次世代に繋ぐ福島の稲作農業 ブックマークが追加されました
日本の主食として欠かせないお米ですが、近年、その生産から消費に至るプロセスには多くの課題が存在しています。具体的には、生産者の高齢化、不安定な米の価格、食料自給率の低下が挙げられます。本ブログでは、これらの課題に問題意識を持った人が集まったデロイト トーマツ グループ横断のプロボノチーム、Just Do It!!地域イニシアチブ(JDI)の活動として「ふくすび部会」の取り組みをご紹介します。
ふくすびプロジェクトは、福島県須賀川市に所在する和田農園の和田さんの危機感から誕生しました。発足当時、和田さんは東日本大震災に伴う原発事故の影響で福島県産の米の価格低下、生産意欲の減退、そして後継者不足といった深刻な課題を感じていました。和田さんの課題感を原点として、ふくすび部会では「福島の米農家が稲作農業にやりがいを感じ、次世代に継承すること」を目標にふくすびプロジェクトを支援する活動を行っています。普段は、和田さんやふくすびラボの皆さん(ふくすびプロジェクト参加者)とオンラインで定例会を実施していますが、今回は実際に福島県で100年以上にわたり米作りを営む御稲プライマル株式会社(以下、御稲プライマル)の後藤さんと、ふくすび すかがわの皆さんが主催する「おむすびワークショップ」に参加してきました。その様子をご紹介いたします。
まず、私たちは御稲プライマルに訪問し、独自に展開している2つの販売戦略について伺いました。
1つ目に、御稲プライマルでは、一つの取引先に依存せず多岐に渡る取引先を持つために、展示会への参加や飲食店への営業活動を積極的に行っているそうです。最近では、アメリカへのお米の輸出にも取り組んでおり、国際市場での需要を開拓しています。
2つ目に、御稲プライマルは、炊き込み用、酢飯用、カレー用など、用途に応じたお米のカスタマイズが可能です。お客様の要望に合わせてお米を調整し、「なんとなくおいしい」という感覚ではなく、お米の硬さや粘りを定量化して裏付けています。訪問時には、事務所に分析ファイルが陳列され、その取り組みに感銘を受けました。
用途別に分析されたお米データ
御稲プライマル社長の後藤さんは独自の取り組みを進める上で、アイデアを形にするために、まずは6〜7割の期待値でスタートし、成果を見ながら改良を重ねるという「まずはやってみる」試行錯誤の精神を大切にされていることを教えてくださいました。さらに、補助金やクラウドファンディングなど、利用可能なリソースの情報にアンテナを張り、最大限に活用しようとしている、とおっしゃっていた点も印象的でした。
御稲プライマルの後藤さんにお米の販売戦略について伺った後、私たちは和田さんが発案した「おむすびワークショップ」に参加しました。このワークショップは、地元の農家さんが丹精を込めて作ったお米を使って初対面の人同士がおむすびを一緒に作り、食べるというもので、今回で3回目を迎えます。「おむすび」という名前には、「人と人の良い縁を結ぶ場になるように」という和田さんの想いが込められています。
ワークショップには約25名が参加しており、親子での参加が多く見受けられました。特に印象的だったのは、将来、米農家を志望する高校生とお母さんです。実家で農業を営んでいないため、実際の農家さんの声を聞きたいという思いで参加されていました。別の小学生の女の子は、ワークショップで農家さんの米作りへの想いに触れ、「お米を残してはいけないと改めて気付くことができた」と教えてくれました。
大和田さんによるお米ができるまでの過程のご説明
お米を提供してくださった地元の大和田さんは、「自分が作ったお米を目の前で食べてもらう機会は少ないので、参加者の皆さんが美味しそうに食べる姿を見ることができてモチベーションが上がります」と話してくれました。
ワークショップを通じて、福島の稲作農業が次世代に繋がっていく場に立ち会えた感覚を得ることができ、ふくすび部会の活動の意義を実感することができました。
おむすびワークショップ参加者
今回の福島訪問を通じて、ふくすび部会で現在進行中の農家と学生をつなぐコミュニティの形成だけでなく、今後の活動に関する多岐に渡るアイデアを得ることができました。「まずはやってみる」というスピリットを大切にしながら、活動を続けていきたいと考えています。
Just Do It‼地域イニシアチブ
メンバー 鈴木 優奈(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)
※ 執筆者の社名・肩書は執筆時のものです。
JDI活動に関するお問い合わせはこちらから:info_jdi@tohmatsu.co.jp
「人とひとの相互の共感と信頼に基づく『Well-being(ウェルビーイング)社会』」の構築を目指す──。デロイト トーマツ グループが掲げているAspirational Goal(目指すべき社会の姿)です。Personal/ Societal/ Planetaryのそれぞれについて、Well-beingすなわち健全な状態を目指します。わたしたちは今後も継続的に、デロイト トーマツ グループの財産であるメンバーのPersonal Well-being実現のための取り組みを進め、それぞれのメンバーがSocietal well-being、Planetary Well-being実現のために、よりサステナブルな将来を構築するべく、共に取り組んでまいります。
人とひとの相互の共感と信頼に基づく 「Well-being 社会」