Posted: 21 Jan. 2020 3 min. read

第5回 データ活用で「CX」や「生産性の向上」に舵を切る人事部門

【シリーズ】DXの本質:インサイトドリブン経営をめざして

デジタルトランスフォーメーション(DX)の核となるデータ活用の波は管理部門にも訪れている。単なる効率化にとどまらず、テクノロジーの進化でデータ活用の余地が飛躍的に増え、より事業に貢献できる環境が整いつつある。

本稿は2019年11月21日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX発データ経営革命(5)社員の生産性を向上」を一部改訂したものです。

 

人事部門の場合、社員が組織で得る体験価値「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」の向上を通じた、顧客の体験価値「カスタマーエクスペリエンス(CX)」の向上に注目が集まっている。

「自分を犠牲にしてもお客様を喜ばせる」から「生き生きとした社員が感動やイノベーションを創造する」へ事業運営の価値観が変化している。その中でEX・CXの向上を大きく左右する要因を、データを可視化して判断する「データドリブン」の手法で解明し、効果的な施策を講じることに関心が高まっている。またデータ活用を通じ、採用、配置、育成、退職の抑制といった人材マネジメント全般を見直して生産性を高める取り組みも拡大している。

先を行く米国では、AIが分かりやすい画面構成で個々に適した学習機会を提案するなど、社員が自らデータを入力・活用するシステムの導入も進んでいる。活用を通じて社員が自然とデータを入力することを企図しているのだ。

日本でもネット系を中心に社員の個性や仕事内容・チームの特性など多様な情報をデータベース化する企業が増えてきた。データに基づき、相性の良しあしに基づいた「活躍しそうな」配属先の選定や評判や成長度合いを可視化し、社員の成長を後押ししている。

また、ソフトバンクは社員のコンディションが生産性を左右することに着目し、仕事・生活・健康面の12項目について高頻度に測定する仕組みを開発した。社員は送られてくる質問にアプリから1~2分で回答し、自身を振り返ることができる。人事部門はデータを分析し、社員がより生き生きと働ける環境づくりを図る。

先進的な人事部門はデータ活用の効用を理解し、意思決定や効果検証プロセスに組み入れることで、事業部門や社員により高い価値を提供するように役割を再定義している。人事に限らず、日本の多くの管理部門は再定義をためらいがちであるが、新しいテクノロジーは10年前よりも格段に導入しやすく、試行錯誤も容易である。試験導入や実験といった選択肢も含め、データ活用レベルの向上に踏み出すことが求められる。

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