Posted: 04 Feb. 2020 3 min. read

第6回 まず解くべき経営課題を明確化する

【シリーズ】DXの本質:インサイトドリブン経営をめざして

今回よりデータ活用の実践について扱う。まず、DXの本質はデータと高い分析技術と先に挙げたが、単にそれらをそろえるだけでは不十分だ。正確には、AIなどを使ってデータを分析し、経営判断に必要なインサイトを導き出し、迅速かつ適切な意思決定によりビジネスを改革することにある。

本稿は2019年11月22日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX発データ経営革命(6)まず解決すべき対象決定」を一部改訂したものです。

つまりDXを経た経営の姿は、「インサイトドリブン経営」とも言うことができる。この状態に到達するには、戦略のみならず、組織・人材、プロセス、データおよびテクノロジーといった経営全般にわたる5点の改革が必要になる。まず、戦略策定時の要諦2点を解説する。

経営層がインサイトドリブン経営を目指す際、具体的に解決すべきビジネス課題の対象を特定することにこそ時間をかけて取り組むべきである。手始めとして、必ず成功させる対象を経営層が自ら選択すべきである。理想的には、期待効果が大きくかつリソース投資は最小限で成功確率が高いものを選びたい。

しかし、インサイトドリブン経営にこれから踏み出す企業にとっては、下手をするとその特定のために数カ月どころか1年以上も費やしかねない。そこで、目下経営課題として最も関心を寄せる対象から候補を探すとよい。新規事業の立ち上げだったり、製造現場における技能継承の課題だったりするかもしれない。これらはインサイトドリブン経営アプローチにより解決を期待できる対象である。

取り組むべき対象が明確になった後に投下するリソースを決定すべきである。この順番が逆転すると、例えば「データサイエンティストを雇ってみたがそもそもやるべきことが曖昧だった」「雇用したデータサイエンティストの専門と実施領域に乖離があった」「内容は決まっているが期待効果が限定的で取り組みが頓挫する」という事態に陥りかねない。

多くの企業では対象が決まる前にチームを組み、そのチームに取り組むべき内容を選定させている。この場合、経営課題などの本質的に取り組むべき対象に踏み込めなかったり、そのチーム要員の所属元にひもづく事情が反映されてしまったり、結果的に社内で協力が得られず道半ばで頓挫してしまうケースが多い。まず対象を決め、次いで適切なリソース(ヒト、モノ、カネ、時間)を決定すべきである。

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吉沢 雄介/Yusuke Yoshizawa

吉沢 雄介/Yusuke Yoshizawa

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

データサイエンティスト職を経て現職。自動車、消費財、EC、商社、広告代理店業界を中心に経営意思決定・マーケティング・セールス領域におけるアナリティクスやデータ、デジタルを活用した戦略策定から実行支援に強みを持つ。近年はデータ駆動型経済におけるDX戦略及び全社改革、デジタル関連企業のM&Aを中心に従事。企業活動にエビデンスに基づいた意思決定する仕組み・文化を導入することを推進している。 「パワー・オブ・トラスト」(共著:ダイヤモンド社 )、「リアル・タイム・ストラテジー」(監訳:ビジネス教育出版社 )、「両極化時代のデジタル経営」(共著:ダイヤモンド社 )、その他執筆・講演多数。 >> オンラインフォームよりお問い合わせ