Posted: 06 Sep. 2023 5 min. read

China to Global ~中国を起点とする次世代産業創造、アジアそして世界への波及

Lead the Way Forum-未来に誇れ セッションレポート

米・中国と世界のデカップリングが加速するともみられる中、中国は粛々と経済圏の拡大を進め、中国を起点とする新たなイノベーション・エコシステムが次世代の産業を創造し、その波はいまや東南アジアをはじめとする諸外国に押し寄せています。日系企業は今後この潮流をどのように捉え、次なる打ち手を仕掛けていくべきでしょうか。

2023年5月に開催した「Lead the Way Forum―未来に誇れ」では、中国・東南アジアをはじめ、日系企業を現地で支援するコンサルタントが現地のトレンドを踏まえ、日系企業として今とるべき打ち手についてディスカッションを行いました。本セッションではその内容のサマリをレポートします。

*本記事は、Generative AIで制作した原稿をもとに編集しています。

パネリスト

※開催当時の役職・肩書となります

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
チャイナユニット(中国駐在) 日系自動車ビジネスリード ディレクター
黒田 耕平

デロイト コンサルティング チャイナ
M&Aサービスラインリード パートナー
ヴィクター・チェン

デロイト コンサルティング サウスイーストアジア
モニター デロイト ディレクター (シンガポール駐在)
サムラット・ボーズ

デロイト トーマツ  コンサルティング合同会社
モニター デロイト マネジャー (ベトナム駐在 / モデレーター)
セリン・キム

 

本セッションのキーポイント
  • 中国や東南アジアのビジネス環境の変化
  • 中国躍進のキードライバー
  • 日系企業が勝利するためのキーワード

 

中国や東南アジアのビジネス環境の変化

3年間のコロナ禍を経て、中国のビジネス環境は大きく変化し、その影響は東南アジア地域においても重要なテーマとなっています。本セッションでは、中国や東南アジアにおけるビジネス環境の変化、中国躍進のキードライバー、さらに日本企業が勝利するためのキーワードの3点について、中国や東南アジアの専門家がディスカッションを行いました。

―最初のテーマは環境変化についてです。中国や東南アジアでの実務経験から各々の見解をお聞かせ頂けますか

ヴィクター・チェン(以下ヴィクター):私は、中国のデロイト コンサルティングでM&Aサービスのリードをしています。中国はコロナ禍の影響で経済構造やサプライチェーンが変わり、地元企業や多国籍企業はビジネスの立て直しと国内外のバランスの再構築に取り組んでいます。具体的には、中国国内のサプライチェーンを強化するか、ヨーロッパや日本のハイテクなどのグローバルなリソースを活用するかが課題となっています。国境を超えたビジネスやエコシステムの構築が重要といえます。

 

黒田 耕平(以下黒田):私はデロイト トーマツ コンサルティングから中国に8年以上駐在し、自動車業界のビジネスリードを担当しています。特に中国市場における日本企業の観点からコメントしたいと思います。
中国では政府が発表する5か年計画によって、進むべき方針が定められています。2016年から2020年までの5カ年計画はデジタル化が推進され、アリババやテンセント、バイトダンスなどの企業が躍進しました。コロナ禍が明けて中国が国境を開放し、ここ3年間の変化が顕在化しています。最も重要な変化は、ヴィクターが指摘したようにグローバル市場における中国企業のスタンスであり、本社システムをグローバルに統合し、ビジネス戦略を拡大しようとしています。こうした状況踏まえ、日本企業も打ち手を検討する必要があるでしょう。

サムラット・ボーズ(以下サムラット):私はデロイトの戦略プラクティスであるモニター デロイトに在籍し、東南アジアには10年以上住んでいます。東南アジアの企業は、コロナ後「ポリクライシス(Polycrisis)」というキーワードに絶えず直面しています。インフレやテクノロジーによるディスラプション、気候変動など様々な側面から生じるリスクの要因には共通点がなく、経営者はこうした複数のリスクが絡み合う状況を、いかに乗り越えていくかが問われています。新たなリスクは地政学的な秩序を大きく揺るがす所有権問題でしょう。

 

中国躍進のキードライバー

―ありがとうございます。コロナ禍や地政学的ダイナミックな環境変化があるにも関わらず、最近の中国の成長は目を見張るものがあります。こうした中国経済成長のキードライバーは何でしょうか。そして、東南アジアへの影響はどのようなものになるでしょうか。

ヴィクター:中国のGDPのキードライバーは、輸出、インフラへの投資、個人消費でしたが、コロナ禍の影響によって輸出や中国国内の個人消費が一時的に鈍化しました。2023年末までのGDPの予想成長率は4~5%になると思われますが、過去数年に比べれば相対的に低いものの、コロナ直後の回復期であることを考えれば高いと言えます。

この数字を実現するための主要なドライバーはインフラへの投資でしょう。しかし、対象となるインフラはデジタルインフラに変わっており、データセンターや高速コンピューター、AIのためのインフラが重要な領域です。

また、中国のOEMが自社のサプライチェーンを輸出することもキードライバーの一つでしょう。例えばEVでトップのOEMであるBYDは完成車を輸出していますが、今後ヨーロッパにサプライチェーンを輸出する計画を立てています。

黒田:中国は2050~2060年まで続くとされる脱炭素の取り組みについて、デジタル技術を活用し、市場側と供給側のデータを統合して、中国のためのマネジメントシステムを構築しています。もし実現すれば、中国は他国にもこのマネジメントシステムを輸出し、ITやハイテクから製造業、エネルギー処理産業まで全ての関連企業を集めることができます。脱炭素は現在世界的な社会課題となっていますが、中国はこの分野の政策決定者の一員になることで、グローバル市場でのルール形成において存在感を高めていこうとしています。

 

サムラット:中国企業は参入スピードが速く、イノベーションを行いながら、市場において適切な価格設定を行っており消費者にとって魅力的です。一方で、データプライバシーやデータレジデンシー問題が東南アジアでは注目されており、この点については慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

 

日系企業が勝利するためのキーワード

―こうした状況を踏まえ、中国や東南アジアに進出している日系企業が勝利するための鍵を握る戦略とは何でしょうか。

ヴィクター:中国市場での競争は、将来的には個々の企業間で行われるものではなく、エコシステム対エコシステムで行われることになるでしょう。これは競争や各企業のアドバンテージという概念を覆すものです。テクノロジーやマネジメントの標準化、特にビジネスモデルにおけるイノベーションやオープンにエコシステムを生み出す力が日系企業にとって勝利のキーワードとなるでしょう。

黒田:日系企業はグローバルリソースに限りがあるため、世界全体に対する投資のバランスをとることが重要です。脱炭素分野、特にEVにおいて、中国市場は他のグローバルマーケットよりも進んでいますが、このトレンドがいつまで続くかはわかりません。2050年までの長期的な視点や地政学的なパワーバランスやマーケットの魅力が世界でどのようにシフトするかを考える必要があります。

2025年から2030年にかけて、日本企業は、特定の分野において中国マーケットを活用することを考える必要があるでしょう。そして、他国が追随してきたときには別の戦略を取らなければなりません。ハイレベルな観点から見ると、こうしたことをマネジメントする必要があります。

サムラット:東南アジアにとって主要な取引先はアメリカであり、次に中国が続きます。日本は僅差で中国に次ぐ重要な取引先であるため、競争を理解し、バリュープロポジションを明確にする必要があります。

東南アジアのクライアントは日本企業や日本製品・サービスに高い信頼を寄せているため、これを活用することは重要ですが、過去の成功にあぐらをかいていてはいけません。中国やアメリカのイノベーションのスピードや規模が優れている点を理解し、戦略を立てる必要があります。

私からは重要なポイントを3点お伝えしたいと思います。1つ目は、どこの国を強化すべきかを選択すること。2つ目は、国の選択をしたら、そのマーケットにおいてどこまでスピードを上げられるか、イノベーションのスケールとコストについて検討すること。3つ目は、デジタル化やサステナビリティの取り組みです。日系企業はこの3点を踏まえて適切なGo-to-Market戦略や投資を行う必要があるでしょう。

 

―ありがとうございます。最後に視聴者の皆さんに一言ずつメッセージをいただけますか。

ヴィクター:過去3年間にわたり、コロナ禍が中国にも世界的にも経済的にも大きな打撃を与えました。(中国市場は)以前と比較すれば、成長率は穏やかではあるもののハイテクやデジタル化を武器に経済はまだ盛り上がっていくでしょう。鍵となるのは、いかに素早くクライアントの変化に対応し、ビジネスモデルに適用させるかです。黒田さんが指摘したように、グローバルなリソースを活用してマーケットに貢献していくかが、中国やAPAC、さらにグローバルで成功するための要素だと思います。

黒田:中国市場はこれまでのような成長はしないでしょうから、マーケットを求めて海外に進出していくでしょう。グローバル企業はいかにこれに対抗するかを考える必要があります。地理的要因から、東南アジアは中国企業が海外進出するにあたり最初の一歩を踏み出しやすい地域です。しかし、東南アジアは国によってマーケットが異なりますから、ローカリゼーションが非常に重要です。生き残るために自分たちに何ができるのかを考え、世界に通用するサステナブルなビジネスモデルを開拓するには良い時期だと思います。

サムラット:日本企業の経営者の皆さんには、二つの重要なチャレンジについて考えてみて頂きたいと思います。1点目は、国内の戦略と海外における成長戦略を統合できるかという点です。ポリクライシスをマネジメントしながら、国内・海外を統合的に扱うマネジメントシステムをお持ちでしょうか。2点目は、ローカルマーケットでのイノベーションを手掛けながら、グローバルにも展開できるかという点です。日本企業は、ローカルとグローバルマーケットが大きく異なっています。また、グローバルではもっと早いスピードでイノベーションが進んでいます。皆さんはグローバルとローカルを同時かつ統合的にイノベーションを起こすエコシステムやメカニズムをお持ちでしょうか。もしこれらのチャレンジを達成することができるのであれば東南アジアで大きな成功を収めることができるでしょう。

―今日はありがとうございました。

 

池田 晋吾/Shingo Ikeda

池田 晋吾/Shingo Ikeda

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

自動車産業や商社を中心とし、幅広く日系企業に対して新規事業戦略、新規参入戦略、M&A戦略、販売戦略等の支援を実施。09年よりシンガポールを拠点とし、東南アジア全域での日系支援のコンサルティングサービスで豊富な経験を有する。2019年6月より上海に駐在。 関連サービス ・ 海外ビジネス支援(ナレッジ・サービス一覧はこちら) ・ 自動車(ナレッジ・サービス一覧はこちら) >> オンラインフォームよりお問い合わせ