Posted: 02 Feb. 2022 2 min. read

M&A・組織再編を契機とした意識変革・ 行動変容

【シリーズ】『経営モデル変革の最前線』-Strategic Reorganization-

私はこれまで数多くのグループ組織再編を支援してきたが、組織再編をすること自体が本質的な課題解決に直結するケースは必ずしも多くない。むしろ、以下に図示するように「非連続の改革に向けたゼロベースでの検討」を推進したり、「グループ内の各法人の役割再定義」を行ったりするなど、組織再編を契機に実現すべきテーマを明確にし、その効果を最大化させることが重要であると捉えている。


中でも、昨今、実際のグループ組織再編プロジェクトで関わる経営トップからは、組織再編を契機に「役職員の意識変革・行動変容」を一気に加速させたいという声が多く聞かれる。

COVID-19をきっかけに大規模・大胆な構造改革を立案する企業が増えているが、こうした改革に即した組織再編を実行に移す場合、その成否の鍵を握るのは実際に改革を推進・機能させる人財である。それゆえ、役職員の意識や行動の自律的な変化を促すことが、これまで以上に重要な課題として認識されてきているものと考えられる。

一方、グループ組織再編を契機として役職員の意識変革・行動変容を期待するも、必ずしも実現できているかというとそうではない。

以前、組織再編(Day1)直後に役職員にアンケートを実施したことがあったが、役員層であっても「変革・再編の必要性の理解・腹落ち」に留まっている割合が一定程度存在していた。また、最近、グループ組織再編を意思決定した別企業において役員向けのワークショップを実施したが、意思決定・プレスリリース後、数カ月たったタイミングにおいても総論賛成・各論反対(そもそもイメージが湧いていない)といった状況であった。役員層がこのような状況であることを踏まえると、「意識変革・行動変容」の熱量をグループ全体に波及させることは相当に難易度が高いことが理解頂けるものと思う。

「意識変革・行動変容」の難しさは過去から認識されていたものと思われるが、昨今はその難易度がより高まってきているように感じている。

COVID-19を経て、多くの日本企業、そこに従事する役職員は「変革の必要性」については十二分に理解できているものと推察する。これは「意識変革・行動変容」の最初のステップとして重要であり一歩前進したように思われるが、次のステップの「自律化」に向けて、「変革後のイメージを持てない」という壁にぶち当たってしまっているのが現状である。昨今の大規模・大胆な構造改革は、非連続な取組みが多く、役職員の実態とかけ離れてしまっており、結果として変革後のイメージができない、また目先の混乱収束、事業継続を優先する必要があり、将来を構想する余裕がないといった点が背景にあるように推察している。

意識変革・行動変容の全体像として、上記4つの観点が重要であると捉えている。
上述の「自律化」の壁を乗り越えるためには4つの観点のうち、特に「“揺らぎ”の解消」が重要な要素と捉えており、ここでは取り組みにあたってのポイントについて触れたい。

 

①  誰から火をつけるか

・構想策定段階では限られたメンバーだけでの議論に留まりがち。どれだけ前倒しで多くのメンバーを巻き込めるかがポイント
・コア事業に従事する役職員は目先の事業継続に追われ変わり難い。変化許容度の高い周辺事業を巻き込むみ、周りから変革の機運を盛り上げることが重要

 

②  変革後の具体的なイメージを持たせられるか

・ 変革の必要性、方針は理解できるが、未知なるチャレンジに対して思考停止してしまいがち。自分でもやれると一歩踏み出せるような具体化がポイント
・会社の将来像(ビジョン)、新たな組織体制の意図を従業員がイメージ出来るレベル(求める役割・行動)まで落とし込むことが重要


③  具体的なイメージを実践できるか

 ・イメージが持てたとしても日々の業務から乖離していては、現行に引っ張られてしまいがち。小さいながらも具体的に実践、成功体験の積み上げがポイント
・特に経営層の投資判断・経営資源配分における意思決定や、人事評価でのフィードバックなどに反映することが重要

意識変革・行動変容は重要な課題である一方、一朝一夕に解決するものではない。M&Aを含む組織再編を大きな揺らぎを起こす戦略的な機会として活用しつつ、経営陣が一枚岩となり継続的な取組みが求められる。

 

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