ナレッジ

公営企業における経営課題(ヒト・モノ)と解決手法

公営企業の経営戦略シリーズ(5)

人口減少下における公営企業の課題の一つとして、職員数の減少(ヒトの課題)、施設老朽化による更新投資の増大(モノの問題)が挙げられます。 ヒトの課題には業務をできる限り効率化すること、モノの課題には必要な投資を適正な規模で行うことが重要です。

1.公営企業の経営課題

公営企業においては、職員数も減少するなかで、将来のサービス維持が困難となることが懸念されています(ヒトの問題)。また、施設等の老朽化による更新需要の増大(モノの問題)に直面している一方、急激な人口減少に伴うサービス需要の低下による収入減(カネの問題)が予想され、非常に厳しい環境にあると言えます。

経営戦略を策定するに当たっては、これらの課題を分析し、解決方法を示すことが重要です。

2.ヒトに関する経営課題と解決手法

(1) 経営課題

公営企業も地方公共団体の一部であり、各地方公共団体における職員数の削減の影響を受けています。その結果、水道事業や・下水道事業を中心に技術の継承が困難になるという課題があります。 

また、地方公営企業法を適用する公営企業においては、官庁会計とは異なり公営企業会計が適用されますが、少ない職員での対応と定期的な人事異動により、企業会計の知識が定着しないことも課題となります。

 

(2) 解決手法の例

ヒトに関する経営課題の解決方法としては、次のような施策が考えられます。

  • 業務フローを整理して、効率的に業務を行う
  • システム改修を行い、効率的に業務を行う
  • 民間委託の検討を行う


今後ますます人口が減少していく中では、職員の増加は見込めません。したがって、今いる職員数でいかに効率的に業務を行うかを考えることが重要です。属人的になっていたり、不要な手続きを行って非効率になっていないか見直しを行い、業務フローを組み立て直すことが解決方法の一つになります。また、その過程で、システム導入や民間活用による効率化についても検討することが重要です。

3.モノに関する経営課題

(1) 経営課題

水道事業では、1960~70年代に急激な整備がすすめられてきたことから、現在では施設や管路の老朽化が喫緊の課題です。また、下水道事業では、団体や下水道の種類により整備された年度は異なるものの、多額の固定資産を有していることから、将来的な資産の老朽化への対応が必要となります。 

また、人口減少社会においては、現在保有している資産では過剰スペックになっている場合もあります。

 

(2) 解決手法の例

モノに関する経営課題の解決手法としては、次のような施策が考えられます。 

  • アセットマネジメント・ストックマネジメントの作成・検討
  • 簡易水道の上水道への接続(水道事業) 
  • 集落排水の公共下水道への接続(下水道事業) 
  • 施設の統廃合 
  • ダウンサイジング 
  • PPP/PFIの検討

老朽化した資産の更新には、多額の資金が必要になりますが、人口減少社会においては更新に当たり適正規模を把握した投資が必要になります。そのためには、まず、アセットマネジメントやストックマネジメントの作成・検討を行い、更新投資の時期を含めた更新投資の規模を見直すことが重要です。 

そのうえで、水道事業であれば、簡易水道を上水道に接続、下水道事業であれば集落排水を公共下水道に接続することも踏まえて、過剰スペックになっている施設の統廃合を検討することが考えられます。 

また、PPP/PFIにより、民間資金を活用した更新投資を行うことも考えられます。投資の規模は、将来的な料金設定にも大きな影響を与えるものであることから、次回で説明する「カネの課題」と合わせて、限られた財源のなかで必要な投資に優先順位をつけて実施していくことが重要です。

お役に立ちましたか?