Posted: 14 Feb. 2020 3 min. read

第15回 デジタル時代に求められるデータガバナンス

【シリーズ】DXの本質:インサイトドリブン経営をめざして

自部署での常識が他では通じず誤解を与えてしまった経験は誰でもあるだろう。データ活用でも同様で、例えば製品原価はどの費目を含めるかで金額が異なり、自社内でも違う部署と話す場合は注意が必要である。データの意味や文脈を理解しないまま集計や分析をすると、誤った意思決定につながりかねない。

本稿は2019年12月5日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX発データ経営革命(15)情報の意味・文脈、明確に」を一部改訂したものです。

 

インサイトドリブン経営ではデータの収集、分析・可視化と並行し、データの意味や入手先などそのデータが何であるかを把握する必要がある。これらはデータに対するガバナンスを通じて実現され、経営や他の業務全般におけるガバナンスと同様、役割、プロセス設計を主とした仕組みづくりが欠かせない。

以前からデータ活用を進めている企業ではこの仕組みづくりの一環で、データ項目を一覧表にし、関係部署と共にデータの意味、責任部署、加工方法などを調べた後、ユーザーに提供する活動をしていた。これは複数人によるマニュアル作業を含み労力が必要だ。特にデータの量や種類が加速度的に増える現在では、作業負荷や情報共有の煩雑さの観点から人手だけでの対応は難しくなっている。

このため、データガバナンスでもテクノロジーが採用され始めており、一部を自動化する取り組みが進んでいる。クラウドを含む企業のデータベースやファイル、外部データなどの膨大なデータを検索エンジンのように収集し、自動的に把握するのだ。先進企業では数十万項目のデータを自動的に把握している例もある。

しかし、自動化も万能ではなく収集できる情報は限られるため、人による判断や意味の追記が必要となる。これには業務に詳しい担当者による入力から責任者による確認など複数のステップを含むプロセスが必要となる。対象とするデータが多い場合、同時並行で進むプロセスを混乱なくさばくためのコミュニケーション基盤となる技術が欠かせない。また、人の入力内容を学習して同様のデータに対しては同じ意味を提案するなどAIを活用した人の判断支援も可能となっている。

データガバナンスは後回しにされがちだが、データを活用した経営を目指し競争に打ち勝つには優先的に取り組むべき領域である。

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