世界のCCUSプロジェクト
低炭素インダストリアルハブ(米国)
鉄鋼や石油化学など排出量の削減が困難なセクター(harder to abate sector)には、すぐに適用可能な脱炭素化のソリューションが少ない中、低炭素インダストリアルハブが着目されている。低炭素インダストリアルハブでは、CO2排出事業者が集約されており、セクターを跨いで各事業者が連携し、CO2や水素、再生可能エネルギー電力といった資源を互いに融通する。インフラを広域に整備して投資を分散するのではなく、同一のサイトに投資を集中させ、スケールメリットを得ることで、各企業が単独で投資をするよりもコスト削減が可能になるものだ。
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下田 健司 Kenji Shimoda
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2種類の低炭素インダストリアルハブ
世界では数多くのハブが開発されており、これらは供給主導型と需要主導型のどちらかに大別される。
供給主導型ハブとは、それぞれの地域が持つCO2貯留層などを基盤として活用し、供給力を提供することで需要を喚起するものである。供給主導型ハブの代表例がヒューストンであり、米国における水素製造量の約90%を占め、CO2貯留余力、広範なパイプラインネットワーク、鉄道や船舶による輸出ターミナルといった既存資産を活用して低炭素産業を誘致している。
需要主導型ハブとは、水素と二酸化炭素の潜在需要を集約することで、低炭素ソリューションの巨大な市場を形成し、産業間連携を促すものである。需要主導型ハブの代表例としてはアパラチアが挙げられる。アパラチアでは、鉄鋼や発電といった排出事業者が集中しているため、低炭素化への需要が高まっている。これらのセクターの排出量削減を主な目的とし、需要の集約に加え、シェールガス生産による優位性を活用したハブの形成を推進している。
低炭素インダストリアルハブがもたらす価値
米国でクリーン水素とCCUSを導入し2050年までにネットゼロを達成するためには、排出量削減が困難な産業が、今後全ての設備投資をこれらの技術開発や設備改修、新規設備の建設に振り向けることが必要と言われている。CCUSの事業化に向けて企業はCO2回収設備を追加すると同時に水素を増産し、CO2と水素を集約、圧縮して消費者や地下貯留層へ輸送するパイプラインネットワークを構築する必要がある。Figure 1は低炭素インダストリアルハブの中でこれらの要素をどのように連携し、インフラを調整、集約して投資効率を高めていくかを示している。
Figure 1供給主導型、需要主導型問わず、ハブを形成するためには、既存インフラをCCUSに対応するよう改修し、CO2と水素の輸送・貯留設備を構築するために莫大な投資が必要となる。しかし、ハブを形成した場合、個々の企業が単独でCCUSを導入した場合と比較すると、企業により投資を20%から95%削減することが可能となる。特に、ハブにおける総排出量全体に占める割合が小さい企業ほど、ハブ構築による劇的なコスト削減が実現できる。
成功するハブの条件-ハブ開発における戦略-
ハブプロジェクトの成功は、補助金額や参加企業数よりも、ハブの開発主体がハブ開発を取り巻く複雑性に対していかにうまく対処できるかにかかっている。
ハブの開発にはケイパビリティ、モチベーション、タイムラインが本質的にマッチすることのない複数の企業や政府、地域住民など多くのステークホルダーが関わることになる。そのためハブを社会実装するためには、多様な意見を集約し、さらに戦略的かつ論理的に意思決定ができる存在が必要となる。こうした調整を推進力をもって担うことのできるコンソーシアムを形成できるかが、ハブプロジェクトの成功の鍵となる。
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