Generative AIの衝撃と未来 ブックマークが追加されました
2023年は、Generative AI(生成系AI)の爆発的な普及とともに始まりました。人間の指示に応じて、自在に画像や文章を“創作”するGenerative AIは、社会に大きなインパクトを与えると同時に、さまざまな議論も巻き起こしています。
2023年5月に開催した「Lead the Way Forum ―未来に誇れ」では、一般社団法人 日本ディープラーニング協会 理事長であり、現代AIの第一人者である松尾 豊教授をゲストにお迎えし、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナーで経営会議メンバーの首藤 佑樹、同じくパートナーで Deloitte AI Institute / Deloitte Digital Institute 所長の森 正弥が、AI技術の進歩や応用、またそれがビジネスや社会にどのような影響を与える可能性があるかについてパネルディスカッションを行いました。モデレーターは、有限責任監査法人トーマツ デロイト アナリティクス マネージングディレクター 金 英子が担当しました。本稿ではセッションのサマリをレポートします。
*本記事は、Generative AIで制作した原稿をもとに編集しています。
本セッションの冒頭では、松尾 豊教授から「Generative AIの動向」と題し、プレゼンテーションが行われました。日本政府のAI戦略会議で座長を務められている松尾教授教授は、国際的にもGenerative AIが盛り上がる中、日本はどのような戦略を取るべきか。その中で、「開発・活用とリスクのバランスをしっかりとっていくこと」が重要なポイントであると指摘しています。
AIにおけるGenerative AIは、深層学習(ディープラーニング)技術の一つとして位置づけられ、大規模言語モデル(LLM:large language model)、画像処理等で使われるディフュージョンモデルなどを指しています。大規模言語モデルとは、言語データを対象に、深層学習を用いて訓練された大規模なモデルであり、具体例としてはOpen AIが開発するGPT-4、Googleが開発するPaLM等が挙げられます。これらを対話用にチューニングしたものがChat GPTです。
Chat GPTは、2022年11月に公開されてからまだ1年経たない状況ながらもユーザー数が伸び、的確な会話ができることから話題になっています。2023年3月にOpen AIから発表された“GPTs are GPTs(汎用目的技術General Purpose Technology:GPT)”という論文では、米国の80%の労働者が、彼らの持つタスクのうち少なくとも10%が大規模言語モデルの影響を受けるとされ、特に高賃金の職業や参入障壁の高い業界でこの影響が大きいと言われています。
各国の対応も急速に進んでおり、中国では中国版Chat GPT、イギリスはBrit GPTを作ることが発表され、ヨーロッパ諸国もルール作りを急いでいます。
松尾教授はこうした状況の中で、日本国内でも大規模言語モデルをしっかり作ること、APIを利活用しながら多くのサービスを立ち上げていくこと、個人や組織においてユーザーとして利用を促進し、様々な活用方法を見つけていくことが重要であると述べています。また、現在は「第4次AIブーム」と呼ばれるほどのスピードで進化が加速している状況に触れ、日本ディープラーニング協会の公式HPで公開している生成AIの活用促進ガイドライン(LINK)を参考にしてほしいと述べました。
Generative AIはビジネスの観点ではどのようなインパクトがあるのでしょうか。デロイト トーマツ コンサルティングの首藤佑樹さんは、「生成AIの影響について強い危機感と類を見ないほどのインパクトがあると考えています」と話し、その理由として専門家だけでなく一般ユーザーにリアルなユースケースがあり使い方がすぐにイメージできること、企業の導入においてもユーザー側からのリクエストがIT部門に挙がってくることを例に挙げ、これまでとはインパクトの異なるテクノロジーであることを指摘しました。企業の対応策としては、社内利用の促進、外部向け製品サービスの提供、自社での大規模言語モデルの開発などが挙げられる一方、根本的な課題は人材面であると述べ、今後人材ポートフォリオに大きな影響を与えることから、全社的な改革につながる可能性を示唆しました。
同じく森 正弥さんは、Generative AIの活用について相談や問い合わせの量もこれまでとは桁違いである状況に触れ、「企業でもさまざまな活用方法が考えられていて、想定を超える時代に入ったと感じている。前提や枠にとらわれずに、さらなる活用方法について考えるべき」と述べました。
また、今後のビジネスにおける活用や課題については、「Generative AIの活用に機会を見出している企業にとってはDXを推進する武器になるでしょう。より一般的にAIを利用できることになったことで、マインドセットが変わりつつあるのは大きな機会です」としながらも、既存業務やシステムに組み込みやすいため、本来ビジネスプロセスの大胆な変革が必要にもかかわらず、既存のプロセスを残してしまいかねないという課題を孕んでいると指摘します。
首藤さんは営業の例を挙げ、「機能やスペックの説明であればAIに説明してもらった方が早く正確に行えるかもしれません。でも営業の存在価値がなくなるのではなく、今後はより深い顧客理解やストーリーテリングといった能力が求められるのではないでしょうか。求められる人材要件も変わってくるでしょう」と述べ、AI時代に活躍できる人材を生み出すことの重要性についても触れました。
AIが創造性を持つこれからの時代に、日本の企業・政府・アカデミアはどのようなビジネスや社会を目指して、アクションをとっていくべきでしょうか。
松尾教授は、Generative AI / Chat GPTは言葉を使うことができるため、従来のデジタルテクノロジーに比べてユーザーが取り入れやすいこと、組織のリーダーこそ言葉の大切さを理解しているため、組織が動きやすいという側面を挙げ、このムーブメントを大切にしながら、政府もベストプラクティスの共有や開発支援等を後押ししていくことの必要性について語りました。
森さんはビジネスの観点から、「人間とコンピューターやシステムをつなぐインターフェース」としての可能性に触れ、Generative AI / Chat GPTを活用することでプログラミングが簡単になり、現場と経営層の距離が近づくこと、よりダイナミックなシステム開発やビジネスが可能になるのではないかと話します。加えて首藤さんは、企業において今後は社員同士の対話やフィードバック等より人間らしいコミュニケーションや、多角的にプロンプトを検証するためにもダイバーシティの重要性が増すのではないかと指摘しました。
アカデミアの観点から松尾教授は、AIを起点に人文社会学が大きく変わる、研究と紐づくことで新しい世界が開けるのではないかと今後の期待を語りました。
このセッションでは、Generative AIのインパクトと今後可能性について、様々な観点からディスカッションを行いました。最後にパネリストの皆さんから、組織をけん引するリーダーの皆さんへのメッセージが伝えられました。
一般社団法人 日本ディープラーニング協会 理事長 松尾 豊さん:
「生成AIは本当に面白い技術だと思いますし、使い方によっては私たちの社会を良くしていくものだと思っています。ぜひ色々な形で使ってみたり、これからこういった技術がどのように関わるのか、意味することは何かも同時に深く考えられると良いと思います」
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 経営会議メンバー 首藤 佑樹:
「今は、分岐点と言えます。これからの1、2年、どのように時間を使うか、何に投資するかは数年先の我々のポジションや産業界での役割を果たす上での方向性を決めてしまうのではないでしょうか。利活用することを前提に、企業や組織をリ・デザインするタイミングだと思うので、我々自身も含めて積極的に取り入れていきたいと思います」
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー Deloitte AI Institute / Deloitte Digital Institute 所長 森 正弥:
「生成AIはいきなり現れたものではなく、大量のデータからいかに知をつくるか、しかるべき到達点といえます。ということは、実はこのテクノロジーはさらなる進化も見えていて、より我々のビジネスや知的生産や創作活動の在り方が大きく変わっていくでしょう。それらを踏まえて、いろいろな活用アイデアを出し、社会課題解決につなげられると良いと思います」
本セッションの動画や関連する情報は以下からもご覧になれます。
テクノロジー・メディア・通信インダストリー アジアパシフィックリーダー Chief Growth Officerとして戦略・アライアンス・イノベーション・AIを含む先端技術等を統括する。また、テクノロジー・メディア・通信インダストリーのアジアパシフィックリーダーを務め、事業戦略策定、組織改革、デジタルトランスフォーメーション等のプロジェクト実績が豊富である。米国への駐在経験もあり、日系企業の支援をグローバルに行ってきた。 関連するサービス・インダストリー ・ テクノロジー・メディア・通信 ・ 電機・ハイテク >> オンラインフォームよりお問い合わせ