調査レポート

2021年のデジタル消費行動の変化

デロイト『Digital Consumer Trends 2021』日本版

1. 緊急事態宣言下での調査の実施

2020年初からの新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響で消費者の生活は一変した。2020年の本調査でもCOVID-19の流行前よりも増えたと思われる行動と、自粛解除後の継続意向を調査した1。2021年は消費者にそこからどのような変化が起きているのだろうか。

2021年の本調査の期間(日本では9月1日~同15日)はCOVID-19のデルタ株による第5波の感染拡大の影響で21都道府県に緊急事態宣言が発出され、過去最大の重症者数を記録していた。なお、2020年の本調査は緊急事態宣言解除後の7月28日~8月17日に実施している2

今後ワクチン接種が進み、治療薬の開発が進めば消費者の行動は再度変化すると考えられる。そのため今回の調査結果は「解除後」の結果ではなく、COVID-19の影響を受けた行動変化の「瞬間最大風速」とみることもできる。本調査で見出した消費者行動の変化が一過性のものとなるか、定着するかは、来年以降の調査を待つ必要があるが、定点観測的視点で2021年と2020年の調査結果を比較すると、変化が強まったものと足踏みしたものの傾向が見えてくる(「図1: COVID-19流行以前と比べてすることが増えたアクティビティ」)。他の調査項目も交えた分析は下記のリンク先から参照されたい。

2. メディア利用の変化

2021年は特に動画視聴の利用が増えたという回答が伸びた。中でも最も回答が多かったのは「YouTube、TikTokまたは同様のサービスで動画を観る」(2020年21%→2021年27%)で全回答者の1/4以上が実感しており、「映画・テレビドラマをストリーミングで視聴する」という回答も増えた(同12%→17%)。一方で「テレビ番組を録画ではなくリアルタイムで視聴する」ことが増えたという回答は減っているが(同21%→14%)、これを補うように「見逃し配信サービスを利用してテレビ番組を視聴する」ことが増えたという回答が伸びている(同2%→8%)。変化が大きかった動画、ストリーミング、テレビ(リアルタイム、キャッチアップ)については、「日本の動画配信市場の現状と将来展望」で広告動画配信の可能性も交えて考察している。

また「ニュースを読む」という回答も増えている(同16%→20%)が、消費者がテレビやSNSなど、ニュースをどこで得ているのか、また何を情報源として信頼しているかは「デジタル時代のニュースソース」で考察している。

3. プライバシーへの懸念

COVID-19を契機に消費者がオンラインで企業とやり取りをする機会も増えている。上記のような動画配信の利用もその一つである。「ソーシャルネットワークの使用」(2020年8%→2021年12%)も増えている。またオンラインショッピングの利用が増えたという回答は、「食料品・日用品」(同9%→14%)、「それ以外の商品」(同11%→15%)の双方で堅調な伸びを見せた。一方でCOVID-19のワクチン接種証明も個人情報ではあるものの、旅行やイベント・施設への入場・出社など社会活動への参加に必要とされる場合は、日本の回答者の約半数が「アプリでの提示」に同意すると答えている。「プライバシー:消費行動への影響は未だ限定的」(グローバル版:Deloitte Insights)では、消費者のデータプライバシーに関しての懸念と、消費行動への影響を調査対象国間で比較している。

4. デジタルヘルスへの関心の芽生え

2020年も「国の制度やデジタル環境が制約となった活動」として考察したオンライン医療(「医療従事者のオンラインビデオ/電話診療を受ける」)は、2021年は2%となったが、10%を超えている他調査対象国に比べると低く(UKでは電話診療は32%とほぼ1/3が増えたと回答している)、差が大きくなっている。一方2021年に新しく追加された「デバイス(例:スマートフォン、スマートウォッチ、ヘルスケアバンド)を使って健康状態をモニターする」は4%の回答となり、上記デバイス所有者の45%が既に何等かの健康関連の指標をモニターしていることが確認できた。具体的な指標とデバイスの利用状況は「スマートフォンとウェアラブルから始まるデジタルヘルス」で整理している。

5. インフラとなる通信環境・5Gへの感度と変化

最後にCOVID-19とは別のデジタル消費行動の変数として、2020年に日本でも商用利用が開始された5Gの利用状況と期待値、また利用者の感触を「広がる5Gと今後の展望」で分析している。5Gの非利用者からはより良いネットワーク接続への期待が、緩やかながらも高まっている(2020年5G非利用者の50%→2021年同55%)。一方で利用者からは「4Gとの違いがわからない」との声があることも見えてくる(2021年5G利用者の47%)。5Gについては未だインフラの整備途上段階にあるが、現状を踏まえた投資方針のあり方について分析している。

本調査が読者の皆様にとって有益な示唆をもたらすものとなれば幸甚である。

図1: COVID-19の流行以前と比べてすることが増えたアクティビティ(日本)

Q. 新型コロナウイルスが流行する前よりもすることが増えたことは次のどれですか。当てはまるものをすべて選択してください

図1: COVID-19の流行以前と比べてすることが増えたアクティビティ
クリックすると拡大版をご覧になれます

N=日本 2021(1,001)、2020(997)
注:18-75歳の回答者、 この質問は2021年、2020年とも全回答者の半数を対象に実施
出所:Digital Consumer Trends 2021

*1:例:Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Hulu
*2:例:NHK、日本テレビ
*3:例:Instagram、Snapchat、Facebookなど。Facebook Messengerを除く
*4:例:インターネットを利用した銀行などの金融取引のサービス
*5:例:NHKプラス、TVer
*6:例:LINE、Facebook、ピアッザ、マチマチ
*7:例:スマートフォン、スマートウォッチ、ヘルスケアバンド / 「デバイスを使って健康状態をモニターする」は2021年のみの調査
*8:例:医師、看護師、コンサルタント
*9:例:学校、大学
*10:例:ヨガ、ダンス

脚注

1 COVID-19で加速する各国のデジタル消費と日本の課題, Digital Consumer Trends 2020, デロイト トーマツ: 
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology-media-and-telecommunications/articles/digital-consumer-trends-2020-lockdown-behaviour.html

2 日本国内の感染者数, 新型コロナウイルス データで見る感染状況一覧, NHK特設サイト: 
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-widget/

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