不確実性が高まる社会において、産業の未来に必要な「チェンジ」とは ブックマークが追加されました
2023年5月22日から5日間にわたり、パーパス、コミュニティ、Well-being、トランスフォーメーション、 働き方、教育・キャリア、グリーントランスフォーメーションなどのテーマで、 各界のトップランナーとこれからの未来を考え、新たな価値やつながりを共創するカンファレンス「Lead the Way Forum ―未来に誇れ」。
オープニングキーノート「今後30年の未来を拓く~経営の捉え方・駆動させ方・創り出し方」に登壇し、Value経営やコミュニティ、メガトレンドなどについて語ったデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下DTC) CEOの佐瀬真人とモニター デロイト パートナーの三室彩亜に、イベント後、不確実な社会の変化に適応しようとする企業に向けて、その当事者でもあるDTC自身の「チェンジ」について聞きました。
——「今後30年の未来を拓く」と題したオープニングセッションでは、今後30年を見据え、企業変革を推進する経営の捉え方・駆動・創出等に関する提言をされました。まずは、「Lead the Way Forum」を振り返っての感想をお聞かせいただけますか。
佐瀬:今年はオンサイトとオンラインのハイブリッド開催で、オンサイトはDeloitte Tohmatsu Innovation Parkで開催しました。デロイト トーマツ グループが誇る日本最大のオープンエコシステム型のイノベーションスペースで、新たなビジネスを創発し、CO-EVOLUTION(共進化)が生まれ続ける拠点と位置づけています。オープニングセッションでお披露目されたオーディトリアム(講堂)に登壇者が一堂に会することで、オンライン視聴の皆さんにもライブ感が伝わったのではないでしょうか。
三室: コロナ禍でのイベントはウェビナーがほとんどでしたが、今回は久しぶりのリアル会場でオーディエンスの皆さまの反応を直に感じられたのが印象的でした。
佐瀬: アライアンス企業やビジネスパートナーの方々と、リアルにお会いする機会も増えています。たとえばオープニングセッションと同日に、我々のアライアンスパートナーやビジネスパートナーのトップエグゼクティブの方約200名にお集まりいただき、「Ecosystem & Allianceサミット」というイベントを開催しました。
我々のビジネスは、SAPやセールスフォース、オラクル等の皆さんとプロジェクトをともにし、価値提供するケースの比率が年々高くなってきています。画面越しでは感じることができない活気や、DTCへの期待を強く感じることができました。
——オープニングキーノートのテーマの1つであった「チェンジ」について伺います。DTCは今年30周年を迎えましたが、これまでを振り返ってどのようにチェンジしてきたのでしょうか。
佐瀬: 創業時は100人規模であった社員数も成長を遂げ、創業から20年でコンサルティングマーケットにおいて認知されるようになりました。この時期まではカルチャーやコンサルティングに関する基本的なスタンスにあまり変化はなかったように思います。
一方、現在は5000人規模まで急成長し、それまでとは全く異なる性質のビジネスが加わるような大きなチェンジを迎えました。2018年以前からの既存メンバーにとっては「自分自身が大きくチェンジしなければならない」という危機感や不安は大きかったと思います。全く異なるバックグラウンドや経験を持つメンバーを迎え入れる中、既存メンバーとの間でシナジーをどう生みだしていくのか、DTCの新しい価値観や新しいカルチャー/風土をどのように創りだしていくのか、チャレンジの連続でした。
——大きな変化が起きているコンサルティング業界ですが、今後はどのように変わっていくとお考えでしょうか。
佐瀬:コンサルティング業界に関して言えば、短期的にはこれまでの枠組みは残ると思いますが、2030年以降となると、「コンサルティング業界」というキーワードで語られているのだろうか、とはいつも考えます。既存プレイヤーはもちろん、新規プレイヤー……それこそAIが競合になるなど、異種格闘技のような世界になっているのではないでしょうか。
現在、コンサルティングの経験者やフレームワークが市場に溢れ、コンサルティングの方法論や一定の経験がコモディティ化しています。時代の変化が激しい中、競争優位性を常に作り続けなければならないのですが、合理的に戦略を練れば練るほど差別化ができなくなる。合理的戦略の価値がなくなっているという時代に入っています。
三室: クライアントの経営企画部門にコンサル出身者の方が増えています。たとえば、前回と概ね同じような中期経営計画を出すだけならクライアントが内製できてしまうため、自分たちだけではできないことをより顕著に求められています。シェルパとして伴走するにあたって、我々自身がこの山を100回登ったので、一緒に行きましょう!と自信を持って言える経験を重ねなければなりません。
セッションではメガトレンドをテーマに、外部環境の変化に受け身をとるだけではなく、外部環境は作っていけるというお話をさせていただきました。佐瀬さんがおっしゃるように、コンサルティング業界はより複雑な業界になっていきそうな感覚は確かにあります。また、コンサルティング業界に限らず、産業の壁が崩れる、融合するといったことはあちこちで言われていますが、「その後」を描き切れていない段階にあります。その中でクライアントの鑑となるべき我々は一足先に、社会全体の産業構造の変化に対してコンサルティングの専門性はどのような単位になるのか、IT/DXの盛り上がりが一巡したときコンサルティングファームは今の規模が求められるのだろうか、といった問いにも向き合う必要があるでしょう。
佐瀬:社会がどう変わるのか、それを受けて産業はどう変わるのか、どう変わっていくべきなのかという潮流を読み、「企業がどう変わっていくべきか」を我々自身が提言し、それを「絵に描いた餅」で終わらせず、実現するための手段も提供できるようにならないといけません。
つまりアドバイザリーサービスだけではなく、テクノロジーやデジタル技術を活用して仕組みを構築し、オペレーションを実行するという活動にも我々メンバー自身が入り込むことが求められています。まさに、マーケットをリードするために必要なコンサルティングサービスをEnd to Endで提供していく必要があるのです。提言と戦略立案から実行まで一貫して支援できるよう、オペレーションやデベロップメントなど担うデロイト トーマツ アクトやデロイト トーマツ ノードなどのエンジニアリングスペシャリストも我々の仲間として活躍しています。我々は、チェンジをやめることはありません。
——産業やコンサルティング業界が大きく変わって行く中、コンサルタントが持つべきスキルについてどう考えますか?
三室:どの業界知識を身に着けようか、10年後も通じる専門性は何だろうかを気にするメンバーもいると思いますが、時代の変化が激しく、求められる知識・スキルの変化も激しくなっています。その中では知識やスキルを「素早く身につける力」を磨くことをお勧めしたいと思います。たとえば、「業界知識」を身につけるのではなく、「業界知識を身につける“力”」を身につけるということです。
最近、クライアントと話していて感じるのは、クライアントは本当に改革を必要だと考えているということ。それはクライアント自身による自己改革で済むレベルの変革ではありません。さらには、「改革をしてきたけれども大きく変えることができない」というクライアントや、「失敗・成功の経験を持っているが、今度こそどうすればいいのだ」、というように、初めての改革ではないが故の難しさを感じているクライアントも少なくありません。そういったクライアントの期待に応えるためには、これまでと同じ価値提供ではいけません。クライアントが目指す姿を共有し、一緒に変革することが求められていると感じています。
一方で、自分だけで全てを身につける必要はない、ともお伝えしたいです。例えばDTCでは、多くのメンバーが集まっています。メンバーの強みを組み合わせることで、個人の限界を簡単に超えることができます。野球に例えるとWBCで優勝するのに、全員が二刀流のスーパーマンである必要はありませんし、全員が4番打者を目指さなくてよいのです。社内外に輪を広げ、相手の強みを活かして協働する、そんな力がこれからは一層必要になるのではないでしょうか。
佐瀬: もちろん、明日から全く違う人になるということではないのです。少しずつ進化させていくということだと思います。今までとは違うチャレンジをしないことには進化はありません。何か新しいことにチャレンジすると、自分のポテンシャルに気づいたり、自分に足りないものが見えてきたりします。それに対応することで結果として、成長につながっていきます。 そうして皆さんが発揮できる価値が5%でも10%でも大きくなれば、ものすごいパワーになります。DTCでは、多様な能力を持ったメンバーが揃っています。それぞれが補い合うことで、大きな力を発揮することに繋がります。これを読んでくださっている皆さんには、チェンジすることを楽しんでほしいですね。
——セッションでは、Purpose Quest(パーパスクエスト)として、これからのDTCでは、個人のパーパスを実現するという話をされていましたが、佐瀬さん、三室さん、それぞれのパーパスを教えていただけますか?
三室: よく、こういった質問をされるのですが、本当に困ってしまうんですよね。私のパーパスは「良きコンサルタントである」ということです。私自身、コンサルタントという職種がすごく好きで、DTCで仕事をする中でMy Purposeを見つけることができました。こう言うときれいごとに聞こえてしまうのですが(笑)、本当にそうとしか言えないんです。でも、それは本当にすごく幸せなことだと思っています。
佐瀬: そうですね。私のパーパスは「日本の企業、日本の社会を良くする」ということですね。それが自分たちの通信簿だと思って活動しています。
日本は、「失われた30年」と言われるなどネガティブな話題が少なくありません。こういう状況は変えていかないといけないと思っています。
しかし実際には、日本の企業は、競争力という点では悲観しなくてもいい状況にあります。たとえば、商社のような日本にしかない業界が注目されていますし、投資家からの期待も高まっています。ここ数年の業績も良い。インバウンドの観光客も増えています。「オーバーツーリズム」などの新たな問題も出ていますが、日本文化や日本の社会が再評価され始めている証左だと思います。
日本企業や日本の良さを再評価し、発信していくような前向きな取り組みをしていきたいですね。そういった活動を通じて日本の産業や社会に貢献していきたいと思っています。
——ありがとうございました。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 2000年4月トーマツ コンサルティング株式会社(現 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社。自動車業界を始めとする製造業を中心に事業戦略立案、マーケティング戦略立案、技術戦略立案、組織・プロセス設計に関するコンサルティングに従事。デロイト トーマツ グループ、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド アジア太平洋地域のAutomotive(自動車)セクターリーダー、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社最高戦略責任者(CSO)、2019年6月から2024年5月までデロイト トーマツ コンサルティング合同会社代表執行役社長を歴任。 2024年6月よりデロイト トーマツ グループ COEO(Chief Operating Enabling Officer)としてデロイト トーマツブランドの一体的強化・オペレーション変革を推進。 >> オンラインフォームよりお問い合わせ
メガトレンドを起点としたビジョンや中長期戦略の策定、事業計画、新規事業等の立案、リスクマネジメント等を担う 未来洞察だけに終わらず、それを組織に根付かせる活動として、インテリジェンス機能の設計や、経営層の視座づくり、若手リーダー候補の育成等にも広げている。 関連するサービス・インダストリー ・モニター デロイト(ストラテジー) >> オンラインフォームよりお問い合わせ