Posted: 01 Apr. 2022 2 min. read

新規事業の構想・立ち上げに、M&Aと“外部起業家”を活用すべし

【シリーズ】『経営モデル変革の最前線』-M&A Strategy-

近年のM&Aの潮流として、「機能補完型」や「市場獲得型」ではなく、「企業変革型」のM&Aの有効性が注目されるようになってきている。本稿では、その中の一例として、M&Aを活用した、新規事業構想・立ち上げについて述べたい。

 

国内市場の縮小、DXによる事業構造変化、COVID-19の感染拡大といった近年の環境変化により、社会や顧客の行動様式は、過去に無いスピード・規模で変化しており、既存事業に依らない新たな収益の柱の構築が求められている。

大企業では、ポートフォリオ変革の一環として、既存事業を再整理して獲得したリソースを新規事業領域にシフトする動きも見られるが、単なるリソースシフトでは事業の柱となる新規事業の創出は難しい。なぜなら、既存事業を回すことには長けていても、不確実性が極めて高い新規事業をゼロから組み立て、スピード感を持って実行できる経験・人材が乏しいためである。
こうした脅威と急速な社会の変化の中では、以下が新規事業創出のポイントとなる。


新規事業創出のポイント①:

新規事業の「青写真」策定、及び複数の事業の「種」や「芽」の育成・選別

新規事業の推進にあっては、市場・顧客ニーズ(マーケット視点)及び自社・パートナー候補の強み(ケイパビリティ視点)を踏まえて事業の「青写真」を描き、潜在顧客やパートナー候補の“生の声”を通じて、ビジネスモデルの仮説を高速で検討・検証し、実現性を高めることが成功の要諦となる。

このような迅速な動きを図るためには、事業の「種」や「芽」を複数持ち、それを育成する、または適切なトライアルの後に見切りをつけることが求められるため、「社内インキュベーション機能」と「外部へのアクセス機能・投資機能」を両輪とした仕組みづくりが重要となる。

 

 

<インキュベーション機能と投資機能の両輪での事業創造の仕組み>

 

 

新規事業創出のポイント②:

自社のリソースのみに頼らない「外部パートナーを活用したVison/Purposeに基づく新たなエコシステム構築」

近年の新規事業の構築では、自社単独で行わずに、スタートアップや異業種企業との連携・買収等を通じた、次世代型の新たな事業・サービスの構築が求められている。ここでは、外部環境の変化に伴う新たなニーズや、実現に向けた成功要因を明確にした上で、「Vison/Purposeに基づく新たなエコシステム」を構築することが必要となる。(トヨタのWOVEN CITYはその一例として挙げられる。)

このエコシステムの成立には、単なる提携や従来型のM&Aではなく、図2のような観点を持った、「自社として実現したい事業の青写真」に基づく「エコシステム作り・仲間作り型の提携・M&A」への転換が必要となる。

 

<まだ無いモノを創るためのInnovation M&A>

 


新規事業創出のポイント③:

新規事業創出の組織・仕組みの整備のみならず、“起業家人材“を活用した新規事業の事業化に向けた推進力(Business Produce)

新規事業の推進に向けては、従前での日本の大企業における取り組みとは全く異なる人員・マネジメント手法・KPI等が求められ、ありがちな新規事業の“ワナ“に陥らないためには、聖域なき社外活用を進め、既存事業とは異次元のスピードで、Business Produceに取り組むことが肝要となる。

こうした事業の推進には、大企業の企画部門を中心に増殖した「Thinker」と違い、上位者や時には経営陣からの批判をものともせず、自ら胆力を持って試行/実践し、新たな解に辿り着く逞しさを有するルールブレイカーである「Doer」が不可欠である。このような人材は現在の大企業の多くで欠乏しているため、出身や雇用形態を問わず不可欠な能力を有する人材を外部からも登用する“聖域なき”社外活用も成功の要件の一つになる。

これら3つのポイントを押さえ、M&Aを活用した新規事業の確実なローンチを図っていくことが日本企業には期待される。

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 尾島 健/Ojima Takeshi

尾島 健/Ojima Takeshi

デロイト トーマツ グループ マネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング所属。イノベーション・事業創造、組織再編・M&A等のコンサルティングに10年以上従事。戦略・構想段階から設計・実装まで幅広い経験を持つ。 イノベーション・事業創造領域では、社会課題を起点とした新規事業テーマ検討、新規事業のビジネスモデル検討、イノベーション創出の仕組み設計等に多くの経験を有する。 また、組織再編・M&A領域では、企業の競争力向上や事業創造を念頭においた、経営統合・買収・グループ内再編(持株会社化、事業・子会社の統合・売却)等、多数の再編スキームの経験を有する。