第3回 内部通報制度の周辺環境の変化-公益通報者保護法の改正その2、ISO37002- ブックマークが追加されました
第3回は、第2回の公益通報者保護法改正についての続きと、ISO規格についてです。
アンケート結果とは直接関係ありませんが、改正公益通報者保護法に基づく体制整備の指針案が消費者庁から公開されています。
「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書」の22ページから「公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(案)」[1] (以下「指針」と言います)が閲覧可能です。
また当該報告書の中で、現在内部通報制度を整備済みの多くの事業者が参照していると思われる「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」[2] (以下「ガイドライン」と言います)の改訂等について言及されています。
具体的には4ページ脚注7の次の記載です。
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指針の解説には、指針において求められる義務の範囲を超えた推奨される取組事項等も併せて示すことが適当である。この場合、指針の解説のうち、義務的事項である指針の解説を記載する部分については民間事業者向けガイドライン等の既存のガイドラインと性質が異なるものの、推奨される取組事項等を示す部分については既存のガイドラインと性質が共通するため、既存のガイドラインは指針の解説に統合するなど必要な整理をすることが期待される。
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すでにガイドラインを参照して内部通報制度を整備済みの多くの企業が多少なりとも影響を受ける可能性があります。現時点の指針案は、ガイドラインと比べると文量が少なく、ガイドラインのほうがより具体性があるように感じられます。上述の脚注の通り、指針では方針が提示され、指針の解説にはガイドラインの文章を利用するなどの方向であれば、企業が受ける影響はそれほど大きくならないものと思われます。
また、WCMSはガイドラインを参照していますので特に登録済み企業や検討中の企業は今後の指針公表を注視する必要があります。
法改正により300名超の事業者に体制整備を義務付けることが確定しています。指針が多くの事業者にとって参照しやすいものになることを期待しています。
内部通報制度がISOで規格化されます(ISO/FDIS 37002 Whistleblowing management systems Guidelines)。推奨事項が規定されるタイプBと呼ばれるものであり、要求事項が規定され適合性評価の対象となるようなISO9001やISO27001等のタイプAとは種類が異なります。
タイプBであることまで知っていると回答したのは3%となり、2年連続で同一の認知率でした。
一方で、規格化されること自体を知っていると回答した比率は今回32.1%となり、これも大差がありません。
図1 ISO37002(Whistleblowing management systems 内部通報マネジメントシステム)についての認識
2021年7月の近日中に公開が予定されており、消費者庁が公開するガイドライン、指針の他に参照するべき有益な情報となるのではないでしょうか。
国際規格ということから、外国に関係会社等を有する事業者の場合に参照しやすい規格になると考えられます。今後の認知度向上、企業が利用する機会が増えることを期待しています。
当ブログ第1部の第6回でWCMSと比較し詳細に紹介しておりますのであわせて御覧ください[3]。
[1] 消費者庁 公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書 内 公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(案)(PDF, 536KB, 外部サイト)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_001/assets/review_meeting_001_210421_0001.pdf
[2] 消費者庁 公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン(PDF, 229KB, 外部サイト)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/pdf/overview_190628_0004.pdf
[3] 連載:内部通報制度の有効性を高めるために 第1部 第6回
https://www2.deloitte.com/jp/ja/blog/risk-management/2020/wcms-criteria.html
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連載:内部通報制度の有効性を高めるために【第2部 調査結果から考察する内部通報制度の高度化】
亀井 将博/Masahiro Kamei
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事。
ISO/TC309 37002(Whistleblowing)日本代表兼国内委員会委員、元内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会委員。
金融機関、自動車関連、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業など業種業態規模を問わず内部通報の外部窓口サービスの提供、および内部通報制度構築を支援。
その他、リスクマネジメント体制構築支援、J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験。
外部セミナー、インハウスセミナー講師を始め内部通法制度に関する寄稿記事の執筆多数。
和田 皇輝/Koki Wada
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社
J-SOX関連業務支援、内部監査業務支援、事業継続計画(BCP)策定などを経験。
2010年より内部通報制度関連業務およびソーシャルメディアコンサルタント業務に従事。
金融機関、自動車関連、建設業、製造業、製薬業、保険業、食品製造業、サービス業、ITなど業種業態規模を問わず企業の対応を支援。
現在インハウスセミナー講師を始め内部通法制度構築助言や通報対応業務、ソーシャルメディア関連助言業務を担当。
※所属などの情報は執筆当時のものです。