Posted: 21 Jan. 2020 3 min. read

第2回 製造業のDXにおけるデータ活用

【シリーズ】DXの本質:インサイトドリブン経営をめざして

グローバル分業が進んだ製造業では、顧客を含めたバリューチェーン全体を迅速かつ正確に把握することが競争力の源泉となっている。こうした事業環境では第4次産業革命に代表されるように研究・開発、生産・製造、流通・保守のバリューチェーン全体をデジタル化し、データ活用する「デジタルマニュファクチャリング」の取り組みが進められている。

本稿は2019年11月18日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX発データ経営革命(2)製造業、「コト売り」に変身」を一部改訂したものです。

 

この取り組みでは、製品提供に重点を置く従来の「モノ売り」から、ビジネスパートナや顧客のニーズを満足させる「コト売り」に変革することがポイントとなる。

研究・開発では、製品稼働データから顧客の実環境を模擬した仮想世界(デジタルツイン)上で製品改良が進められている。大規模な実験設備を準備しなくても実世界に近い環境で試験ができるため、開発スピード向上や開発コスト低減に役立っている。

生産・製造では、生産データを分析することで、開発段階での品質作り込みや製造プロセスの改善につなげることができる。例えば、複数の生産設備のデータを分析することで、個別最適であった生産ラインのボトルネックを見える化し、全体最適となるカイゼンに取り組める。

流通・保守では、需要予測による在庫コントロールや稼働データを活用した故障予防メンテナンスなどの付加価値サービスの提供が始まっている。

このようにデジタルマニュファクチャリングでは、製品に関連するバリューチェーン上で収集したデータから様々な変化を察知でき、経営上の迅速な意思決定に役立てることができる。さらにデジタル化の進展で、製品ライフサイクルの詳細管理、法人カスタマーへの新サービス創出、生産性の高いスマート工場の実現などの高度なデータ活用も期待されており、独シーメンス、日立製作所などの電機・機械産業や独フォルクスワーゲンや独ボッシュといった自動車産業で実用化が進んでいる。

今後は食料、医薬、繊維など比較的デジタル化と距離のあった製造業にもデジタルマニュファクチャリングが広がると予想される。また、大企業だけでなく、中小企業もデジタルの恩恵を受けるようにすることで、製造業全体の将来発展につながると考えられる。

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