調査レポート

公営企業主要施策の取組状況調査結果について

公営企業の最新動向解説

令和2年11月に、総務省から経営戦略の策定、公営企業会計の適用、抜本的な改革の検討の三つの施策に関する取組状況調査の結果が公表されました。いずれの施策も一定の進捗が見られる一方で、総務省の要請期間内に取組が完了しない事業も見られます。

1. 総務省による取組状況調査結果の公表

 令和2年11月27日に、総務省から令和元年度における公営企業における更なる経営改革の取組状況が公表されました。総務省では公営企業の主要施策として「経営戦略の策定・PDCA」と「抜本的な改革の検討」を改革の両輪とし、「公営企業の見える化」(公営企業会計適用、経営比較分析表)を改革の両輪を支えるものと位置付けています。このうち、経営戦略の策定状況、抜本的な改革の取組状況及び公営企業会計の適用状況について毎年調査を行い、その結果が公表されています。

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和2年1月27日開催)資料1 公営企業課関連資料 12ページ

 公営企業シリーズにおいて、公営企業会計の適用や経営戦略については解説してきたところですが、本稿で実際の取組状況について考察してきます。

公営企業における更なる経営改革の取組状況」調査結果の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zaisei06_02000246.html (外部サイト)

2. 経営戦略の策定状況について

 令和2年3月31日時点において、経営戦略を策定済みの事業は4,268事業(全事業の63.3%)であり、令和2年度中に策定予定の事業は1,948事業(同28.9%)となっています。経営戦略は、総務省により令和2年度までに策定が要請されていますが、7.8%の事業が要請期間内に策定できない見込みとなっています。事業別にみると、令和2年度中に策定できない事業数は、多い順に宅地造成124事業、下水道64事業、観光施設48事業となっており、各事業の事業数に占める割合を高い順にみると、宅地造成38.0%、と畜場33.3%、市場22.4%となっています。事業数、割合ともに宅地造成事業が最も多く、団体によっては全ての宅地の引渡完了目前であり将来計画の策定意義が乏しい場合があるかもしれませんが、計画的な販売を含めた経営戦略の策定が望まれています。

出典:総務省による公営企業の経営戦略等の策定状況等の調査結果に基づいて、執筆者作成

事業別の策定状況
https://www.soumu.go.jp/main_content/000719080.pdf (外部サイト)

 なお、昨年度の調査で令和元年度中に策定予定としていた事業は全体で796事業であるのに対し、令和2年3月31日時点で新たに策定済みになった事業は435事業であることから、361事業は令和元年度中に策定を予定していたものの、結果的に間に合わなかったと言えます。また、策定済みとならなかった全361事業は、前年度調査で未着手であった154事業(令和元年度に策定予定と回答した事業)を上回っていることから、前年度調査時点で策定に着手していても策定済とならなかった事業もあると言えますので、経営戦略策定には十分な時間の確保が必要になっていると考えられます。
 策定状況調査結果の公表は11月であり、調査時点で未着手だった事業の中には、現在では取組中の団体もあると考えられますが、今回の調査結果で令和2年度中に策定とした事業のうち調査時点で策定に未着手の事業は540事業あり、令和元年度の状況を踏まえれば一定数の事業において策定完了しないことが予想されます。当年度は要請の最終年度であり、取組みに遅れが生じている事業は早急に対応することが望まれます。

3. 公営企業会計の適用状況について

 公営企業会計の適用は、人口3万人以上(平成22年国勢調査ベース。以下、同じ。)の団体の簡易水道、下水道(公共下水道及び流域下水道に限る)については、令和2年度の予算・決算までに取り組むことが総務省から要請されており、今回の取組状況調査では、最終結果が公表されたことになります。その結果、人口3万人以上の団体で要請期間に間に合わなかった団体は簡易水道事業で11団体 、下水道事業で1団体となっています 。
令和2年4月1日時点の適用状況
https://www.soumu.go.jp/main_content/000715800.pdf (外部サイト)

 また、平成31年1月には、人口3万人未満の団体における簡易水道及び下水道、並びに人口規模を問わず集落排水事業等のその他下水道事業についても、令和6年度の予算・決算までに公営企業会計の適用が要請されたところです。

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出典:総務省「全国都道府県・指定都市公営企業管理者会議」(令和2年1月27日開催)資料1 公営企業課関連資料 23ページ

 要請後1年経過した時点での取組状況は、簡易水道事業では、「適用済」が209団体(調査時点団体数の35.5%)から248団体(同42.3%)へと増加し、下水道事業においても120団体(同14.8%)から193団体(同23.7%)と増加しています。取組中の団体も含めると、簡易水道では272団体(同46.3%)から405団体(同69.1%)へ、下水道事業では280団体(同34.5%)から544団体(同66.7%)へ増加し、いずれも50%を超えています。
 人口3万人未満の団体においても一定の進捗が見られるなか、さらに人口を細分化した調査結果によると、より小規模な団体ほど取組に着手できていない実情がうかがえます。「適用済」又は「適用に取組中」と回答した団体の割合は、人口1万人以上3万人未満の団体では簡易水道83.9%、下水道77.5%であるのに対し、1千人以上1万人未満の団体では簡易水道61.2%、下水道55.4%であり、1千人未満の団体では、簡易水道54.5%、下水道47.1%と全体の取組割合を下回っています。

出典:総務省による公営企業会計適用の取組状況の調査結果に基づいて、執筆者作成

 なお、総務省による取組状況調査では、重点事業として位置付けられている簡易水道、下水道のみ結果が公表されていますが、平成31年1月に公表されたロードマップでは、その他の事業についても、公営企業会計に「できる限り移行」することとされていることから、公表対象とされなかった事業においても取組を進めることが望まれます。

4. 抜本的な改革の取組状況について

 公営企業における抜本的な改革の検討は、平成21~25年度に集中的に取り組むことが要請されていたことに加え、平成26年8月の「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(公営企業課長等通知)により引き続き推進することが要請されています。平成26年の新たな要請による取組状況の公表は平成28年3月31日時点から毎年度実施されています。
 平成30年度(平成31年3月31日時点)の調査では、大阪市交通事業の大阪メトロへの事業引継など、交通事業4件の「民営化・民間譲渡」がありましたが、令和元年度(令和2年3月31日時点)は取組件数が減少しています。
一方、広域化等については、平成30年度に、令和4年度までに都道府県による水道広域化推進プラン策定が要請されたこともあり、水道事業における取組が平成30年度の4件から令和元年度の20件に大幅に増加しています。主な取組内容は、共同購入など管理の一元化によるものであり、できることから広域化を進める取組が広がっていると言えます。

出典:総務省による公営企業の抜本的な改革の取組状況の調査結果に基づいて、執筆者作成

 

(総務省による施策に関する情報は変更される場合があります。最新情報は総務省のウェブサイトでご確認ください。)

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