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IR事業に求められるスマートシティ(推進の仕掛け③)

海外事例にみるデータ利活用型スマートシティの取り組み推進に有効な仕掛け「ニーズ把握」

IR事業の誘致を推進している自治体の多くは、スマートシティ構想をRFP(Request for Proposal)等の提案要求項目に含めており、IRエリアのテクノロジーを利活用したソリューションの提供、および最先端技術の実践・実証、体験の場としたい意向が伺えます。

本記事では、海外のデータ利活用型スマートシティの先進事例を俯瞰した結果得られた示唆として、3つの仕掛けのうち、「ニーズの把握」について解説します。

ステークホルダーの要望や意見等ニーズを把握する仕組みの整備が重要となる

IR区域およびその周辺地域において、IR事業の運営を担う民間企業が中心となり、ボトムアップでデータ利活用型スマートシティの推進を主導することが想定されます。

その際、取り組み内容の開示やステークホルダーの要望や課題を把握する仕組みを整備し、ニーズの把握に努める事で有効なソリューションを創出する事が重要となります。

下記は、想定される仕組みの整備例となります。

<仕組み>

  1. 複数チャネルによる取り組み内容の開示
  2. 複数チャネルによる要望や課題の把握

 

【仕組み1】複数チャネルによる取り組み内容の開示

1点目として、スマートシティに対して積極的に取り組んでいる欧米の都市では、対面、ウェブ、展示スペースなど多様な手法を用いて、随時スマートシティの取り組みにおける進捗状況を開示、共有することで、ステークホルダーから理解を得ています。

ロンドン市では、Talk Londonと呼ばれる市民がまちの政策討論に参加する事を目的としたインタラクティブなオンラインコミュニティ環境を用意する事で、環境、交通、安全、仕事など、ロンドン市が抱える大きな問題や課題について意見出来る場を提供しています。

【Talk Londonの主な成果】

■市の優先事項の選定(市が支出計画を作成する際に活用)

・2,000人以上が参加

・公共交通をより環境に優しいものにする事を選定

■市の環境戦略における優先度の確認

・約3,000人が参加

・緑地:市を国立公園都市にする計画にほとんどの参加者が支持

・廃棄物:ペットボトル削減に80%が同意

・エネルギー:69%が自宅の消費エネルギー削減に同意し、市は市民からの意見を参考に電力計画を策定

■市の大気の質の改善(新たな施策における意見調査)

・15,000人以上が参加(コミュニティ最大の参加者数)

・結果を受けて超低排出ゾーン(ULEZ)を市中心部に整備


参照:Talk London, https://www.london.gov.uk/talk-london/

 

【仕組み2】複数チャネルによる要望や課題の把握

2点目として、住民から市への各種問題の報告や、都市運営に関わるアイデアの投票・事業化の仕組み、そして、それらの市の対応状況を可視化することで、市民のスマートシティ推進に対する参加意識を高め、合意を得やすい仕組みの整備も行っています。

サンタンデール市では、City Brainと呼ばれるオンラインプラットフォーム上で、市民が都市運営に関するアイデアを応募、投票し事業化しています。

【City Brainの主な取り組み・成果】

  • これまでに657人の参加、2,037アイデアの応募があり、23アイデアの実現に向けた取り組みを実施(2019年9月時点)。サンタンデール市観光局は、2015年から2020年までの観光計画に対するアイデアを募集し、よいアイデアを計画に反映するとしている
  • City Pulseと呼ばれるサービスでは、市民からの投稿により、サンタンデール市のバイタルサイン(温度、交通、ニュース、駐車場情報など)をリアルタイムに取得している
  • 市民が様々な問題を市に報告し、解決まで市の対応状況の通知を受ける事で、ステークホルダーの巻き込みを推進すると共に、透明性のある行政を目指している
  • 取り組みの開始後、月100件程度の報告実績がある

IRにおいては、開業後のIR区域内外のオーバーツーリズムや治安悪化に対する不安など、地域のステークホルダーが認識する課題は顕在化している事から、テクノロジーを活用した交通アクセスの整備や次世代交通の導入、治安維持等の必要性が行政から発信されています。

IRの開業後は、地域住民を含めたステークホルダーに対して、取り組み内容を複数チャネルで随時開示すると共に、ステークホルダーのニーズを把握し、必要に応じて改善策を打つ事で、各種取り組みへの参加意識を高め、IR事業への理解や信頼も醸成することができると思われます。


参照:Santander City Brain eco, https://www.santandercitybrain.com/

 

IRのRFPを勝ち抜くためにはスマートシティ構想への取り組みが必須となる

RFPを勝ち抜くためには、下記のとおり、高度なプロジェクトマネジメント力とスマートシティにおける高度な専門知識といった、RFPの回答をまとめるレベルの高い取り組みが必要です。

  • スマートシティ構想における市民、行政が抱えるまちづくりの課題や期待サービス、および提供する民間企業の事業スキームや事業性に関する課題や期待を深く読み取り、舵取りする高度なプロジェクトマネジメント
  • スマートシティ構想におけるRFP回答をまとめるための、都市開発の知見、エネルギー領域、データ領域、モビリティ領域等多岐にわたる事業領域の知見、および要素技術の専門知識

 

デロイト トーマツの各分野の専門家が連携し、日本におけるスマートシティの行政の推進と、企業のビジネス参入を支援します

デロイト トーマツでは、Deloitteの海外ネットワークにより、海外都市のスマートシティに関する取り組みや成功事例・ベストプラクティスおよびその要因等の知見を数多く有しています。

デロイト トーマツは、企業のスマートシティに関するビジネス参入戦略の策定や事業計画の策定といったビジネス参入・事業化支援にとどまらず、法規制への対応やレピュテーションマネジメントなどのリスク管理の支援をおこないます。

また、スマートシティの推進を検討する地方自治体に対しても、基本構想、基本方針策定支援業務などのサービスを提供します。

本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。

IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえた、スマートシティに関連する幅広い調査・分析・助言も行っています。

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