Posted: 01 Dec. 2021 2 min. read

グループ力最大化に向けたグループマネジメント改革~One Company化に向けて~

【シリーズ】『経営モデル変革の最前線』-Strategic Reorganization-

日本企業のグループ経営体制改革・組織再編の支援の過程で、従来から景気動向や企業業績等の変化と組織再編の関係性について関心をもって注視してきた。最近特に注目しているのは、COVID-19を契機とする新たな変革局面における日本企業の動向が、過去の変遷を踏まえたものとは明らかに異なる特徴を示し始めていることだ。端的にいえば、これまでの日本企業の組織再編では軸が「求心力の強化、コア事業中心の改革」にあったのに対し、足下においては「遠心力の加速、事業構造の転換」という色彩が一気に顕在化しているのだ。

過去、リーマンショック等で業績低迷、構造改革を迫られた日本企業の多くは、「求心力の強化、コア事業中心の改革」を志向した。その方針を受けて、ノンコア事業は売却し、コア事業を中心にグループ各社を統合し、強力なガバナンスのもと、重複排除を含めたコスト削減施策を中心とした構造改革を断行してきた。

一方、直近においては、「持株会社傘下事業会社の組み換え」や、「事業本社機能の海外移転」、「SSC(シェアードサービスセンター)の高度化(COE会社設立)」等の発表を目にする機会が増えている。これらの動きは、決して一律ではないものの「遠心力の加速、事業構造の転換」を志向しているものと見られる。これには、COVID-19を契機とする市場環境や顧客ニーズの激変を受けて、「コア事業自体が弱体化」したり、「事業を取り巻く不確実性が増大」したりする中で、新たな成長モデルづくりが経営上の急務として強く求められていることが背景にあると想像される。しかし、それだけではなく、多くの企業において、「合併・一社化」という組織構造にこだわらなくても、思い切った構造改革を推進するだけのグループガバナンス体制が一定程度構築されてきたことも、大きく影響しているものと考えられる。

事実、この数年間で、コーポレートガバナンスを中心とした意思決定機構の改革が進められ、「自社・業界の常識に囚われない経営判断」、「長期目線でのアジェンダ設定」等が実践されつつあり、日本企業のガバナンス力、グループ経営力は向上してきていると感じる。

ただし、コーポレートガバナンスに関しては、日本の本社内の改革だけで「遠心力の加速、事業構造の転換」を実現できるか、また、それに伴う様々な変革を支えきることができるかと言えば、必ずしもそうではない。事業環境が激変し、不確実性が増す状況下では、これまでの日本本社内の改革を軸に置きつつ、改革スコープを一段広げた取り組みが必要であると考える。

グループ経営について何歩も先を進んでいる欧米企業の取り組み事項の調査研究からも、グループマネジメントの取り組みを考える際には、全体像を以下の要素を包含する「3×3のマトリックス」でとらえて対応することが重要であると考える。

 

日本企業が「遠心力の加速、事業構造の転換」を実行するためには、「グループ各レイヤーの規律」と「One Companyとしてのグループとしての規律」を同時に整えることが求められる。ただ、広範囲にわたる改革となり、多くのステークホルダーが関わるだけに、何をきっかけに、どのような順序で、どの程度の深さでの改革か、躊躇してしまうものと考える。その際には欧米企業を中心とした先駆者の失敗を含めた経験から学ぶことも重要である。

今後、更なる環境変化、事業が複雑化する中では、グループガバナンスも常に進化が求められる。また、一律的な解があるわけでもないのも事実である。試行錯誤しつつ、グループの変革を支える、またドライブさせられる(決して足かせとならない)グループガバナンスの検討が求められている。

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