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地方公会計とは?  

地方公会計の取組を知ろう    

地方公会計の導入から3年以上が経過し、地方公会計の活用に積極的な自治体がある一方で、”地方公会計とは何か?”と悩まれる方もおられるかと思います。そうしたお悩みに応えるため、地方公会計の取組がどういうものかについて説明します。

(1)地方公会計の取組

 住民サービスを提供する地方公共団体における財政運営は、年度が始まる前に予算編成が行われ、議会の議決を経た予算をもとに、年度内に当該予算の範囲内で各事業への支出が行われることになっています。また、その支出予算は、当該年度内に収入が見込まれる税金などの範囲内で編成されるため、当然ながら現金収支がベースとなります。
 このような単年度ごとの現金ベースの予算・決算になっていること自体が批判されることもありますが、現金収入見込みの範囲内で、現金支出の権限を首長部局に与えるという、議会制民主主義の観点からは、適切な手法であると考えられます。
 その一方で、高度成長期からバブル崩壊後の景気対策に至る時期まで、全国各地で数多くの道路や橋といったインフラ、学校や図書館などの施設が整備され、その財源として多額の地方債が発行されたこともあり、単年度の予算・決算では把握困難な資産や負債が多額に上っていると想定されます。
 そこで、既存の現金ベースの予算・決算の制度的枠組みを維持しつつ、その中で把握困難な有形固定資産をはじめとした資産、地方債や職員の退職手当に関する引当金などの負債の網羅的な把握に加え、減価償却費などの見えにくいコスト情報を補足的に認識し、行財政運営に活用していくことを目的に、地方公会計の取組がスタートしました。


 

 
 

(2)地方公会計の取組のポイント

 地方公会計の取組のポイントは「固定資産台帳の整備」と「複式簿記の導入」にあります。これらが実務に定着することが成功のカギといえるため、そのような体制が整備・運用されているかどうかが重要となります。

 地方公共団体が保有する資産のうち9割を超える割合を占めるのが、住民サービスを提供するために保有しているインフラや施設といった有形固定資産であり、その金額も多額に上ります。インフラや施設の維持管理のみならず、今後の老朽化対策も見据えると、これらの情報を網羅的に把握することが有効であり、その増減をタイムリーかつ適切に固定資産台帳に反映されることが必要です。

 また、帳簿組織体系の確立、とりわけ複式簿記の導入が不可欠です。たとえば、現金支出を行い、施設を整備したという事象が発生した場合、現金という資産が減少する一方で、有形固定資産という資産が増加したと記録することになります。これにより、取引の原因と結果を二面的に捉えることができ、現金以外も含めた行政資源の増減を的確に把握できるようになります。

 このように、地方公会計の取組は、形式的には、現金ベースの収支を記録する単式簿記を採用している地方公共団体に、複式簿記の仕組みを導入するのみに見えなくもありません。しかしながら、財務書類を作成・公表するといった形式的な対応にとどめるのか、本質を捉えて効果的な取組につなげていくかは、各地方公共団体における対応次第であろうと考えます。

 

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以上

 
 

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これまでに配信している以下のコンテンツ集を上記サイトにまとめています。

  • 特集 公会計を今よりちょっと先に進める方法
  • 特集 5分で理解!地方公会計の推進に関する研究会(令和元年度)
  • 統一的な基準による財務書類の作成状況等に関する調査結果について
  • 地方公会計の概要
  • シリーズ5分で理解!公会計の財務書類
  • シリーズ5分で理解!公会計の固定資産台帳

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