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ギャンブル依存症への各国の取組み~IR推進

統合型リゾート(IR:Integrated Resort)

統合型リゾート(IR:Integrated Resort)の設置に際し、社会的関心事として懸念されているギャンブル依存症について、ゲーミング(カジノ)を合法化している国々で実施されている対策や、対策の実施主体の概要についてご説明いたします。

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Ⅰ. はじめに

ゲーミング(カジノ)を合法化している各国では、ゲーミング(カジノ)の導入による賭博依存症患者の増大を防止するため、様々な対策を実施しています。日本においても、賭博依存症は社会的関心事として懸念されています。

「特定複合観光施設区域整備法案(仮称)~IR 実施法案~に関する基本的な考え方(案)」(2013 年11 月12 日国際観光産業振興議員連盟(IR 議連)公表)より引用

賭博依存症患者の増大を防止し、その対策のための機関を創設する

我が国では、既存の公営賭博等や遊技にも既に同じ社会事象が存在することが知られており、これらをも含む形での国としての対応を早急に措置することが必要である。制度として賭博行為を認めている以上、一定の社会的セフテイーネットを構築することが当然である。このため、公営賭博分野を含めた調査の実施と実態の把握、依存症問題対応のための国の機関を創設し、中長期的な対応策や短期的対処プログラムの策定、調査研究の奨励、治療やカウンセリング体制具備のための支援を行なうこととし、その財源にはカジノからの納付金収益の一部をあてるものとする。

また、先進諸外国で制度化されている賭博依存症の症状にある顧客本人ないしはその家族の要請に基づき、当該顧客をカジノに立ち入らせることを禁止する予防措置(自己排除プログラムならびに家族強制排除プログラム)については、導入を積極的に検討するものとする。

 

賭博依存症とは、賭博のために日常生活に問題が生じているにもかかわらず、なかなかそれを止められない状態のことを指し、アルコール依存・ニコチン依存のような「物質依存」に対して、「プロセス依存」と呼ばれています。

1977年に世界保健機関(WHO)によって依存症の一つに分類されて以降、国際的に賭博への依存を精神疾患として認識する動きが広がっています。特にアメリカにおいては、賭博依存症は精神疾患として認知されており、入院治療施設やカウンセリング体制の整備が進んでいます。一方、日本においては、「自己責任」や「自業自得」のような考え方が根強く、賭博依存症対策が十分に進んでいるとは言い難い状況です。そのため、IR設置に際しては、既存の取組みを活かしつつ、諸外国を参考にした取組みの導入等、より強固なセーフティネットの構築が求められます。

 

(277KB, PDF)

Ⅱ. ネバダ州における賭博依存への取組み

アメリカやシンガポール等カジノを合法化している国々では、行政機関と民間団体が連携し、教育・啓発、治療・研究、法規制及び予防体制(社会システム)の整備等の様々な取組みが行なわれています(図表1参照)。

ネバダ州では、依存症への対応を行う民間団体が多く、ゲーミングの業界団体やNPO法人、学術機関等が連携して賭博依存症対策に取り組んでいます。また、カジノ事業者に対し、法規制上自己排除プログラムの導入が義務付けられていますが、ホットラインの運営や従業員に対する教育等、独自の対策を行っている場合も多く見られます。


※図表につきましてはPDFをご確認ください

Ⅲ. シンガポールにおける賭博依存への取組み

一方、シンガポールにおいても、複数の民間団体や医療機関が連携して賭博依存症対策を実施していますが、ネバダ州に比べ、行政機関の果たす役割が大きいと言えます(図表2参照)。

カジノ新興国であるシンガポールでは、カジノ合法化の閣議決定を行う段階で、カジノ導入により危惧される社会問題に対し専門の行政機関を設立して対策を講じる旨を発表し、実際に、カジノ合法化が閣議決定された4ヵ月後の2005年8月に、問題賭博国家協議会(National Council on Problem Gambling:NCPG )を設立しました。この団体は、本人が申請する自己排除プログラムだけではなく、家族又は第三者機関からの申請で登録が可能な家族強制排除プログラムや第三者強制排除プログラムも運営している他、賭博や賭博依存に関する教育・啓発活動、調査、依存症予防サービス・カウンセリングサービスの実施、ホットラインの設置を行っています。


※図表につきましてはPDFをご確認ください

IRビジネス・リサーチグループの最新活動

下記IR(統合型リゾート、Integrated Resort)についての海外事例のナレッジを提供している、IRビジネス・リサーチグループの最新の活動をご紹介いたします。

 

【IRビジネス・リサーチグループの最新活動】

>IR実施国の調査報告書~平成27年度 横浜市委託調査
先進的な統合型リゾート導入事例等について情報を収集・集約・整理・分析等を行い、横浜市の取り組みを支援。

>IR整備状況などの調査報告書~平成26年度 東京都委託調査
海外における統合型リゾートに関する調査業務を受託。

>特定複合観光施設区域に関する調査~平成26年度 内閣官房委託調査
海外での先進的な統合型リゾート導入事例等について情報を収集・集約・整理・分析し、統合型リゾートを検討する内閣官房の取り組みを支援。

>書籍『カジノ産業の本質 ~社会経済的コストと可能性の分析~』を監訳(2015年6月発行)
カジノの光と影/IRビジネスを経済の視点から解説。

>『月刊レジャー産業資料』2015年6月号〔特集〕統合型リゾートに執筆
「海外にみるギャンブル依存症対策の枠組み」と題して、有限責任監査法人トーマツ パートナー 仁木 一彦 および マネジャー 西 翼 が執筆。

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