『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図』刊行によせて ブックマークが追加されました
2024年4月30日、デロイト トーマツ グループ横断で英知を結晶化させた書籍『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図』を刊行する。
書籍名にある「価値循環」とは、人口減少下でもヒト・モノ・データ・カネのリソースを「循環」させることで付加価値を高めて成長できる、という考え方であり、人口減少の悲観論からの脱却を促すものだ。これは、昨年刊行した『価値循環が日本を動かす〜人口減少を乗り越える新成長戦略』(以下前著)で提唱した。
前著の刊行後、おかげさまで多くの企業の経営者や、業界団体、政府関係者、地方自治体、政治家の方々等からお声がけがあり、対話の機会に恵まれた。その中で、価値循環という考え方の手ごたえを感じたと共に、「価値循環をどのように社会実装すればよいのか」という問いを多くいただき、より実践的な方法論を提示したいという強い思いが生まれた。
そこで、本書『価値循環の成長戦略』では、前著の考え方をより推し進めて、人口減少下で「個の豊かさ」をいかに高めるかに主眼を置き、持続的な成長を実現するための道筋を提言している。
日本の人口は2008年のピーク*1を境に減少し、2056年には1億人を下回る*2という予測があり、未来を悲観している人は少なくない。しかし、発想を転換すると、人口が減ることは一人ひとりの存在価値や希少性が高まることでもあるため、人の数ではなく“個”に目を向ける好機だと私は捉えている。
こうした「希少性」を増す個々の人に光を当て、一人ひとりが価値を発揮し輝くには、日本全体の経済規模を大きくして結果的に個が豊かになるという捉え方から、個を豊かにすることに主眼を置き、その集合体として全体が成長する、という考え方に発想を転換する必要がある。
それでは、今後一人ひとりが価値を発揮してゆくには何が必要なのだろうか。
アナリティクスの専門家であるDeloitte Analyticsのチームと共にデータ分析したところ、意外な事実がわかった。例えば、地域単位で分析した結果、対象期間中に“人口減少したにもかかわらず1人当たり付加価値が成長した地域(自治体)”は600箇所以上あり、これは全体の4割弱にのぼる。やり方次第で人口減少下でも成長できた地域があるという点は、これからの日本にとっても期待が持てる事実だ。
また、企業については、「人数」に依存する発想を転換して、取引の「頻度」あるいは取引1回当たりの「価格」を上げていく発想が今後重要になる。つまり、「良いモノをより安く、多くの人に売る」ことを是とした時代から、「良いモノをより高く、繰り返し使ってくれる人に売る」ことを目指す時代に、成長戦略の基軸が大きくシフトしつつある。実際に高成長企業の取り組みを分析したところ、「頻度」を高めるための「共通化」、「価格」の引き上げを可能にする「差異化」という2つの戦略軸を実践していることが判明した。
地域や企業が独自に取り組むことも重要であるが、それと同時に、日本全体で生み出す付加価値を高めて、それを個々人のレベルでの豊かさの向上に持続的に結びつける社会的な仕組みも必要で、本書では「循環型成長モデル」として提言している。
その仕組みが図2だ。日本が直面する社会課題(大循環A)を出発点とし、解決策(ソリューション)を実装して新たな市場をつくる(大循環B~D)。新たな市場をつくるには、既存の業種・業界という縦割りの壁を越えて、業界横断的に「横割り」で取り組むことが必要で、本書ではモビリティー、ヘルスケア、エネルギー、サーキュラーエコノミー、観光、メディア・エンターテインメント、半導体という7つを取り上げ、どのようにして新たな市場を生み出すかを本書で解説している。
更に、それを個人の幸福や豊かな生活につなげるために、雇用創出と人材育成を通じて所得向上を目指していくことも重要だ(小循環)。
本書を通して、一人でも多くの人が「明日は今日よりも良くなる」と感じられる日本社会になることを目指している。
出所:
*1 総務省統計局「人口推計」
*2 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
関連リンク:
デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)
デロイト トーマツ グループ『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図』
デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 社会構想大学院大学 教授 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 常任理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2018年10月 デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表 就任(現任) 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)