Posted: 01 Nov. 2021 2 min. read

環境変化に対応する不断のグループ組織再編

【シリーズ】『経営モデル変革の最前線』-Strategic Reorganization-

2020年以降、日本を代表するような大企業において持株会社化やグループ会社の統廃合、コーポレート機能の分社化など、企業グループ全体に関わる大規模な組織再編や抜本的な経営体制の変革の動きが活発化している。

その背景には、昨今日本企業が直面する事業環境や経営課題の大きな変化がある。そもそも日本企業は、従来から、国内市場の縮小やデジタル化の進展に伴う市場環境の変化という不可逆的なトレンドへの対応に迫られていた。そこに、COVID-19による恒常的な生活スタイルや顧客ニーズの変化が加わることで、大胆な経営戦略の転換が待ったなしの状況になり、それを支える組織基盤・グループ体制についても抜本的な見直しを避けては通れないことが誰の目にも明らかになってきたからだ。

多くの企業が、これまでの収益の柱である事業の競争力の維持強化のための構造改革を行う一方で、次なる収益の柱としてグローバル化の加速や成長・新規領域への軸足転換を図るため、グループの経営資源やアセットを総動員して活路を見出そうとしている。しかしながら、過去からの再編やM&Aの積み重ねの結果として、硬直化・サイロ化された組織が継続されたままのケースも多い。組織の形の見直しが小手先のハコの変更にとどまり、中長期ビジョンや戦略の実現には一向につながらず、従業員の意識改革も進まないケースが多いのが実情だ。

COVID-19に起因するような非連続的な経営環境の変化に対応するために、グループ組織体制についても、既存の枠組みを超えて聖域なき抜本的な見直しを検討し、戦略と一体で語ることがいま求められている。既に、一部の先行する企業においては、過去のしがらみや前例にとらわれることなく不断にグループ組織の構造改革を推進してきたことで、組織・経営体制を着実に進化・高度化させ続けている。いくつかの代表的な事例を紹介したい。

ある企業においては、持株会社体制に移行し、分社事業会社の競争力(相互での切磋琢磨)を高めつつ、持株会社においてはM&Aを活用して事業機会を探索・育成し、新たな事業の柱を確立した。その後、事業戦略の一層の加速を企図し、戦略的な事業領域を束ねる形で中間持株会社体制にし、更なる事業への機能・権限の移管によるグループ組織再編を遂行している。事業の執行とグループ経営・監督を組織的に分離し、持株会社がより中長期・グループ目線で経営資源配分を行い、既存の事業だけでなく新たな事業の柱の創出に向けた資源配分を大胆に実施したケースである。

また、ある企業においては、主力事業一本足頼みの体制からの脱却に向けて、事業多角化を企図して持株会社体制に移行した。主力事業以外に経営資源を投下して事業の裾野を広げ、個々の事業の競争力を強化した後に、事業環境の変化・顧客ニーズにグループ一丸となって迅速に対応すべく、グループ会社を統合し実質的に持株会社体制を解消し、経営支援を集約化して対応している。これは事業環境の変化にグループ一丸となって対応し、強固な経営体制を構築するために、グループ子会社を含めて抜本的に組織体制の在り方を見直し、グループ内の統合により経営力の強化を図ったケースと言える。

これらはあくまで一例ではあるが、環境変化に対応する形で集中と分散、拡大と集約を繰り返しながら、組織の在り方を不断に大胆に見直し続け、VUCAの時代を力強く生き抜くグループ組織・経営体制の構築が求められている。

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松宮 知樹/Tomoki Matsumiya

松宮 知樹/Tomoki Matsumiya

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 モニター デロイト / M&A所属。 消費財、製造業、メディアなど幅広い業界において、持株再編、グループ会社再編、コーポレート改革、抜本的コスト構造改革を専門に、戦略策定から組織・制度設計、業務プロセス構築まで一貫した支援に従事する。 近年では、持株会社・グループ会社体制の再構築やコーポレート組織の更なる改革といった、事業環境変化に対応するグループ組織体制の構築に多数従事している。