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IR事業に求められるスマートシティ

海外事例から導出したデータ利活用型スマートシティの取り組み推進に有効な3つの仕掛け

IR事業の誘致を検討、推進している自治体の多くは、スマートシティ構想をRFC(Request for Concept)やRFP(Request for Proposal)の提案要求項目に含めており、IRエリアのテクノロジーを利活用したソリューションの提供、および最先端技術の実践・実証、体験の場としたい意向が伺えます。

本記事では、海外のスマートシティの先進事例を俯瞰した結果得られた示唆として、データ利活用型スマートシティの取り組みの推進に有効な3つの仕掛けについてご紹介します。

IR事業への参入を検討している企業はスマートシティの推進に取り組む必要がある

IR事業の誘致を検討している自治体の多くは、RFC(Request for Concept)やRFP(Request for Proposal)にて、スマートシティに関連した項目の提案をIR事業者に求めています。具体的な分野としては、交通システム、エネルギー、観光施策や安全の確保といった領域が挙げられ、これらを中心にICTを活用した取り組みを推進することで、スマートなまちづくりおよび最先端技術の実践・実証、体験の場としたい意向が伺えます。

特にIR事業で特徴的なのは、インバウンド・観光分野におけるスマートシティの振興です。例えば、IR区域内において顧客の行動や消費動向などのデータを収集・分析し、データ利活用型のスマートシティを推進することで、顧客の満足度を高め、再訪したいと感じさせるきっかけにつながります。

また、上記のようなデータを利活用したソリューションを提供するためには、その基盤となるエリアマネジメントや、来訪者の受入環境の整備、データ利活用のためのデータプラットフォームの構築推進といった点も、同時に検討すべき重要な論点となります。

データ利活用型スマートシティの推進には3つの仕掛けを意識した取り組みが有効となる

データ利活用型スマートシティ推進の全体像として、解決すべきIR区域及びその周辺地域の課題を頂点に、その課題の解決に資するソリューションの創出、及びソリューション創出を加速させる3つの仕掛け(推進組織と動機付け、場づくり、ニーズの把握)が重要な観点であると考えられます。

これら3つの仕掛けを推進する主体として想定されるキープレイヤー(ステークホルダー)は、ソリューションを創出するITベンダーやスタートアップ、それらを下支えする行政、そして当該地域の観光業の中心を担うIRオペレーター(ディベロッパーや鉄道会社といった構成、出資企業を含む)です。

IRにおけるデータ利活用型スマートシティ推進の全体像(イメージ)

推進組織と動機付け

データ利活用型のスマートシティでは、主体的に推進するための組織づくりと、推進するためのインセンティブや動機付けが非常に重要となります。

組織づくりの面では、IR事業が多岐の領域に渡ることから、様々な価値観や立場、業種・産業のステークホルダーと連携することにより、取り組みの相乗効果を生み出すことがイノベーション創出にもつながります。それらのステークホルダーを束ね、カタリスト(触媒)となるような主体組織となる官民連携組織の組成とリードするCTO (Chief Technology Officer)の存在、および多様な協力パートナーとの連携が重要となります。

また、IRでは、各地域の観光局やDMO (Destination Management/Marketing Organization)などとの連携が観光分野におけるスマート化の重要な役割を担うと考えられます。

続いて、スマートシティを推進するインセンティブや動機付けとして、各地域固有の課題やニーズを見据えた目標を明確にする必要があります。例えば、IRの誘致に成功した自治体は、開業後に大量の観光客が訪れることが予想されるため、周辺地域における交通渋滞の緩和やオーバーツーリズムによる弊害を軽減させるための取り組み(スマートパーキング、MaaS等)が重要となります。

 

場づくり

地域の課題を解決するソリューションを数多く創出するためには、ソフトとハードの両面からのエコシステムの構築が重要となります。

ソフト面の整備では、各地域のあるべきスマートシティ構想と、それを達成するための戦略・戦術を協議することができる環境づくり、そして、そのための場所(テナント等)をIR事業者が提供することで、ステークホルダーとの連携が円滑になり、領域横断の様々なソリューションの創出につながります。

ハード面の整備としては、データ利活用型のスマートシティの構築に欠かせない基盤となる都市OSを開発・整備し、様々なデータ収集と分析の環境を提供することで、各地域の課題にカスタマイズされたソリューションを創出することができます。IR区域内においても、国内外からの来訪者個々の趣味・嗜好に合ったパーソナライズドサービスの提供や、IR区域全体を快適に過ごす環境づくりの実現につながります。

また長期的には、IR区域外とも様々な方法でのデータ連携することで、より広範囲におけるデータ収集と分析に基づいた、ソリューションの創出につながると考えられます。

 

ニーズの把握

スマートシティを推進する行政や民間企業、官民連携組織からの推進状況の共有や、ステークホルダーのニーズの把握が、地域やエリアに寄り添ったスマートシティの推進において重要となります。

スマートシティの推進状況のステークホルダーへの情報開示は、取り組みの透明性を高め、結果、ステークホルダーからの反発を抑制し、信頼を得る上で重要な活動となります。

また、ステークホルダーが抱えるニーズや課題を随時把握することも、スマートシティの取り組みを見直し、アップデートするにあたり重要となります。

なお、上述したように、IR事業の誘致においては、開業後のIR区域内外のオーバーツーリズムや治安悪化に対する不安など、地域のステークホルダーが認識する課題は顕在化している事から、テクノロジーを活用した交通アクセスの整備や次世代交通の導入、治安維持等の必要性が行政から発信されています。

以上が、IR事業におけるデータ利活用型スマートシティ推進に必要な観点の概要となります。

最先端テクノロジーの導入だけではなく、一見すると地道でアナログとも思われる活動の積み重ねが、各地域で受け入れられるスマートシティ推進に大きく貢献します。

上記で挙げた観点に関する、海外の取り組みを例にとった詳細は次稿以降に解説します。

 

IRのRFPを勝ち抜くためにはスマートシティ構想への取り組みが必須となる

RFPを勝ち抜くためには、下記のとおり、高度なプロジェクトマネジメント力とスマートシティにおける高度な専門知識といった、RFPの回答をまとめるレベルの高い取り組みが必要です。

  • スマートシティ構想における市民、行政が抱えるまちづくりの課題や期待サービス、および提供する民間企業の事業スキームや事業性に関する課題や期待を深く読み取り、舵取りする高度なプロジェクトマネジメント
  • スマートシティ構想におけるRFP回答をまとめるための、都市開発の知見、エネルギー領域、データ領域、モビリティ領域など多岐にわたる事業領域の知見、および要素技術の専門知識

 

デロイト トーマツの各分野の専門家が連携し、日本におけるスマートシティの行政の推進と、企業のビジネス参入を支援します

デロイト トーマツでは、Deloitteの海外ネットワークにより、海外都市のスマートシティに関する取り組みや成功事例・ベストプラクティスおよびその要因等の知見を数多く有しています。

デロイト トーマツは、企業のスマートシティに関するビジネス参入戦略の策定や事業計画の策定といったビジネス参入・事業化支援にとどまらず、法規制への対応やレピュテーションマネジメントなどのリスク管理の支援をおこないます。

また、スマートシティの推進を検討する地方自治体に対しても、基本構想、基本方針策定支援業務などのサービスを提供します。

本稿に関して、より詳細な内容や関連資料等をご要望の場合は以下までお問い合わせください。

IR(統合型リゾート)ビジネスグループでは、Deloitteのグローバルネットワークを活用し、海外事例等を踏まえた、スマートシティに関連する幅広い調査・分析・助言も行っています。

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