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ギャンブル等依存症への日本政府の取組み等~統合型リゾート関連記事

統合型リゾート(IR、Integrated Resort) 

統合型リゾート(IR: Integrated Resort)の設置に際し、社会的関心事として懸念されているギャンブル等依存症について、日本政府のこれまでの動き、及び与野党が法案として提出した「ギャンブル等依存症対策基本法案」の概要について解説します。

I. はじめに

2016年12月、日本で特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(通称、「IR推進法」)が施行され、政府与党はIR設置に必要となる法制上の措置(いわゆる「IR実施法案」)の整備に向けての取組みをはじめました。一方で、与野党はそれぞれ、ギャンブル等依存症対策基本法案を整備し対策を整備する方針のもと動き始めました。

 

II. ギャンブル等依存症対策基本法案に関する日本政府のこれまでの動き

 

日時

概要

2016年
12月

・IR推進法施行を受けて、ギャンブル依存症対策への取組みが公式にスタート
・菅内閣官房長官を議長とする、省庁横断で依存症対策に取り組む「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が発足
・IR実施法案と別に、ギャンブル等依存症対策基本法案を整備する方針を示す

2017年
1月

・自民党(与党)が、ギャンブル依存症への対策などについて検討するプロジェクトチームの初会合を開催

2017年
2月 

・日本維新の会(野党)が、独自のギャンブル等依存症対策基本法案を参議院へ提出

2017年
3月 

・自民・公明両党(与党)が、ギャンブル等依存症に関する論点を整理

2017年
4月 

・自民・公明両党(与党)が、「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム(WT)」の初会合を国会内で開催
・国際観光産業振興議員連盟(超党派IR議連)が、役員会を開催し、ギャンブル等依存症対策基本法案を超党派で一本化する方針を確認

2017年
5月 

・自民・公明両党(与党)が、「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム」の会合を開催し、ギャンブル等依存症対策基本法案をまとめる

2017年
6月 

・自民・公明両党(与党)が、ギャンブル等依存症対策基本法案を国会に提出
・民進・自由両党(野党)が、ギャンブル依存症対策基本法案を国会に提出

2017年
8月 

・ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議の3回目の会合にて、包括的なギャンブル等依存症対策の強化対策を決定・公表(詳細)

2017年
9月 

・厚生労働省による2017年度のギャンブル依存症の実態調査を公表
・臨時国会での衆議院解散に伴い、ギャンブル等依存症等対策基本法案が廃案となる

2017年
10月 

・第48回衆議院議員総選挙
 自民・公明両党(与党)が、定数の「3分の2」を確保

2017年
11月 

・自民党(与党)と日本維新の会(野党)が、国会内で幹事長と国会対策委員長による会談を行い、競馬やパチンコなど既存ギャンブルでの依存症対策を強化するための基本法案の早期成立に向けて連携していくことを確認
・自民・公明両党(与党)のギャンブル等依存症対策を検討するワーキングチームは会合を開き、速やかに対策を進める必要があるとして、衆議院の解散で廃案になった法案を国会に再提出し、早期の成立を目指す方針を確認
・日本維新の会(野党)が、ギャンブル依存症の対策を急ぐ必要があるとして、ギャンブル等依存症対策基本法案を参議院へ再提出
・立憲民主党(野党)が、政調審議会で、ギャンブル依存症対策を強化する法案を国会に提出する方針を確認

2017年
12月
(*12月8日現在)

・自民・公明両党(与党)が、ギャンブル等依存症対策基本法案を衆議院に再提出
・自民党(与党)、日本維新の会(野党)が、ギャンブル等依存症対策基本法案について、与党案と維新案の一本化に向けて協議に入ることで合意
・立憲民主党が、無所属の会、自由党、社民党と共同(野党)で、ギャンブル依存症対策基本法案を衆議院へ提出

出所:衆議院ホームページより抜粋

 

III. ギャンブル等依存症対策基本法案の概要

<自民・公明両党(与党)案(2017年12月)>

1.目的

ギャンブル等依存症は、
(1)本人・家族の日常生活・社会生活に支障を生じさせるものであり、
(2)多重債務・貧困・虐待・自殺・犯罪等の重大な社会問題を生じさせている

ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、
もって

(1)国民の健全な生活の確保を図るとともに、
(2)国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与


2.定義

ギャンブル等依存症:
ギャンブル等(法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態


3.基本理念

(1) ギャンブル等依存症の発症・進行・再発の各段階に応じた防止・回復のための対策を適切に講ずるとともに、本人・家族が日常生活・社会生活を円滑に営むことができるように支援
(2) 多重債務・貧困・虐待・自殺・犯罪等の問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮


4.アルコール・薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携への配慮

アルコール・薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮


5.責務

国・地方公共団体・関係事業者・国民・ギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者の責務を規定


6.ギャンブル等依存症問題啓発週間

国民の間に広くギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるため、ギャンブル等依存症問題啓発週間(5月14日~20日)を設定
(ギャンブル等依存症問題:ギャンブル等依存症及びこれに関連して生ずる多重債務・貧困・虐待・自殺・犯罪等の問題)


7.法制上の措置等

政府にギャンブル等依存症対策を実施するため必要な法制上・財政上の措置等の措置を講ずる義務


8.ギャンブル等依存症対策推進基本計画等

(1)ギャンブル等依存症対策推進基本計画:政府に策定義務(少なくとも3年ごとに見直しを検討)
(2)都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画:都道府県に策定の努力義務(少なくとも3年ごとに見直しを検討)
((2)については、医療計画・都道府県健康増進計画・都道府県アルコール健康障害対策推進計画等との調和が必要)


9.基本的施策

(1)教育の振興等
(2)ギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施
(3)医療提供体制の整備
(4)相談支援等
(5)社会復帰の支援
(6)民間団体の活動に対する支援
(7)連携協力体制の整備
(8)人材の確保等
(9)調査研究の推進等
(10)実態調査(3年ごと)


10.ギャンブル等依存症対策推進本部

内閣に、内閣官房長官を本部長とするギャンブル等依存症対策推進本部を設置

所掌事務:
(1)基本計画の案の作成・実施の推進、
(2)基本計画に基づく施策の総合調整・実施状況の評価等
(基本計画の案を作成しようとするとき、基本計画に基づく施策の実施状況の評価結果の取りまとめを行おうとするときには、あらかじめ、本人・家族の代表者、関係事業者、専門的知識を有する者の意見を聴く義務)

 

出所:衆議院ホームページ ギャンブル等依存症対策基本法案概要(与党案)よりデロイトトーマツ作成

 

IV. 与野党における法案の違い

与党だけでなく、各野党からもそれぞれ独自のギャンブル等依存症対策基本法案が国会に提出されており、いくつかの項目において各党の考え方が異なります。

出所:衆議院ホームページよりデロイト トーマツ作成(クリックすると拡大します)
出所:衆議院ホームページよりデロイト トーマツ作成(クリックすると拡大します)

V. まとめ

ゲーミング(カジノ)を合法化している各国では、ゲーミング(カジノ)の導入によるギャンブル依存症患者の増大を防止するため、様々な対策を実施しています。
日本においても、統合型リゾート(IR: Integrated Resort)の導入を機に、ギャンブル等依存症対策の法整備を速やかに進め、官民連携した具体的な対策を実施していくと思われます。
それにより、国、自治体、事業者、関連業者、民間支援団体等それぞれの役割が明確になり、ギャンブル依存症患者数が逓減することが期待され、既存のギャンブル等(公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技等)に対しても影響を与えることが想定されています。

 

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IR(統合型リゾート)ビジネスグループとは

IR(Integrated Resort:統合型リゾート)実施法案の審議開始から免許交付までの間に、IRビジネスグループでは参入を目指す日本企業に対し、さまざまなアドバイザリーサービスを提供します。

また、カジノ施設の設置と運営にはさまざまな課題やリスクが指摘されています。そのため、IRビジネスグループでは、日本企業に対する事業支援サービスだけでなく、企業と自治体に対し、IR施設を設置・運営する上で懸念される課題と社会問題の解決に関するアドバイザリーサービスも提供します。

 

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