Deloitte Insights

2018 グローバル CIO サーベイ

レガシーを打ち出す ~デジタル時代の先を見据えるには~

グローバルのCIO達が何を志向し、どんな行動をしているのかを読み取り、自身(自社)がどう変化すべきかデジタル時代の先を見据えて見極めるためのポイントを解説する。

2018 グローバル CIO サーベイ 日本語版

日本版発行に寄せて

グローバルCIO サーベイの日本版を世に出すのは4回目となるが、これまでは毎年リリースしているTech Trendsに比べて大きな変化を捉えることが少ない点に特徴があった。しかし、今回のCIO サーベイでは、今後のデジタル化を見据えてCIO が変化しなければならないという論調が強く感じられる。グローバルの目線では当然の流れであることに数年来のテクノロジートレンドを見ていると頷けるが、日本という目線になるとグローバルとの距離が広がってしまったのではないかという印象を受ける。

これまでのグローバルCIO サーベイでは、CIO を3つのレガシータイプ-「事業の共同創作者」、「変化の立役者」、「頼りになるオペレータ」に分類してきた。企業のCIO は自身がどのレガシータイプに当てはまるかを考え、その役割の中で企業戦略やテクノロジーの活用の度合いに合わせてどのタイプに変化すべきかを見極めることが主題になっていた。そういう意味では多くの日本企業のCIO は、「頼りになるオペレータ」の比率が高く、そこから「変化の立役者」にどう変貌を遂げていくかを検討しなければならない命題を突きつけられてきたといえよう。しかし、今回のグローバルCIO サーベイでは、とどまるところを知らないデジタル化の波の中で、先を見据えた変化を遂げるためにどうするかが主題となっている。その中で、「頼りになるオペレータ」のままでは今後のデジタル時代を生き残れないというメッセージが発信されている。

この点について、多くの日本企業のCIO は変化をしようとこれまでもがいてきたはずである。様々なデジタルツールと向き合い、RPA、AI、IoT といったトレンドを追いかけるために多様な試行錯誤を繰り返してきたであろう。その中で、「頼りになるオペレータ」から「変化の立役者」に変貌を遂げられたCIO がどれほどいただろうか。おそらく、道半ばという状況が大半であろう。しかし、現実はそのスピードでの変化を許してはくれず、もっと将来を予見するべき状況にあるということである。これは非常に大きなチャレンジではあるが、悪いことばかりではない。グローバル企業の先行経験には多くの失敗も含まれており、その失敗から学んで確立したベストプラクティスが数多くある。改革道半ばにあるCIO は、その経験を上手く活用して現在の改革スピードを飛躍的に高めることが可能になるのである。

多くの日本企業のCIO にとって、時代の変化に追随していくことは困難な課題である。しかし、グローバル競争に打ち勝つためにデジタルおよびテクノロジーの力が必須であり、それらを経営に使いこなせた企業が生き残っていくサバイバルゲームの中にいる以上、この変化のスピードにCIO は慣れていかなければならない。グローバルのCIO 達が何を志向し、どんな行動をしているのかを本サーベイから読み取り、自身(自社が)どう変化すべきなのか、デジタル時代の先を見据えて見極めてもらいたい。本サーベイおよびTech Trends がその一助になることを期待している。

 

安井 望
デロイト トーマツ グループ 執行役員 パートナー
Digital テクノロジー担当 Chief Technology Officer(CTO)

2018 グローバル CIOサーベイ 2018〔PDF, 5.68MB〕
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