ステーブルコインが切り開くデジタルウォレットの進化 ブックマークが追加されました
2025年に開催される大阪・関西万博では、「EXPO2025デジタルウォレット」という公式アプリが提供され、デジタルウォレットの未来を具体的に体感できる場となる。このウォレットは、電子マネー「ミャクペ!」、万博関連プログラムへの参加で獲得できるポイント「ミャクポ!」、さらには万博独自のNFT「ミャクーン!」など、多彩な機能を備えている。これにより、万博会場内外でのキャッシュレス決済やデジタル体験が可能となる。
デジタルウォレットは、現実の財布の機能をデジタル上で再現する存在へと進化している。リアルなお財布には現金やクレジットカード、運転免許証や健康保険証、各種会員カードなどが収納されている。デジタルウォレットはこれら全ての機能を統合し、デジタル上で一元管理することを目指している。
多くの人が知っているのは、現実世界でのキャッシュレス決済を支える決済ウォレット(例:PayPay、楽天、Apple Pay)だろう。これは企業がサーバーで管理するタイプでWeb2サービスといえる。一方で現実のお財布と同じようにするためには、暗号資産やNFT、デジタル証明書の管理も必要となってくる。こちらは分散型の経済圏での取引を可能とするためWeb3サービスとなる。二つの異なる技術を融合させることで、デジタルウォレットはリアルなお財布と同じような機能を備えることができる。
これまでサーバー管理型のWeb2とブロックチェーンのWeb3の融合は難しいとされてきた。実際、「EXPO2025デジタルウォレット」も融合ではなく、Web2とWeb3双方の管理手法を用いたデュアル方式を採用している。
Web2とWeb3を横断できないか? そこで注目したいのが法定通貨担保型ステーブルコインだ。このステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する。そのため暗号資産のボラティリティ問題を克服し、安定した価値保存手段となる。まるで通常の貨幣のように安定した形で利用できるステーブルコインは、Web2の利便性とWeb3の分散型特性を結びつける橋渡し役となる可能性がある。
法定通貨担保型ステーブルコインは個人にとっても企業にとっても、そして社会全体にとっても魅力がある。例えば経済インフラが整っていないグローバルサウスエリアでは、ステーブルコインが安定した取引手段として重宝され、金融包摂の促進に寄与している。個人レベルでは、国際送金の手数料削減や迅速な取引が可能となり、企業にとっては新たな収益モデルの創出やグローバルな取引の効率化が期待される。サプライチェーンなどにおいても、有効に活用されるだろう。社会全体としても、ステーブルコインの普及により経済活動の透明性と効率性が向上し、新たなデジタル経済の基盤が構築されるだろう。
しかし、ステーブルコインがWeb2とWeb3を横断できるとしても、融合したサービスを生み出すことは容易ではない。Web2は自社での囲い込みを想定したビジネスモデルであり、Web3はその真逆の分散型である。Web2側のプレイヤーと、Web3側のプレイヤーとでは考え方からして根本から違うのだ。双方の良さを生かした新しいデジタルウォレットを生み出すためには、この「垣根」をどうするかが課題となり、デロイトは両者をつなぐ調整役のような立場をとることが多い。私たちは幅広い産業知識と技術力を活かし、企業のデジタルウォレット導入支援や規制対応、セキュリティ強化のためのコンサルティングを提供している。特に規制対応やテクノロジーにおいては、デロイトの専門知識が重要な役割を果たしており、Web2とWeb3のエコシステム統合を促進している。
まずは2つのプレイヤーがつながりWeb2.5的な世界観をユーザーに提示することで普及を促進できないか。すでに利用者数も多いWeb2側からのWeb3の取り込み、そしてユーザーがメリットを感じやすい(例えばステーブルコインのような)ものが提供されることで、デジタルウォレットの普及は加速すると考えている。
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フィンテック / ブロックチェーン領域リーダー。 金融新事業開発、Fintech活用、デジタル戦略、業務・組織改革、ガバナンスなど様々なプロジェクトに従事。金融機関だけでなく、消費者接点の強い異業種サービスが金融機能を組込み提供する組込型金融(Embedded Finance)や、ブロックチェーン・Web3 / デジタルアセットなど成長領域に対するグローバル動向分析や戦略立案を担当。 また、環境や人権問題などサステナビリティに対する社会的要請の高まりに対応したデータ・プラットフォームの社会実…