったトピックも、取締役会レベルで重要になっています」と述べています。Deloitte USの研究の1つでも、取締役会のメンバーや経営層のリーダーたちは、人間の持続可能性の問題を、内部の労働力リスクの中で最上位にランク付けしました。しかし、多くの人がそれらをマネジメントする能力に自信を持っていません(図5)。41

取締役会が監督する一方で、最終的には経営層が人間の持続可能性を運用し、組織内の全てにおいて人間の躍進を支援する活動に積極的に取り組んでいることを確認する責任があります。経営層の大多数(95%)は、役員が従業員のウェルビーイングに責任を負うべきであると同意しています。42 従業員のウェルビーイングは、効果的な人間の持続可能性の取り組みの先行指標になります。しかし、その責任を果たすためには、最高レベルでのよく検討された、横断的なガバナンスが必要になることがあります。

これまで、人に関連する問題は人事の所管でした。しかし、人間の持続可能性についてマネジメントを行うということは、財務、IT、オペレーション等、組織のほぼ全ての部分にまたがるため、人事部門だけでその仕事を行うことはできません。組織は、境界のない人事アプローチをとって、各機能のオーケストレーションを行い、人間の持続可能性の達成に向けて推進するべきです。組織はまた、機能間の点と点をつなぐために人間の持続可能性に関するチーフオフィサー責任者を任命するか、人間の持続可能性の主要な要素を担当する新しい役職(仕事の再設計者、パーパスの番人、またはアップスキルの提唱者等)を作ることを検討するかもしれません。

  • 労働者、将来の労働者、そしてその他の人々と彼ら自身の役割の定義や人間の持続可能性のイニシアチブを共に作り上げる。個々の価値を創出するためには、個々の意見が必要です。リーダーは、労働者、将来の労働者、臨時労働者、コミュニティメンバー、そして組織の人に関するエコシステム内のメンバーとの対話により、彼らが何を価値あるものと見なし、それをどのように共に追求するかについて議論することができます。

こうした議論は様々な方法で具体化されるかもしれませんが、1つの重要なテーマは労働者の役割の再検討かもしれません。例えば、業務の設計にウェルビーイングを取り入れる、パーパスを中心に構築する、または労働者に自分の仕事が「どのように」遂行されるかを定義する自由と自主性を与えること等が考えられます。トマト加工会社のMorning Starを例に考えてみましょう。そこでは、各従業員が自分自身の成果と解決すべき問題を設定します。例えば、ある労働者の個人的な使命は、極めて効率的で環境に優しい方法でトマトをジュースに変えることです。その使命に関する声明では、彼らが目標を達成するためにどのように働くか、誰と協力するか、どのような決定責任を負うのかを説明しています。43

このようなアプローチは、仕事の流れの中で自律性、継続的な学習と能力開発を可能にし、問題解決に向けた想像力や好奇心(問題や機会を特定し、解決策を開発、テスト、反復する際に用いられる)等の人間らしい能力を育むことができます。

また、労働者のスキルや人間らしい能力、個々のモチベーションや情熱を常に進化し続けるプロジェクトや課題のポートフォリオにマッチさせることによって、労働者の役割はより流動的になるかもしれません。これにより、より大きなアジリティ、多様性、平等性、包括性が獲得され、そして労働者にはより大きな成長、交渉力、選択の可能性が解き放たれるでしょう。44 役割の再定義、課題とのマッチングというどちらのアプローチにおいても、何をどのように行うかについて労働者自身と協議しながら仕事を再定義することになります。

  • マネージャーの人間の持続可能性の役割を高め、推進に向け自主性をもたせる。マネージャーは、労働者のスキル開発を支援し、チーム内での心理的安全性と帰属意識を創出する一線のリーダーシップとして、人間の持続可能性を推進する上で重要な役割を果たすことができます。ある研究では、世界中の労働者の6割が、仕事が自分のメンタルヘルスに影響を与える最大の要因だと述べています。同じ研究では、マネージャーが労働者の精神的健康に対して配偶者と同じくらい、また医者やセラピストよりも大きな影響を与えることが明らかになっています。約7割の労働者が、組織とマネージャーには労働者のメンタルヘルスに対する取り組みをもっとしてもらいたいと望んでいます。45 組織は、人間の持続可能性に関する施策とやるべきことと整合を取る意味でも、マネージャーにトレーニングやリソース、自律性を与えるべきです。更に、マネージャーが人間の持続可能性の指標を把握できるよう明示化することで、組織がコミットメントを達成する一助になります。
  • 先進的な組織の職場のケースから学んでみる。先進的に人間の持続可能性を推進している組織は、労働者と社会にとってより大きな価値を付加するための取り組みを実施し、一部のケースにおいては組織における慣例の見直しを行っています。人間の持続可能性の実現のために以下の組織が実践しているイニシアチブをご覧ください:
    • AT&T:大学の学位を必要とする求人は5%未満となっています。また、組織は大規模にトレーニングを行い、トップマネージャーを自社の現場経験者から登用しています。その中には、CEOのJohn Stankeyも含まれます。彼は大学の学位取得後、AT&Tでのキャリアを顧客からの電話受付業務から始めました。46
    • Zurich Insurance Group:ピープル・アナリティクスは労働者の現在のスキルと将来のスキル要件を評価し、テクノロジーにより学習と開発の機会をキュレートしています。またケイパビリティ・ネットワーク・マッピングと称して、組織内で特定のスキルと能力のネットワークを持っている領域を特定し、労働者自身のネットワーク強化を支援しています。47
    • Chobani:工場の労働者は在籍期間の平均は、業界平均よりも長い6年間となっています。これは、組織が難民雇用に力点を置き、語学クラスやマネージャー向けの語学プログラム、育児手当を提供し、比較的高い初任給を起用していることによるものかもしれません。48
    • Unilever:Unileverの「U-Work」プログラムは、一連の短期契約でUnileverと契約する臨時労働者に対して、保証された最低限の報酬、組織のリソースへのアクセス、臨時雇用者向けの医療保険と退職金供給等のコアな一連の福利厚生を提供します。49
    • 日立:エグゼクティブ・サステナビリティ・コミッティは、質の高い教育、ジェンダー平等、仕事と経済成長、健康と福祉、きれいな水と衛生等日立にとって最も重要な社会的な課題を提起する11の目標に取り組んでいます。50 また、各個人の労働時間を検知し、過労労働者への指導方法の提案を含むアラートを監督者に送信するシステムや、行動の変化を促す労働者へのナッジを行うシステムを使用して過労の防止を目指しています。51

金融面の持続可能性は人間の持続可能性につながる:PayPalのケース

2015年、PayPalはテクノロジーを使用して金融サービスを民主化し、金融のウェルビーイングを改善するという新たな公的ミッションを開始しました。ですが、自社の新入社員や現場の労働者の金融面のウェルビーイング度合を調査し、多くの従業員が金銭的に苦労していることが判明した2018年に、それは自社のミッションにもなりました。約3分の2がぎりぎりの生活をしていると報告し、会社は純可処分所得(税金と費用を支払った後の余裕のある所得52 )が5%程度まで下がると推定しました。これは、組織が市場価格以上で支払っているにも関わらず、です。53
金融のウェルビーイングが身体的、精神的、感情的なウェルビーイングから切り離せないと認識して、PayPalは2019年に労働者の金融のウェルビーイングの改善に向けた包括的なプログラムを開始しました。この取り組みには、医療費の削減、(レベルや在職期間に関係しない)全ての労働者への株式付与、適切な場合における賃金の引き上げ、個人への金融教育リソースへのアクセスが含まれていました。54 その後、組織は労働者により株式獲得することを可能にし、正式な給料日前に稼いだ賃金を受け取ることが仕組みを整備しました。55

このプログラムには初年度だけで数千万ドルがかかることが予想され、組織に金融的な負担をかけることなく、従業員の経済的ニーズに応える方法を見つけるのは挑戦でした。しかし、経営陣は長期的な視点を持ち、それが労働者にとって正しいことであるだけでなく、ビジネス的にも合理的であることに合意しました。組織は、離職率が1%減少する毎に年間50万ドル節約できると推定し、その内訳は採用、オンボーディング、トレーニングに関するコスト削減と生産性の向上であるとしました。56

現在、PayPalは労働者の推定純可処分所得を全世界的で26%まで引き上げ、労働者の金融的なストレスや欠勤は大幅に減少しました。57 組織は、顧客のニーズに答え、イノベーションを起こす能力が高まると共に、従業員のエンゲージメントスコア、生産性、リテンション、顧客NPSで過去最高を記録しています。58

PayPalは、全ての経営陣と取締役にとって、金融面のウェルビーイングは人間の持続可能性に関する緊急の課題のひとつであると提唱し主導的な役割を担うことで、そのミッションを継続しています。「様々な企業の労働者への影響を足し合わせると、家族、経済、コミュニティ全体に波及する大きな数字にすぐ到達するのです」と、PayPalのコーポレートアフェアーズのシニアディレクターであり、ソーシャルイノベーションのグローバルヘッドであるTyler Spaldingは述べています。

持続可能性における人間の位置づけ

人間の持続可能性は長期的な取り組みです。今日実施されている戦略は、労働者、組織、そして社会が現在および未来の世代にわたって存続し、繁栄するかどうかを決定するのに一役買うものです。これは、気候の持続可能性、公平性、信頼、目的、幸福感、帰属意識等、私たちが人間として実行し、必要とする全てのこととの間の相互接続性を浮き彫りにし、私たち全ての人間のためのより良い未来を創造する道筋になります。また、リーダーや組織に、人間の繁栄の番人としての役割を反映し、行動するよう求めます。そして、影響を受ける範囲内で人間の結果を優先し、測定し、改善することを約束します。

この取り組みは一朝一夕で終わるわけではありません。タスクは複雑であり、世の中の変化につれて常に進化するでしょう。組織はリードしていく必要があり、ベストプラクティスを定義し、指標を標準化し、賢明な施策を推進するために、連合体の一部として共同で働くことも検討するべきです。これには、ビジネスと個人および社会との関係についての根本的な思い込みに挑戦することが必要です。例えば人々を主にコストとして扱う会計ルールの改訂を提案している組織もあります。59 ただし、それができたとしても、私たちの研究によれば、人間の持続可能性の取り組みに対する進展の主な課題は内部の制約であり、十分なリソースを持っているという回答者はほとんどいません。

人間の持続可能性という考えは、いくつかのシンプルな原則に基づいています。あなたの組織に関連する人々は、重要な方法で組織に影響を与える力を持っています。あなたの組織は、それぞれの人に影響を与える力を持っています。そして、あなたの組織とその人々はお互いの価値を理解し、創造することにより、全ての人々のビジネス、仕事、生活を改善することができます。

調査方法

デロイトのグローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2024は、世界95カ国の様々な業種・業界における14,000人のビジネス・人事リーダーを対象に実施されました。基礎データを形成する広範囲な調査に加えて、今年は労働者とリーダーそれぞれに特化した調査の視点を反映し、リーダーの認識と労働者の現実とのギャップを明らかにすることを目指しました。リーダー向けの調査は、最新の組織・人事課題に関するリーダーの考え方を理解するため、Oxford Economicsと共同で、世界中の経営者と役員1,000人を対象に実施されました。更に、これらの調査データは、複数の先進的な組織のリーダーとのインタビューによって補足されています。これらの洞察により、本レポートのトレンドが形作られました。

Endnotes

1 Sue Cantrell, Karen Cunningham, Laura Richards, Kraig Eaton, David Mallon, Nic Scoble-Williams, Michael Griffiths, John Forsythe, and Steve Hatfield, Advancing the human element of sustainability, Deloitte Insights, January 9, 2023.

2 Alan Murray and David Meyer, “‘ESG’ represents a fundamental shif t in business strategy—but the term is unclear, unpopular, and increasingly polarizing,” Fortune, July 21, 2022.

3 John Butters, “Lowest number of S&P 500 companies citing “ESG” on earnings calls since Q2 2020,”FactSet, June 12, 2023.

4 Nicole Goodkind, “ESG has lost its meaning. One advocate says let's throw it in the trash,” CNNBusiness, October 3, 2023; Tommy Wilkes and Patturaja Murugaboopathy, “ESG equity funds suffer big outflows, buffeted by market jitters and US backlash,” Reuters, July 6, 2023.

5 Rachel Dekker, “Why stakeholder capitalism is not enough,” The Embedding Project, October 5, 2021.

6 Ibid.

7 Gallup, State of the global workplace: 2023 report, accessed December 2023.

8 Future Forum, Future Forum Pulse, February 2023.

9 Joseph Briggs and Devesh Kodnani, The potentially large effects of artificial intelligence on economic growth, Goldman Sachs, March 26, 2023.

10 World Economic Forum, Future of jobs report 2023, May 2023.

11 Kenan Institute of Private Enterprise, “Will generative AI disproportionately affect the jobs of women?,” April 18, 2023.

12 Jorge Tamayo, Leila Doumi, Sagar Goel, Orsolya Kovács-Ondrejkovic, and Raffaella Sadun, “Reskilling in the age of AI,” Harvard Business Review, September–October 2023.

13 Michael Griffiths and Robin Jones, “The skills-based organization,” Deloitte, November 2, 2022.

14 Kunal Sen, “Over 2 billion workers globally are informal — what should we do about it?,” United Nations University World Institute for Development Economics Research, May 2021.

15 World Economic Forum, The Good Work Framework: A new business agenda for the future of work, May 17, 2022; Catherine Bracy, “A more ethical approach to employing contractors,” Harvard Business Review, August 2, 2023.

16 Jeremie Brecheisen, “Where companies think companies diversity, equity, inclusion, and belonging efforts are failing,” Harvard Business Review, March 9, 2023.

17 Microsoft, Work Trend Index special report: Technology can help unlock a new future for frontline workers, January 12, 2022.

18 Microsof t 2023 Work Trend Index: Annual Report; Ed Frauenheim, “Purpose at work: Soaring over gaps with incredible company culture,” Great Place to Work, June 2, 2022; Naina Dhingra, Andrew Samo, Bill Schaninger, and Matt Schrimper, “Help your employees find purpose—or watch them leave,” McKinsey & Company, April 5, 2021; Matt Gonzales, “The plight of frontline workers,” SHRM, January 14, 2023.

19 Pradeep Philip, Claire Ibrahim, and Emily Hayward, Work toward net-zero, Deloitte, November 2022.

20 Griffiths and Jones, “The skills-based organization.”

21 Ibid.

22 Brand Finance, Global Intangible Finance Tracking™ 2022, November 2022.

23 Ibid.

24 University of Oxford WellBeing Research Center, “Homepage,” accessed December 2023.

25 JUST Capital, “Index concepts,” September 2023.

26 JUST Capital, “Index concepts,” October 2023.

27 Development Dimensions International, Inc., Diversity, equity, and inclusion report 2023, accessed December 2023.

28 IBM, The value of training, accessed December 2023.

29 Ton, The Case for Good Jobs.

30 Steve Hatfield, Jen Fisher, and Paul H. Silverglate, The C-suite's role in well-being, Deloitte Insights, June 22, 2022.

31 World Economic Forum, The Good Work Framework, May 2022.

32 Christina Brodzik et al., Taking bold action for equitable outcomes, Deloitte Insights, January 9, 2023.

33 Colleen Bordeaux, Jen Fisher, and Anh Nguyen Phillips, Why reporting workplace well-being metrics is a good idea, Deloitte Insights, June 21, 2022.

34 Pamela B. de Cordova, Michelle A. Bradford, and Patricia W. Stone, “Increased errors and decreased performance at night: A systematic review of the evidence concerning shift work and quality,” Work 53, no. 4 (2016): pp. 825–834; Katharine R. Parkes, “Shift schedules on North Sea oil/gas installations: A systematic review of their impact on performance, safety, and health,” Safety Science 50, no. 7 (2012): pp. 1636–1651.

35 Julie Lodge-Jarrett, “Ford’s employee sentiment strategy: Ask/listen/observe,” The Institute for Corporate Productivity, April 1, 2020. 

36 Rhonda Evans and Tony Siesfeld, Measuring the business value of corporate social impact, Deloitte Insights, July 31, 2020.

37 7American Opportunity Index, “Homepage,” accessed December 2023.

38 Ted Jarvis, Jamie McGough, and Donald Kalfen, “Incentives linked to ESG metrics among S&P 500 companies,” Harvard Law School Forum on Corporate Governance, July 20, 2023.

39 Amber Burton, “Genpact is using AI to flag employee dissatisfaction and tying leaders’ bonuses to the results,” Fortune, June 26, 2023.

40 Michael Miebach, “Sharing accountability and success: Why we’re linking employee compensation to ESG goals,” Mastercard, April 19, 2022.

41 Deloitte workforce risk survey of 875 different C-suite leaders, executives, and independent board members, conducted in winter, 2021. For more on workforce risk, see: Joseph B. Fuller et al., Managing workforce risk in an era of unpredictability and disruption, Deloitte Insights, February 24, 2023.

42 Hatfield, Fisher, and Silverglate, The C-suite’s role in well-being.

43 Susan Cantrell, “Beyond the job,” SHRM Executive Network, accessed December 2023.

44 See, for example: Navigating the end of jobs; Cantrell, “Beyond the job,” SHRM Executive Network; Sue Cantrell, Michael Griffiths, Robin Jones, and Julie Hiipakka, The skills-based organization: A new operating model for work and the workforce, Deloitte Insights, September 8, 2022.

45 UKG, “Mental health at work: Managers and money,” accessed December 2023.

46 Lauren Weber and Theo Francis, “Want to Get Ahead? Pick the Right Company,” Wall Street Journal, October 14, 2022.

47 David Green, “Taking a skills-based approach to workforce planning (interview with Ralf Buechsenschuss, Zurich Insurance Company),” myHRfuture, September 28, 2021.

48 Amber Burton, “Chobani hired hundreds of refugees at its plants. Average tenure now exceeds industry average,” Fortune, July 7, 2023.

49 Leena Nair, Nick Dalton, Patrick Hull, and William Kerr, “Use purpose to transform your workplace,” Harvard Business Review, March–April 2022.

50 Hitachi, “Hitachi's approach to sustainable development goals,” accessed December 2023.

51 Hitachi, Hitachi sustainability report 2023, accessed December 2023, pp. 71–93.

52 Ivy K. Lau-Schindewolf, “Research report: PayPal employee financial diaries,” PayPal, July 18, 2023.

53 PayPal, PayPal employee financial diaries, accessed December 2023.

54 Zeynep Ton and Sarah Kalloch, “PayPal and the financial wellness initiative,” MIT Sloan School of Management, November 8, 2022.

55 PayPal, PayPal employee financial diaries.

56 Ton and Kalloch, “PayPal and the financial wellness initiative.”

57 K. Lau-Schindewolf, “Research report.”

58 Online interview with Tyler Spaulding, Director of corporate affairs, and Ivy Lau, Public affairs and strategic research lead manager, PayPal, 2023

59 Peter Cappelli, “How a common accounting rule leads to more layoffs and less job training,” Wall Street Journal, July 28, 2023.

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