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BEPS包摂的枠組み共同議長による第1の柱の進捗アップデート公表及び米国大統領覚書について、第1の柱利益B観点から考察

Japan Tax Newsletter:2025年2月7日号

Executive Summary

  • 2025年1月13日、OECD/G20のBEPS包摂的枠組みはウェブサイトにおいて、第1の柱に係る最終的なパッケージ策定における進捗アップデートを、包摂的枠組みの共同議長による声明として公表し、多国籍企業の超過利益を市場国に配分する利益Aと、基礎的なマーケティング・販売活動への報酬を定める利益Bの枠組みの現状を示した。利益Bの枠組みへの合意が得られておらず、全体として進捗が停滞している。
  • 2025年1月20日、トランプ大統領が大統領覚書を公表し、バイデン前政権が支持したOECDの国際課税ルールは、米国内において無効であることが示された。一方、昨年12月に公表されたセーフハーバールールとしての利益B制度については米国内でも支持があり、議会の承認を得て導入される可能性がある。
  • 利益Bは現状、各国が任意で導入すること(Phase 1)が前提となっているが、今後の制度の義務化(Phase 2)への移行は不透明である。第1の柱が、利益Aと利益Bのパッケージ合意を前提とすることが議論の膠着を生んでいると考えられ、進展には米国と他国の合意形成が不可欠である。もし利益Aとの関連性が解消されれば、より多くの国が利益Bを導入する可能性がある。
  • 利益Bは多くの企業に影響を与えるため、デジタルサービス税(DST)等の各国の一方的措置とともにその動向を注視する必要がある。各国は自国税収への影響を考慮して利益B制度導入を判断すると予想される。導入国では利益Bの価格決定マトリクスが適用され、非導入国でも同マトリクスの売上高営業利益率(ROS)が暗黙の下限値(フロア)となる可能性がある。
  • 自社の状況に合わせ、利益Bを踏まえたローカルファイル整備、価格調整金、二国間事前確認(BAPA)活用等の対応や、その前段階としてハイレベルに海外販売会社の実績ROSと簡素化・合理化アプローチのROSを比較し、特に実績ROSが下回っている拠点の把握を開始することが推奨される。

 

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

 

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