最新動向/市場予測

インフレ圧力じわり(3):原油価格急騰と実質賃金/原油は100ドルを目指すのか:過去と異なる価格上昇の原動力 他

リスクインテリジェンス メールマガジン Vol.75(2021年10月)

リスクの概観と金融規制の動向に係る概観について、留意すべき特徴点を炙り出すと同時に、有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センターが考える意見も発信いたします。

リスクの概観(トレンド&トピックス)

インフレ圧力じわり(3):原油価格急騰と実質賃金

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
マネージングディレクター
勝藤 史郎
 

米国のインフレ高進が止まらない。9月の米国消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率は+5.4%と、1990年代以来の高水準にあり、かつ3か月連続で5%を上回っている。当レポートでは従前よりコロナ後の経済の構造変化として、経済全体の需給ひっ迫、国際的なサプライチェーンの変化に伴う需給の偏在、新型コロナによる生活形態や労働市場変化を挙げていた。最近ではこれに原油等資源価格の上昇が拍車をかけている。依然、インフレ率の上昇には一時的要因と構造的要因がある。当方では、原油価格の上昇は一時的で、現在1バレル=80ドル台前半に上昇しているWTI原油先物価格が100ドルを超える可能性は低いとみている。現在の原油価格上昇は投機的というよりも実需を反映したもので、需要拡大に合わせ供給が十分にあれば抑制可能とみているためである(今月号「原油は100ドルを目指すのか:過去と異なる価格上昇の原動力」参照)。しかし需給のひっ迫は当面継続し、OPECを始めとする産油国が増産に踏み切らない限り原油価格は高水準で推移、今後1年ほどは前年比インフレ率の上昇に寄与し続ける可能性が高い。インフレ率上昇が経済に与える影響を本格的に考察する時期が来ているといえる。

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マクロ経済の動向(トレンド&トピックス)

原油は100ドルを目指すのか:過去と異なる価格上昇の原動力

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
マネジャー
市川 雄介

原油価格がこのところ騰勢を強めている。国際的な指標価格(WTI期近物価格)は10月に1バレル80ドル超と、7年ぶりの水準に上昇した(図表1)。コロナ後の経済再開に伴う人手不足や世界的な供給網の混乱などにより、もともと多くの国でインフレ率は高い伸びを示していたが、エネルギー価格の上振れは一段と物価の上昇圧力を高めることになる。先進国では家計が(全体としてみれば)多額の貯蓄を積み上げているとはいえ、過度の物価上昇は実質所得を下押しし、内需の低迷をもたらしかねない。

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金融規制の動向(トレンド&トピックス)

ESGリスク管理の取り組みは行政も金融機関も道半ば~2022年もリスク管理高度化は不可避

有限責任監査法人トーマツ
リスク管理戦略センター
シニアマネジャー
対木 さおり
 

ESGに係るリスク管理の分野は、いわゆる非財務リスク管理分野の中でも、開発途上の分野である。さらにE(気候変動)や、人権を含むS(社会)分野は一定の専門性が必要とされることもあり、戦略やリスク管理の高度化に向けESGの要素をインテグレート(統合)していくことは、中長期的な取り組みが必要となる。その際に、実務上の取り組みが、「比較的」先行している欧州での事例を参考としたり、参照したりするケースが増えてきている。欧州域内でも、より良いプラクティス事例を求め、8月に欧州委員会からESGリスク管理に関するプラクティス調査の報告書が公表された。“Final study on the development of tools and mechanisms for the integration of ESG factors into the EU banking prudential framework and into banks' business strategies and investment policies”と題する調査は、欧州委員会が民間委託して実施された調査であり、2020年末に中間報告書公表のあと、5月に最終報告書がとりまとめられ、2021年8月末に欧州委員会から公表された。内容は、銀行のリスク管理プロセス、事業戦略、投資政策へのESG要因の統合、および健全性監督への統合に関するもので、現状の金融機関の取り組みと、課題を整理している。現行のプラクティスを包括的に概観し、銀行のリスク管理プロセスと健全性監督の中でESGリスクを統合するための一連のベスト・プラクティスを特定する際に非常に参考となる資料となっている。

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講演情報

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グローバルな視点からみた、企業経営上の様々なリスクをチェックするリスクインテリジェンス メールマガジン(グローバル・リスク・ウォッチ)では、毎月、過去一ヶ月間に起きた事象を振り返りながら、事業リスクという視点から、多くの金融機関や事業法人が留意すべき特徴点を炙り出します。同時に、様々なリスク管理や金融規制上のトピックに関し、デロイト トーマツ グループの一員である有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センターが考える意見も発信していきます。

 

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