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IR事業(カジノ事業)におけるエンターテイメント施設

統合型リゾート(IR、Integrated Resort)

本稿ではIR(統合型リゾート:Integrated Resort)施設におけるノンゲーミング施設のうち劇場やアリーナとも呼ばれるエンターテイメント施設の概要と今後IR事業への参入を検討している企業が留意すべきエンターテイメント施設の検討課題に関して解説します。

日本型IR(統合型リゾート)においてエンターテインメント施設には、日本の魅力を発信し観光客を呼び込むことが期待されている

IR施設はゲーミング施設(カジノ施設、以下「カジノ施設」という )以外に宿泊施設、MICE施設、商業施設、エンターテイメント施設等から構成されます。

IRの先進事例であるラスベガスでは、IR施設全体の収益のうち概ね約7割近くがゲーミング(カジノ、以下「カジノ」という) からの売上です。

一方で、ラスベガスへの訪問者数でみると、カジノに訪問する顧客は少数派で、休暇・娯楽等のレジャーを目的に訪問する顧客が約半数となっています。

エンターテイメント施設は、天候や季節変動の影響を受けない観光資源として休暇・娯楽等のレジャーを目的とした顧客の集客が期待でき、ギャンブル以外の目的の顧客誘致に不可欠な施設と考えられます。

政府主導の有識者によるIR推進会議においても日本型IRの中で多様なエンターテイメントの提供が期待されています。

IRにおけるエンターテイメント施設は、集客施設であると同時に歌舞伎など日本ならではの伝統・文化・芸術のコンテンツをショービジネスとして展開し、日本の魅力を広く世界に発信し、日本各地へ旅行者を送り新たな観光の原動力として機能することも期待されています。

 

IR施設ではエンターテイメント施設を活用して集客力の高い多様なショーやイベントが開催されている

ラスベガスのIR施設の中にはジャグリング、大道芸の要素を取り入れたアクロバティックショー、ダンスパフォーマンス、マジック、ノンバーバル・ショー等の各種公演が通年で行われている例があります。

演出に特殊な舞台装置が必要な場合は専用劇場を設置している場合も少なくありません。

また専用劇場や常設型のショー以外にも不定期に有名アーティストのライブ・コンサートや、バスケットボール、アイスホッケー、ボクシング、総合格闘技等のスポーツイベントが開催されています。

ラスベガスにおける主な劇場・アリーナにおけるショー・イベントの内容の例は以下のとおりです。

 

<主要な劇場・アリーナの概要とショー・イベントの例>

施設名

収容能力
(席数)

ショー・イベントの内容

ベラッジオ/O Theater

1,800

O(シルク・ドゥ・ソレイユ)

MGM グランド/KA Theater

1,950

KA(シルク・ドゥ・ソレイユ)

マンダレイ・ベイ/Michael Jackson ONE Theatre

1,805

マイケルジャクソン・ワン(シルク・ドゥ・ソレイユ)

シーザーズパレス/The Colosseum

4,300

セリーヌ・ディオン (コンサート)

T-Mobile Arena

12,000-20,000
(目的により可変)

ライブ・コンサート、バスケットボール、アイスホッケー、ボクシング/総合格闘技等

出所:各社ホームページ、各種開示情報等を参考にデロイト トーマツにて作成

 

エンターテイメント施設では多様な収益機会が期待できる

エンターテイメント施設は、稼働の主軸となるショー、スポーツイベントのチケット売上以外にも放映権収入、第三者主催イベントへの施設貸出による施設使用料、広告・ネーミングライツ等による協賛収入、物販・飲食の付帯収入など多様な収益機会があります。

収益性の高い施設では、安定した来場者が見込めるショーやプロスポーツチームを誘致することで安定した稼働率の確保をしたり、変動収入以外にネーミングライツのような比較的長期の契約をし、固定収入を獲得したりしています。

エンターテイメント施設の収益機会の例示は以下のとおりです。


<エンターテイメント施設の収益機会の例示>

種類

主な収益機会(例示)

チケット売上

・ショー、コンサート等のイベントの前売券、当日券
・VIP顧客向けスイート利用料等の付加価値の高い座席の販売 等

放映権収入

・テレビ放映の権利収入
・インターネットの動画放映権収入 等

施設使用料

・プロスポーツ等の公式戦使用料、ポストシーズン使用料
・物販、飲食店等テナント賃貸料 等

協賛収入

・スポンサー広告収入(看板広告、フェンス広告、ポスター広告等)
・施設のネーミングライツ(命名権)収入 等

付帯収入

・駐車場、会議室の貸付
・第三者主催イベント時のスタッフ費用 等

出所:スポーツ庁公表資料等を参考にデロイト トーマツにて作成

 

IR事業ではエンターテイメント施設の事業性検討が重要となる

今後、IR事業への参入を検討している企業においては、カジノ施設に関する来場者数、売上等の試算をするだけでなく、劇場・アリーナ等のエンターテイメント施設の来場者数、収益機会、事業スキーム等についても検討しておく必要があります。

エンターテイメント施設は集客力の高い施設であるとともに、滞在中にカジノ、レストラン、ショッピングに立ち寄り2次的な消費を生み出すシャワー効果が期待できる施設でもあり、滞在型観光による効果の最大化を目指す上で検討が必要な重要施設です。

エンターテイメント施設はそのスペック、収益性などについて慎重な検討を行い、バランスのとれた適正規模の施設を計画し建設する必要があります。

デロイト トーマツではエンターテイメント施設の事例調査、収益性検討、事業スキーム等の検討についてもプロジェクトを支援してきました。エンターテイメント施設に関する検討課題の一例は以下のとおりです。

  1. 施設の収益性(消費単価、来場者数、稼働率等)
  2. 収益機会と自社の立ち位置
  3. 事業スキーム(施設を自社で直接運営するか、外部に業務委託するか)
  4. ビジネスパートナーの選定(イベントの企画・実行など協業候補先の選定)

 

本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。
IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえたIRビジネスに関連する幅広い調査・分析を行っています。

IR(統合型リゾート)ビジネスグループ

info-irbg@tohmatsu.co.jp

IR(統合型リゾート)ビジネスグループとは

IR(Integrated Resort:統合型リゾート)実施法案の審議開始から免許交付までの間に、IRビジネスグループでは参入を目指す日本企業に対し、さまざまなアドバイザリーサービスを提供します。

また、カジノ施設の設置と運営にはさまざまな課題やリスクが指摘されています。そのため、IRビジネスグループでは、日本企業に対する事業支援サービスだけでなく、企業と自治体に対し、IR施設を設置・運営する上で懸念される課題と社会問題の解決に関するアドバイザリーサービスも提供します。

 

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