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デジタル変革時代に求められるビジネスプラットフォーム
レジリエンス経営を支えるビジネスプラットフォームとは <第1回>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、企業は今まで以上にレジリエントな経営が求められる。ビジネスにおいて複数のシナリオを想定・シミュレーションし、どのシナリオにも対応できる柔軟な構えを可能にするデジタルビジネスプラットフォームが企業に必要とされている。
顕在化したデジタル変革の必要性
企業は、COVID-19を経験し、事業のレジリエンスについて再考を余儀なくされた。事業を支えるITについても、同様にそのケイパビリティや成熟度の優劣がビジネスの多くの場面で影響として顕在化し、各社ITのビジネスに対する柔軟性と俊敏性が次々と証明される結果となった。 例えばデジタル投資に力を入れてきたある米国の小売企業では、COVID-19の感染拡大で消費行動が大きく変わる中、いち早くそのニーズを捉え、2時間以内で宅配するサービスなどを新たに投入することでその需要を取り込むことに成功した。厳しい事業環境下にも関わらず20年2~4月期における純利益4%増という結果は、こうした環境変化に対して迅速かつ柔軟な対応を行ったことによるものであり、そうした取組を可能にする備えがなされていたと言うことができるだろう。
今回の経験から多くの企業では、ビジネスプロセスの可視化を始めとしたデジタル変革の必要性を再認識し、取り組みを加速させる動きが見られている。
では、企業の成否を左右したのは何だったのだろうか?これまでの経験に基づくビジネスプラットフォームは、ITにおいて定型化、硬直化を起こしやすく、事業変化への迅速かつ柔軟な対応は、ビジネスを構成する機能要素(人、組織、プロセス、情報)を縦横無尽に組み合わせた「デジタルビジネスプラットフォーム」によって実現することが分かってきた。
本稿では、デジタルビジネスプラットフォームとそのコア(核)としてもつべきケイパビリティとその活用を考えてみたい。
従来型ビジネスプラットフォームの課題
これまでの経験に基づく従来型のビジネスプラットフォームは、前後工程と直線的につながるチェーン型をベースとしている。開発や製造といった各ビジネス機能の役割が明確でありそれぞれにおける効率化や最適化に取り組みやすい一方、インプットされる情報やタイミングは前工程に依存しており全体最適観点の柔軟な取組やビジネスシナリオの策定は困難といえる。先ほど米国の小売業におけるネット販売転換による危機対応の例を紹介したが、一方で実店舗の売上に依存したビジネスから転換が行えなかったいくつかの企業は相次ぎ破綻に追い込まれてしまった。サービスの提供形態を実店舗からECに転換しようとした場合、単純に前工程の物流プロセスを見直すだけではない。実店舗、ECでどの程度販売するのかプランニングし、その需要を満たす調達・製造を行えるようプロセス全体で最適化、アップデートを図る必要がある。そのためには前工程以外のプロセスともつながり、全体で情報の連携・活用できることが重要となる。
チェーン型のビジネスプラットフォームで定期的に実行される予測と計画は、前工程に閉じた限定的な情報であり、またステップを経るごとに鮮度が失われ陳腐化が進むという課題を抱えている。目まぐるしく状況が変化する現在のビジネス環境においてその傾向は強く、このような情報の鮮度の差異が引き起こす意思決定のリスクを排除していく必要がある。
デジタルビジネスプラットフォーム
デジタル化により各ビジネス機能を相互接続するネットワーク型のビジネスプラットフォームは、共通化されたリアルタイムの情報を基にした意思決定を可能にする。
COVID-19のような危機に際しても、隅々まで張り巡らせた情報網からビジネスにおけるインパクトを評価し、即座に対応方針を決定するといった活動がそれにあたる。米国の小売企業におけるECへの戦略転換は、まさにこのネットワーク型の思考に基づいた対応であった。
国内で空港と自宅/ホテル間の移動サービスを提供している企業では、COVID-19による顧客(出張者、外国人旅行者)の激減という危機に見舞われた。しかしながら、この環境下でも出社が必要な企業が社員の移動に悩みを抱えていることをいち早く捉え、自宅-オフィス間の移動サービスを迅速に展開した。当サービスは、従来の個人契約モデルで整備されたビジネスプラットフォームを活用し、法人契約モデルへビジネスモデルを早期に転換した好例だといえる。
このネットワーク型プラットフォームの軸として各ビジネス機能要素をつなぎ合わせるデジタルコアは、従来型のビジネスプラットフォームで見られる遅延、リスク、および無駄を最小化することができ、柔軟性や即時性に対する対応力の課題を解決することができる。
デジタルビジネスプラットフォームを支えるデジタルコア
デジタルコアは各ビジネス機能より最新の情報を保有し、それを全プロセスで共通的に活用することでビジネスの対応力を高めている。デジタルコアは、データの収集・統合、それに基づくインサイト創出など5つの機能を備えており、デジタル/フィジカル双方をリアルタイムに連携することで各ビジネス機能における全体最適な取組を可能にしている。
これらは様々なテクノロジーにより実現されており、例えばデータ収集・統合においては、IoTの活用が不可欠であり、シナリオシミュレーションやインサイト創出においては、デジタルツインやAIの活用がベースになっている。テクノロジーの進展によりデジタルコアは、より再現性の高いシナリオシミュレーションを可能にし、精度の高いフィードバックシステムとして高度化し続けるモデルであることも大きな特徴といえる。
不確実性が高く予測を立てることが難しい今後の事業環境においては、複数のシナリオを精緻にシミュレーションでき、どのシナリオに転んでも対応できるなど柔軟な構えを可能にするデジタルコアを備えたビジネスプラットフォームが一層企業経営に求められる。
次回は、デジタルコアを活用したビジネスシーンを具体的に紹介するとともに実現テクノロジーに目を向けて、どのようにしてデジタルコアが成り立っているのかを紹介したい。
レジリエンス経営を支えるビジネスプラットフォームとは
第1回 デジタル変革時代に求められるビジネスプラットフォーム
第2回 事業変化に貢献するキーテクノロジー「デジタルツイン」
第3回 デジタルツインの実現アプローチ
その他の記事
Tech Trends 2024 日本版
事業変化に貢献するキーテクノロジー「デジタルツイン」
レジリエンス経営を支えるビジネスプラットフォームとは <第2回>