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ESGデータドリブン経営関連アドバイザリー

企業価値評価と非財務情報(ESGデータ)

ESG投資拡大の流れやSDGsへの関心の高まりなども背景に、ESGデータ(非財務情報)が注目を浴びています。今、企業には、ESGデータを活用する「ESGデータドリブン経営」が求められています。「ESGデータドリブン経営」の実装により、企業は自身の企業価値に影響を与えうる外部/内部のデータをタイムリーに収集・分析し、企業価値の向上に繋がる経営の意思決定に活用することが可能になります。また、議論の進む非財務情報開示基準の統合や開示の義務化への備えという観点でも、有用です。

企業価値における非財務情報(ESGデータ)の重要性

2006年に国連主導で定められた「責任投資原則」(PRI:Principles for Responsible Investment)では、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を投資プロセスに組み入れる必要性が提唱されました。2008年のリーマン・ショックを受け、資本市場において短期的な利益のみを追求することに対し批判や危機感が高まったことも追い風となり、その後PRI署名機関は増加、2021年4月末時点には世界で3,000を超え、その運用資産額は100兆ドル以上に達しています。日本においても2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名したことで、ESG投資への注目が高まりました。こうしたESG投資拡大の流れや、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)なども背景に、企業経営を通じた社会課題の解決が重視されるようになり、企業価値の構成要素としてCO2排出量などの非財務情報にも注目が集まっています。

加えて、株主資本主義が格差拡大や短期的志向の経営を助長してきたという弊害が指摘され始め、従来の株主資本主義がもたらした格差の拡大や人権侵害、環境破壊などの問題を是正するために、ビジネスに関わる全てのステークホルダーを重視するべきであるという「ステークホルダー資本主義」が提唱され、2020年1月ダボス会議の主題となりました。

近年、気象パターンの変化や災害の激甚化など気候変動の影響が顕在化し始めたこと、企業のサプライチェーンにおける人権問題、さらにはCOVID-19のパンデミックなど、企業価値に影響を与え得る様々な課題への関心が急速に高まっており、企業価値の判断に必要となる非財務情報の重要性はますます増しています。

 

非財務情報開示基準の統合に向けた動き

WEF-IBC(世界経済フォーラム国際ビジネス評議会)は2020年9月、「ステークホルダー資本主義」を測定するための指標および開示の枠組みを発表しました。この枠組みは、民間の主要な基準設定団体の間での指標の収斂を加速させ、ESG開示の報告に一貫性と比較可能性を実現することを短期的な目標としており、業種や地域を問わず報告可能である普遍的なESGの指標と開示・報告の枠組みとなっています。

同じく2020年9月、非財務情報開示の枠組みを提供する5団体(CDP、CDSB、GRI、IIRC、SASB)は共同声明を発表し、既存のフレームワークの調和を図ることで複雑性を緩和し、互いに補完し合い、利便性が高くより包括的な情報開示を可能とするための行動を開始していくこととしました。またこれまで国際財務報告基準を策定してきたIFRS財団も、グローバルに統一されたサステナビリティ報告基準の設定に対する要望の高まりを受け、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立と、サステナビリティ報告基準の開発に着手し、2021年11月のCOP26において気候関連報告基準と共にプロトタイプ(草案)を発表しています。ISSBの動きを受け日本国内でも2021年12月、財務会計基準機構(FASF)がサステナビリティ基準委員会(SSBJ)を設立、ISSBのカウンターパートとして活動していくことを発表しました。

欧州では、2021年4月に非財務情報開示指令(NFRD(2014年))の改正案としてサステナビリティ報告に関する指令(CSRD:Corporate Sustainability-information Reporting Directives)が提案されました。CSRDが施行されると、企業に対して欧州サステナビリティ報告基準に基づいた情報開示が求められることになります(2022年2月現在、気候変動・汚染・サーキュラーエコノミー等、いくつかの開示要件プロトタイプが発表されています)。またCSRDでは、非財務情報開示の正確性を担保するため第三者保証も義務化される見込みです。

米国では、2021年3月、米国証券取引委員会(SEC)が気候変動関連情報の開示義務化に関してパブリックコメントを募集したところ、寄せられたコメントの75%が賛同を表明するものでした。これを受けて、SECは財務報告書提出企業に向けた気候関連開示の「サンプルレター」を公表し、ルールや規則ではないものの非財務情報開示において気候変動を考慮すべき事項として明示しました。

 

ESGデータドリブン経営

こうした背景の下、デロイト トーマツは、外部/内部のESGデータを収集・分析し、経営の意思決定に活用する「ESGデータドリブン経営」の実装が今後企業には不可欠になると考えています。「ESGデータドリブン経営」とは、企業活動の努力を企業価値向上に繋げる経営管理基盤としてアナリティクス基盤を整備・実装・活用することで、意思決定に必要なインプットおよび企業活動の結果(アウトプット)を財務・非財務問わずタイムリーに収集・分析しながら経営に反映させていくことです。「ESGデータドリブン経営」が、これからの不確実性が高まる時代を生き抜くサステナブルな経営スタイルとして必須になると考えます。

ESGデータドリブン経営
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企業価値に影響を与える外部環境のモニタリング・分析

「ESGデータドリブン経営」①~③では、短期的/長期的に企業価値に影響を与える外部環境をタイムリーに把握し自社への影響度を分析することで、外部環境の変化を経営の意思決定に活かします。また、不確実性を踏まえたシナリオプランニングを戦略策定プロセスに組み込みます。

 

連結範囲を対象としたESGデータの収集・分析、内部統制の確立と高度化

「ESGデータドリブン経営」⑥では財務情報と同様の連結範囲を対象とした、ESGデータの収集・分析と、その過程における内部統制の確立・高度化を目指します。そのためには、前述した非財務情報開示の義務化をめぐる外部動向の把握や、収集するデータの対象・粒度・算定方法の整理、省力化・データの正確性向上のためのITツールの活用に関する検討、非財務情報に対する第三者保証範囲の拡大などが求められます。

 

ESGデータの開示と自社の企業価値との関連性に関するモニタリング・分析

「ESGデータドリブン経営」⑦では、非財務情報の開示がしっかりとステークホルダーに届いているか、またその結果として自社の企業価値向上に寄与しているかを把握することを目指します。

 

デロイト トーマツの強み

デロイト トーマツでは、気候変動・人権などを含むSDGs・社会課題起点の全社戦略・事業戦略策定支援を実施しており、豊富な企業支援実績を有しています。また、統合報告書やESG評価機関対応アドバイザリー等、企業価値を外部ステークホルダーに訴求するための開示に関する支援実績も豊富です。外部情報の収集・分析、内部情報の収集・活用、第三者保証と外部開示、開示情報の企業価値への影響分析まで、「ESGデータドリブン経営」全体に対し、網羅的なアドバイザリーが可能です。

また、Deloitteは強固なグローバルネットワークを有しており、日本国内のみならず、グローバルな視点でのESGデータドリブン経営実現に向けた支援が可能です。

 

プロフェッショナル

中島 史博/Fumihiro Nakajima

中島 史博/Fumihiro Nakajima

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー マネージングディレクター

有限責任監査法人トーマツ所属。外資系大手コンサルティング会社、サステナビリティコンサルティング会社を経て現職。サステナビリティ経営や脱炭素戦略の策定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応及び気候変動シナリオ分析などに従事。... さらに見る

丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

丹羽 弘善/Hiroyoshi Niwa

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 Sustainability Unit Leader

サステナビリティ、企業戦略、及び中央官庁業務に従事。製造業向けコンサルティング、環境ベンチャー、商社との排出権取引に関するジョイントベンチャーの立ち上げ、取締役を経て現職。 システム工学・金融工学を専門とし、政策提言、排出量取引スキームの構築、経営戦略業務に高度な専門性を有す。気候変動・サーキュラーエコノミー・生物多様性等の社会アジェンダの政策と経営戦略を基軸とした解決を目指し官民双方へのソリュー... さらに見る