Posted: 04 Feb. 2020 3 min. read

第10回 インサイトドリブン経営 鍵は本質的なビジネススキル

【シリーズ】DXの本質:インサイトドリブン経営をめざして

インサイトドリブン経営という概念は、先進的な欧米企業を中心に既に浸透し、成果を生み出す事例が増えている。一方、日本企業は分析用のシステム基盤を構築はしたものの、狙った通りの成果を上げている事例はまれではないだろうか。

本稿は2019年11月28日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX発データ経営革命(10)分析術よりビジネススキル」を一部改訂したものです。

 

テクノロジーが飛躍的に発展し、使い勝手の良い高性能の分析アプリケーションが次々と登場する中、この状況が一向に改善されないのはなぜなのか。これは、分析結果から得られた洞察をビジネス価値に転換するスキルが不足していることが原因だ。

ここ数年のテクノロジーの急速な進化は、ITや分析を専門としない一般のビジネスユーザーに広く分析活動の門戸を開いた。分析チャートは直観的な操作で簡単に作成でき、専門知識をもたないユーザーでも、自動化されたAIツールによって最適なアルゴリズムを用い分析を行うことが可能となっている。

この技術的なハードルの低下に伴い、分析ユーザーに必要なスキルが変容した。「どう分析するか」ではなく、分析によって得られた洞察を「どうビジネス価値につなげるか」を求められるようになったのである。

データから得た洞察を意思決定に生かすインサイトドリブン経営の本質に立ち返ると、洞察は意思決定などの「行動」を促すものでなければならない。これを可能とするには、ITや分析スキルなどとは根本的に異なる本質的なビジネススキルが求められる。

まずは課題原因の仮説構築力である。分析で解決したいビジネス課題に対し、適切な原因仮説を立てられるか否かはその後の活動の成否を分ける。また、分析によって得た洞察を他者に適切に理解してもらう説明力も欠かせない。多くの利害関係者を動かし、全社や部門レベルでの行動を促す調整力・巻き込み力も必要であろう。

インサイトドリブン経営の成功には、ビジネスのコアスキルが欠かせない。分析などの技術ばかりに注力するのではなく、コアスキルにこそ目を向けるべきだ。不足しているスキルを正しく認識し、その早期獲得のための戦略を立て実行に移す。これは分析基盤をユーザーに開放しただけで身につくものではなく、組織的・計画的に獲得を目指すべきものだ。

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