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令和5年度地方財政対策のポイント

令和5年1月に実施された全国都道府県財政課長・市町村担当課長合同会議において令和5年度の地方財政対策のポイントが示されています。本記事では、歳出改革6項目と4つの留意事項を簡潔に解説します。

令和5年1月に実施された全国都道府県財政課長・市町村担当課長合同会議において令和5年度の地方財政対策のポイントが示されています。

主な内容は次の通りです。

 

令和5年度地方財政対策の全体像について

地方財政計画の規模としては92兆円(前年比+1.4兆円)であり、不交付団体への交付額を除いた一般財源総額については前年度を0.2兆円上回る62.2兆円が確保されています。一方で、地方税や交付税原資となる国税等がともに堅調に増加しており、単年度財源不足額は、▲0.6兆円減少しています。

内訳のポイントとして、地方交付税総額は18.4兆円(前年比+0.3兆円)、臨時財政対策債については前年比0.8兆円減額の1兆円となっている他、交付税特別会計借入金については償還計画を変更し、既存の計画を上回る償還を行うなど、地方財政の健全化に向けた内容となっています。

 

歳出改革6項目

①デジタル化の推進

「デジタル田園都市国家構想基本方針」等を踏まえ、「地域デジタル社会推進費」について事業期間を延長するとともに、マイナンバーカード利活用特別分として令和5年度、令和6年度については500億円増額し、2,500億円が確保されています。マイナンバーカードの交付率が低い場合であっても、交付税は前年度同額相当が確保されています。一方で、交付率の高い上位1/3の団体については、財政需要に応じて割増が行われます。

具体的に想定されている取組は次の通りです。

<地域が抱える課題のデジタル実装を通じた解決の取組(想定される例)>


<うち、マイナンバーカードを利活用した取組(想定される例)>

(出典:令和5年1月23日 全国都道府県財政課長・市町村担当課長合同会議 会議発言等をもとに執筆者作成)

 

②グリーン化

新たに脱炭素化推進事業費1,000億円を計上し、脱炭素化推進事業債(仮称)が創設されます。地方債市場におけるグリーンボンド等への需要の高まりを受け、グリーンボンドの共同発行の仕組みも導入される予定です。エネルギー価格の高騰もあるため、自治体のエネルギーについては、自分達で賄う方向へ梶をきっていくことが求められています。

 

③物価対策への対応

学校、福祉施設など自治体の施設の光熱費の高騰を踏まえ、一般行政経費については700億円増額されています。投資的事業の起債単価についても資材価格等の高騰による建設事業費の上昇を踏まえ、津波浸水想定区域からの庁舎移転や公立病院の新設・建替えにおける建築単価の上限が引上げられます。

 

④地域の人への投資(リスキリング)の推進

地域に必要なデジタル・グリーン等の成長分野に関するリスキリングの推進に要する経費について財政措置が行われます。また、地方団体のデジタル化の推進に向けては、都道府県等の市町村支援のためのデジタル人材確保等に要する経費に対して地方財政措置が予定されています。
なお、地方団体におけるDXの取組を推進するため、新たに専門アドバイザーを派遣するとともに、都道府県単位で行う「首長・管理者向けトップセミナー」の開催についても支援が行われます。

 

⑤国民の安心・安全

緊急防災・減災事業費について、社会福祉法人・学校法人における指定避難所等の生活環境改善のための取組への支援や、消防本部への水中ドローンの配備が対象事業に追加されています。

 

⑥公営企業改革

水道、病院、下水道などの公営企業は住民の身近な事業であり、引き続き改革に取り組んでいくことが求められています。公営企業に関するグリーン化については、下水道や小水力発電の他、バスの電動化についても地方財政措置を講じることとされています。また、地下鉄についても経営状況が厳しいことを踏まえ、地下鉄事業特例債については5年間延長されますが、経営戦略の改定状況に応じた発行要件が設けられており、改革を進めていくことが条件となっています。
トーマツでは、公営企業の経営改革についても多数のご支援実績があるため、公営企業の経営改革等についてのお悩みがある場合は、お気軽にお問合せ下さい。

【関連記事】 
令和4年度公営企業管理者会議について

 

留意事項

岸田首相より年度当初に「賃金アップ」「子育て」について力を入れたい旨の方針が示された点に関し、留意事項が説明されています。

  • 賃金アップについては、歳出改革の関連施策の中で取り組んでいただきたい。
  • 子育て支援については、年初から議論を進め、3月までに内容、6月までに骨太として方向性が取りまとめられる見込みである。経済的支援、サービス拡充、働き方改革の3点に沿って子育ての議論が進められており、国の動向にも留意いただきたい。

 

①持続可能な地域医療提供体制の確保について

総務省から病院経営改革のガイドラインが示されており、経営強化プランについては、令和5年度中の見直しが求められています。令和5年度中の対応が求められる趣旨としては、令和6年度から新しい医療計画が始まるとともに、医師の働き方改革がスタートします。市町村立病院については医師等の時間外労働に支えられている部分もあると考えられ、病院経営にも大きな影響があるため、しっかりと体制を構築する必要があります。また、令和6年度は診療報酬と介護報酬の6年に一度の同時改定も予定されており、これらを考慮した上で、地域医療構想の議論を進めることが求められています。

一方で不採算地区病院については統廃合が難しい病院もあると考えられるため、そのような病院には交付税措置を行うとされています。病院の見直しについてもメリハリをつけた対応が行われ、機能分化や機能連携強化、医師・看護師の確保がポイントになるとされています。

 

②公共施設等総合管理計画の見直し・充実について

公共施設等総合管理計画の策定状況については、令和4年3月末時点において、99.9%の団体において策定が完了しています。当該計画については、令和3年度までに個別施設計画等を踏まえた見直しを行うよう要請が行われていましたが、新型コロナウイルス感染症等により令和4年度以降となる場合は令和5年度までの対応が求められています。

財源措置については、令和4年度から令和8年度にかけて、施設の集約化・複合化事業などに充当可能な公共施設等適正管理推進事業債が設けられています。

また、地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業においても、引き続き公共施設マネジメントについてのアドバイザー派遣事業が活用できるため、課題を抱えている団体についてはアドバイザー事業等の活用を検討することが考えられます。

なお、各地方公共団体の公共施設等総合管理計画の主たる記載内容の一覧及び自治体施設・インフラの老朽化対策・防災対策のための地方債活用の手引きについて、総務省HPにおいて公表されており、あわせて取組の参考とすることが可能です。

【参考】
総務省HP 公共施設等総合管理計画の関連情報(外部サイト)

③地方公会計関係について

統一的な基準による財務書類等の作成状況については次のとおりです。令和4年3月末時点で、令和2年度末時点の状況を反映した固定資産台帳については団体の94.1%にあたる1,683団体で整備済です。また、令和2年度決算に係全る財務書類については、全団体の91.6%にあたる1,638団体が作成済です。

令和4年12月22日経済財政諮問会議で決定した「新経済・財政再生計画改革工程表2022」において、固定資産台帳の更新状況は毎年度100%を目指すこととされているます。また、令和5年度までに全都道府県、令和7年度末までに全団体において、住民一人当たりコスト等の見える化、決算年度の翌年度までに財務書類の作成・更新、統一的な基準による地方公会計情報について比較可能な形で分析・公表することが求められており、より一層取組を推進することが必要です。

総務省による今後の地方公会計のあり方に関する研究会も開催されており、地方公会計情報の一層の活用方法や、統一的な基準の検証・改善について検討が行われており、その動向が注目されます。

また、総務省による今後の地方公会計のあり方に関する研究会も開催されており、地方公会計情報の一層の活用方法や、統一的な基準の検証・改善について検討が行われており、その動向が注目されます。

【関連記事】 

地方公会計の推進

 

④地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業について

総務省・地方公共団体金融機構の共同事業として実施されている「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」については、従来の公営企業、公会計、公共施設マネジメントに加えDX、首長・管理者向けトップセミナー及び公営企業のDX・GXの取組を支援するための専門アドバイザーの派遣事業が拡充されています。

有限責任監査法人トーマツにおいても、各分野について多数のアドバイザーを派遣していますので是非、お気軽にお問合せ下さい。

【参考】
総務省HP 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業参考情報(外部サイト)

以上

 

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