Posted: 13 Sep. 2022 2 min. read

M&Aを契機にITシステム改革を加速させるには

【シリーズ】『経営モデル変革の最前線』-Technology-driven M&A and Transformation-

IT統合の可否はディールの成功を直接決定づけると言える。デロイトの過去のディールに基づく試算では、企業全体の統合や一部事業の分離・統合が完了するまでに発生するコストの内、IT関連コストが大部分を占めているためである。

このため、M&AにおけるITに対する経営の期待と要求は非常に高い。そして、IT部門が経営から与えられる「猶予時間」は売手側・買手側いずれにおいても短くなる傾向にある。

 

M&AにおけるIT対応には、ディール発生後のITDD(ITデューデリジェンス)から、Day1対応としてのアプリ、インフラ、データ拠点等の分離、IT PMI(Post Merger Integration)としてのシステム統合やガバナンス整備などが挙げられる。かつてはDealの発生から2~3年以上をかけてシステム・ITガバナンスの統合までを行うケースが多かったが、我々が支援する最近の事例では1年程度でこれらのプロセスを完了させた事例も複数存在する。

 

本来、M&AディールはITシステムやガバナンスの効率化・高度化を図る絶好の機会である。しかし、上述した厳しいタイムリミットの要求を遵守するために、見切り発車で場当たり的なIT分離、統合作業を進めざるを得ず、結果的にQCD(Quality, Cost, Delivery)のいずれの観点においても経営層がITに対して期待する成果を獲得できないITプロジェクトも散見される。

 

具体的な課題としては、以下のような例が挙げられる。

「被買収先とのアプリ及びインフラの統合方針が未決のままディールが始まり、その後のユーザー部門との調整に多大な時間を要した」

「被買収先のIT実態に対する理解が不十分であったため、Day1後にITDDを実施する等、SCM(サプライチェーンマネジメント)の統合・再編まで1年近い時間的ロスが生じた」

「統合先との間で、統合後のITコスト目線に関するコンセンサスが取られていなかったために、統合後のITコスト削減が思うように進まなかった」

 

また、クロスボーダーM&Aに伴うグローバルITプロジェクトにおいては、固有の複雑性がさらに存在する。

 

グローバルITシステム、とりわけ基幹システムの導入においては、”Fit to Standard”、つまり業務にシステムを合わせるのではなく標準的なシステムプロセスに業務を適合させていく目標が掲げられる場合がほとんどである。しかし、これが掛け声倒れに終わるリスクは非常に高い。実際に導入を進めていくうちに、どうしても既存業務のオペレーションベースで考えてしまい、標準化が進まない場合が多いためである。結果的に、個別最適化されたロジックが盛り込まれた整合性のとれないアドオン開発により品質低下・コスト増・スケジュール遅延が発生する、稼働後に運用コスト高のシステムが残置する、といった課題が発生する。

 

こうした課題を未然に防止し、ITをドライバーとしてM&Aの期待効果を獲得するには、Day1前からPMIの完了までを俯瞰した一貫したアプローチが必要である。

 

つまり、M&A のライフサイクル全体をカバーするグローバル共通の IT M&A フレームワーク を適用し、業務、IT組織、システム、データ、セキュリティ等の構造的な把握と優先順位付けを通し、確実なIT統合を実現するのである。例えば、上述した”Fit to Standard”の課題においては、事業側のコミットメント(「協力」ではなく、「自事業の問題」としての)を獲得するとともに、堅守すべき標準化領域の範囲の定義と、個別化を許容する領域での対応ルールを定義するといった対策が考えられる。こうした定義を、システム導入が開始されてしまい後手に回る前に完了させておく事が非常に重要となる。

 

優れた企業は、複数のM&Aを通じてこうしたフレームワークの整備にも取り組んでいる。単なるRetention(現状維持)にとどまらない、ITのTransformation(変革)を目指す企業にとって、M&Aは重要なトリガーである。

 

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