観光大国への道:日本全国テーマパーク化 ブックマークが追加されました
2024年3月の訪日外国人旅行者数が300万人を突破し、過去最高を記録した*1ことが話題になった。
世界経済フォーラムの"Travel & Tourism Development Index 2021"において世界1位を獲得した*2ことに象徴されるように、日本には世界でもトップクラスの豊かな観光資源が存在する。しかし、収益力の面では十分ではない。観光庁によると、経済全体(GDP)に占める観光GDPの比率(2019年)は、欧米先進国などが約5%であるのに対し、日本は2%の水準に留まる*3。これは、観光ポテンシャルを考えると日本の観光業には大きな伸びしろがあるということだ。
これから日本が目指すべきビジョンは、「日本全国テーマパーク化」だ。これは、食や文化を含む各地の地域資源を、統一されたコンセプトの下にテーマパークのように付加価値を高めてプロデュースすることだ。更に、日本列島を多様な魅力で彩られたテーマパークの集合体へと進化させ、日本の各地×各季節での周遊を促すことまで視野に入れている。
観光業はポテンシャルを十分に生かすことで、地域経済、そして日本経済をけん引する原動力となるはずだ。
しかし、こうしたビジョンを実現するにあたり、3つの壁が立ちはだかっている。それは、以下の3つだ。
これらの壁を乗り越え、ビジョンを実現するには次のような3つの勝ち筋がある。
グローバル化の壁を乗り越えるには、外資系企業の参入や投資の動きを「バリューアップシグナル」として捉え、自地域の観光資源・観光サービスを再評価・再定義することが重要だ。
具体的には、外資系企業の立地選定理由やターゲット顧客層、サービス水準・価格水準の設定理由を分析し、世界の同種・類似の観光サービスの価格水準を把握することで、自らの観光価値を再定義し、サービスコンセプト、サービスクオリティ、プライシングをブラッシュアップするべきだ。
具体的なバリューアップシグナルの例として、新潟県妙高高原や長野県白馬村における外資系企業の投資行動がある。これらは、世界視点の客観的分析に基づいて商機を見いだしたものであり、日本の観光事業者にとって有用なヒントが隠されている。
組織間の壁を乗り越えるには、地域オーガナイザーの確立によるプロデュースが重要だ。地域オーガナイザーとは、地域内における観光の推進・調整役のことで、地域全体を1つのコンセプトで体現し、地域内外のプレーヤーを結集し、観光サービスを通じた体験価値を磨き上げる役割を果たす。
また、地域オーガナイザーは、販路やプロモーションの検討においても重要な役割を果たし、観光体験の価値を正しく理解・評価・共感する相手を見極め、適切な価格で商品を販売することも実施すべきだ。
人材不足の壁を乗り越えるには、人材循環の3層モデルが有効だ。以下3層の人材循環を有機的に組み立てることで価値提供力を量・質の両面で高度化していくべきだ。
ここまでビジョンや3つの勝ち筋の概要を見てきた。より詳しく知りたい方は、書籍『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図』を参照いただきたい。
出所:
*1 日本政府観光局「訪日外客数(2024年3月推計値)」(2024年4月17日)
*2 World Economic Forum "Travel & Tourism Development Index 2021"(2022年5月24日)
*3 観光庁「令和5年版観光白書について(概要版)」(2023年6月)
政府系金融機関にて大企業ファイナンス、中央省庁(出向)にて産業金融政策立案を経験し、現職。 Blue Economyや地域観光エコシステム形成などの産業アジェンダを、中央省庁・自治体と、共感・賛同する事業者との連携を通じて体現する「テーマ先導型官民連携」を推進。 官民連携を通じた地域産業変革、民間企業の事業推進を通じた地域課題解決(地域CSV推進)、官民連携の知見を活かした民間企業による政策渉外支援をリード。 >> オンラインフォームよりお問い合わせ