Posted: 28 Sep. 2021 5 min. read

障害者雇用支援月間に考える、共に働き、共に心地よい社会

シリーズ: Diversity, Equity and Inclusion

障害者雇用支援月間と、知的障害者福祉月間

9月は「障害者雇用支援月間」であり、障がい者雇用の促進や職場定着などを目指して厚生労働省をはじめとする様々な団体が啓発活動を展開している特別月間だ。また、9月は知的障がい者への理解を深めることを目的として制定された「知的障害者福祉月間」でもある。本稿では、【障がい者×雇用・活躍】をテーマに、デロイト トーマツ グループ内の取り組みなどの一部紹介も兼ねた内容をお届けしたい。

デロイト トーマツ グループにおける障がい者雇用

当グループの障がい者雇用には大きく二つ特徴がある。一つは、ビジネス特性や個人スキルに合わせ、専門的な事務業務、園芸、農作業、マッサージなど、多様なキャリアパスを障がいのあるメンバーの活躍ステージとして展開していること。もう一つは、当グループで働いている障がいのあるメンバーの約95%が、精神または知的障がいのあるメンバーであることだ。これは、「障がい者雇用」というと身体障がい者を雇用する傾向が強い時代が長かった日本の中でも、2000年代中盤から先駆けて知的・精神・発達障がいのあるメンバーの雇用・育成に取り組んできたゆえの特徴となっている。

様々なメンバーがそれぞれの場所で手腕を発揮している当グループであるが、すべてのメンバーに共通しているのは、「支えられる、支えるべき立場」としてではなく、誰もが「支え合い、貢献し合える仲間」として、一人ひとりが誇りを持って働いていることだ。それは、オフィス業務でもアウトオフィス業務でも変わらない。

支え合いと、小さな貢献の積み重ね~トーマツチャレンジドや農園の事例を通じて~

オフィス業務の代表例として、監査法人の特例子会社であるトーマツチャレンジドでは、知的・精神・身体などの障がい者手帳の区分に捉われず、個々人の持つスキルや特性の強み・弱みに応じたアサインを行っている。メールルーム、パントリー、PCセッティング、契約書の製本・発送、送付状作成をはじめとする多くの事務系業務など、各々の持つスキルや特性を、自然に、あるいは時にチャレンジしながら多様な分野で受け入れている。これは、障がいの有無に関わらず共に助け合う関係を築き合い、誰もが活躍できるような職場環境を創り上げようとする、デロイト トーマツ グループ全体の取り組みに呼応するものである。なお、この取り組みに関しては紹介ビデオ「誰もが自分らしく働ける社会に向けて」でも触れているのでぜひご覧いただきたい。

また、アウトオフィス業務の一例として、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の農園では、中度~重度の精神・知的障がいのあるメンバーも多く活躍している。誰もが主体的に業務に取り組むことから提案される改善案も多く、液肥を量りやすくする道具や、土台となる軽石を水平にならす道具など、「こんな道具があればいいのに」といったアイディアを積極的に実現し、あらゆる業務改善に繋げている。次から次へと形になった道具は、他の農園や企業の参考にもなっており、小さな工夫が、組織を超えた貢献にも繋がっている。

農園で実際に使われている道具の数々

農園のメンバーの「こんな道具があったらいいのに」というアイデアが形になっている

「支えるべき存在」という社会的イメージを覆しながら

障がいがあるという状況は、どうしても社会的に「助けが必要、支えなくては」といったイメージが大きく先行しがちであろう。しかし当グループでは、障がいの有無に関わらず業務で助け合うことはもちろん、農園で収穫された野菜を医療機関に寄贈したり、業務外の取り組みとして歩数が寄付になる「Walk in Her Shoesキャンペーン」に有志が参加し、視覚障がいのあるメンバーや農園のメンバーが中心となって大きなインパクトを創出する(外部サイト)など、様々なシーンで障がいのあるメンバーが能動的に社会貢献を行い、「支える側」としての活動を行っている。障がいのあるメンバーの主体的な行動が誰かの役に立つことで自己肯定感や自信が高まったとの声も多く寄せられており、あらゆるエンパワメントの機会となっていることから、Personal Well-beingの充実にも繋がる活動ともいえるだろう。

ステレオタイプの打破から広がる、多様な社会を目指して

社会のあり方で変化する「障がい」と、誰もが働きやすい社会の実現に向けて』で取り上げているとおり、何が「障がい」となるかは社会的構造や環境によって変化するものであり、社会の在り方によって、障がいの在り方も大きく変化する。従って、障がいのあるメンバーが活躍できる環境が更に整う形で社会の在り方が変化すれば、より多くの人達が活躍できるフィールドが広がるだろう。

デロイト トーマツ グループは、誰もが能力を最大限発揮できる社会構築に向けた活動の一環として、障がい者の活躍推進に関する世界的な取り組み「The Valuable 500」(*1)に加盟している。様々な人が共に学び、共に喜び、共に働くことができるような環境を増やしていくためにも、当グループは、障がいのあるメンバー=支えられる側、というステレオタイプを打破し、様々な分野で活躍することで社会貢献につながる取り組みや仕組みを、より広く社会へ展開していきたい。

*1: The Valuable 500: 2019年1月開催の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において「インクルーシブなビジネスが、インクルーシブな社会を創る」という考えのもと立ち上げられた取り組み。当グループの加盟に関するニュースリリースはこちら

*2: デロイト トーマツ グループでは、障がいではなく、能力や思考の多様性にフォーカスしており、2023年6月以降、「Disability(障がい)」ではなく「Diverse Abilities」という言葉を採用しています。

■本記事は、デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社 HR障がい者管理グループ所属メンバーによる協力のもと執筆。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の農園における多様な取り組みの他、有限責任監査法人トーマツの特例子会社であるトーマツチャレンジド株式会社の取り組みについてもぜひご覧ください。

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